藤井聡太棋聖に佐々木大地七段が挑戦する第94期ヒューリック杯棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)は、第4局が7月18日(火)に新潟県新潟市の「高志の宿 高島屋」で行われました。対局の結果、相掛かりの乱戦を84手で制した藤井棋聖がスコアを3勝1敗として防衛に成功。4連覇を達成しました。
相掛かりの空中戦
1勝2敗と後がない状況に立たされた佐々木七段はタイトル奪取の望みを得意の先手番相掛かりに託します。藤井棋聖が6筋の歩を突いて持久戦を目指したのを見てさっそく飛車先に合わせの歩を放ったのは積極的な作戦。十字飛車の要領で横歩をかすめ取る手を見せることで後手の駒組みに制約を与える狙いがあります。
横歩取りを見せられた後手の藤井棋聖は狙われた歩をぶつけることで先手の飛車を後退させます。穏やかな展開になれば中住まいの好形が生きてくるという大局観ですが、ここから佐々木七段が戦いの口火を切ったことで局面は激しい空中戦へ。右辺からの端攻めで香の入手を図ったのがその手始めで、ここから戦いは盤面全体に波及します。
難解な終盤戦
手番を握った佐々木七段による好調な攻めが続きます。香を成り込んで右辺からの敵陣を突破したのは確実なポイントですが、対する藤井棋聖も左辺からの飛車先突破を見せて形勢の針を譲りません。激しい応酬ののち、飛車取りをかけられた藤井棋聖がその飛車を取らせて8筋に歩を成った直後の局面が本局の勝敗を左右する分岐点となりました。
一直線での攻め合いでは自信なしと見ていた藤井棋聖はこの歩成りで下駄を預けた形ですが、ここは先手の佐々木七段にチャンスが訪れていました。将棋ソフトを使った控室での検討では、左辺の後手の金頭に香をタダ捨てして角打ちの空間を作る妙手があり先手勝ちと結論付けられていました。感想戦でこの手を知らされた両対局者はため息を漏らします。
藤井棋聖が競り勝って防衛
実戦で佐々木七段が選んだ右辺への香打ちは一歩ずつ着実に後手の金銀を削る意図ですが、結果的にここで攻め合いの速度が逆転することになりました。終局時刻は18時39分、後手からの攻防の王手によって一手負けとなったことを認めた佐々木七段が投了。勝った藤井棋聖はスコアを3勝1敗として防衛に成功しました。
五番勝負を制した藤井棋聖は、局後開かれた記者会見で「押される将棋も多く佐々木七段の強さを感じる場面が多かった」と番勝負を振り返りつつ「今期防衛できたことをとてもうれしく思う」と喜びを語りました。
水留 啓(将棋情報局)
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