ダイキン工業は7月13日、「エアコンの節電に関する実態調査」の結果を発表した。同調査は6月17日19日、全国の20歳~59歳までの男女527名を対象に、インターネットで実施した。

  • 電気代高騰により、エアコンの使用自体を控えようと思いますか

電気代高騰により、エアコンの使用自体を控えようと思うか尋ねたところ、71.1%が「とても思う」「やや思う」と回答した。5月に行った調査と比べて「控えようと思う」という回答は約10ポイント上昇している。

効果的な節電方法と逆効果になりかねない方法をそれぞれ4つずつ挙げ、「夏場にエアコンを使う際、節電になると思うもの」を選択してもらったところ、59.2%が逆効果になる方法を効果的なものとして選んでいたことがわかった。

  • 逆効果になりかねない節電方法が効果的なものとして選択された割合

逆効果になりかねないにもかかわらず効果的な節電方法として多くの人が選んだのは、「風量はできるだけ『弱』で使う」(26.5%)だった。風量を抑えるとファンの回転音が小さくなるため、消費電力が抑えられていると思いがちだが、エアコンの仕組み上、室内が涼しくなるまでに時間がかかり、その分、消費電力量が増加する場合があるという。

一方、効果的な節電方法として最も知られていたのは「空気清浄機や扇風機、サーキュレーターをエアコンとセットで使う」(56.9%)だった。

  • 節電方法認知度ランキングと、誤解のある節電方法ランキング

エアコンは室内にある熱を屋外に移動させることで涼しくしているのを知っているか尋ねたところ、49.2%が「知らなかった」と回答した。

  • エアコンは室内にある熱を屋外に移動させることで涼しくしているのを知っていますか

エアコンの節電における大切なポイントは、室内機、室外機ともにスムーズに空気を吸い込んだり吹き出したりできる状態を保つこと。エアコンは、​「室内機」と「室外機」がパイプ(配管)でつながっていて、​室内の「熱」を家の外に運び出して部屋を涼しくしている。

エアコンの室内機と室外機の中には、熱を空気の中から集めたり、空気中に逃がしたりする「熱交換器」と、空気を動かすための「ファン」が入っている。

パイプの中には、熱を運ぶ「冷媒(れいばい)」というガスが循環。室内機はファンを使って「暖かい」空気を吸い込み、熱交換器で集めた熱を冷媒が受け取り、外に運び出される。室内には、熱が少なくなった「冷たい」空気が戻されるという仕組み。冷媒が運んだ熱は、室外機のファンが送り出す風に乗って、熱交換器から出て行く。熱を手放した冷媒は室内機に戻り、また熱を運ぶ。

  • エアコンの冷やすしくみ

こうした仕組みから見たエアコンの節電ポイントは、熱をスムーズに集めて逃がせる状態をつくることや、圧縮機に余計な負荷をかけない使い方をすること。

空気の通り道をふさがないために心掛けたいのは、フィルターの掃除。フィルターにホコリがたまっていると、熱交換器を通る空気の量が減ることで効率的に熱を集められなくなり、室温が設定温度に到達するまでに時間がかかり、その分、電気代がかかってしまう。エアコンのフィルターを一年間掃除しないと、消費電力が約25%も無駄になると言われており、2週間に1回を目安に、フィルターの定期的な掃除をすることをすすめている。

  • フィルター掃除あり・なしの1年後の消費電力の比較

また、室外機周辺の整理整頓もとても重要だという。

エアコンは室内機で集めた「熱」を、「冷媒」というガスが運んで、「室外機」から外に逃がして部屋を涼しくしている。この「冷媒」を循環させているのが、"エアコンの心臓"ともいえる「圧縮機」。「圧縮機」は、冷媒に圧力をかけ、送り出す動作を繰り返している。実はエアコンを動かす電気の大部分は、この「圧縮機」を動かすために使われており、その割合は、約80%を占めている。

  • エアコン全体の消費電力のうち、室外機が占める割合は80%

エアコンが最も電力を使う場所について、エアコン全体の消費電力のうち、室外機が占める割合はどのくらいだと思うか尋ねると、正解である「80%以上」と回答した人は1割に留まった。

  • エアコン全体の消費電力のうち、室外機が占める割合はどのくらいだと思いますか

室外機周辺に障害物があり、吸込口や吹出口が塞がれてしまうと、熱を効率的に逃がせずエアコンに負荷がかかり、無駄な電力消費につながってしまう。室外機の周辺はすっきりと、余計なものは置かないようにすることが、節電につながるという。

また、熱を運ぶ量によって圧縮機にかかる負荷が変わるため、負担を減らす使い方への意識も大切とのこと。

エアコンはスイッチを入れた直後、勢いよく運転して部屋をすばやく冷やそうとする。このとき圧縮機は、より多くの熱を運ぶために、運転の力を強めている。部屋が適温になったら、その状態を維持できる程度に力を落として安定運転を続け、部屋が暑くなってくると、圧縮機はまた動きを強める。このスイッチのオン・オフを繰り返すと、圧縮機への負荷が高まる頻度が増え、その分、多くの電力を消費してしまう。

同社の実験では、日中の場合30分程度の外出なら一度オフにするより「つけっぱなし」の方が節電につながることがわかった。エアコンの頻繁なオン・オフはなるべく控えるようにするのも、節電の工夫のひとつだという。

  • つけっぱなしとこまめに入り切りの消費電力の違い

風量の調節も、節電の重要なポイントであるという。エアコンの設定温度を下げると、より多くの熱を運ばなくてはならず、圧縮機に負荷がかかる。早く涼しくしたい時、設定温度を下げる代わりに、風量を上げて「体感温度」を下げるのも工夫のひとつ。風量を上げると、室内機の音が大きくなって電気をたくさん使っているように感じるかもしれないが、ファンを動かすモーターは、圧縮機と比べ、少ない電気で動くとのこと。

また、風量は基本的に「風量自動」に設定しておくことをすすめている。節約のためにと風量を弱めに設定していると、熱交換器を通る空気の量が減り、「熱」を集めるのに時間がかかるため、その分圧縮機に負荷がかかり、余計な電気を使ってしまうという。風量を自動にしておくと、エアコンは必要な分だけ室内の熱を下げたら、その温度を維持できるように安定運転を続ける。この効率的な運転で圧縮機の負荷を抑えることができるという。

  • エアコンは基本的に「風量自動」

室内の「温度ムラ」を抑えることも節電につながる。少しでも「温度ムラ」を抑えるには、風向は「下向き」ではなく「水平」にするのがおすすめとのこと。

  • 風向は「下向き」ではなく「水平」に

風向を水平にしても、時間とともに「温度ムラ」はできてしまうが、それを防ぐために空気清浄機や扇風機、サーキュレーターなどの活用もおすすめだという。エアコンと向かい合わせに置き、床付近の冷気を、ななめ上、天井方向に持ち上げるようにすると、室内の空気が撹拌され、温度ムラが少なくなる。無駄な電力消費を抑えるために、気流のコントロールも大切とのこと。

同社では、エアコンの仕組みや上手な節電方法を解説したWEBコンテンツ「エアコンの『冷やすしくみ』と電気代の関係」を7月12日に公開した。コンテンツ内には動画「エアコンの『冷やすしくみ』がわかれば、賢く使える」も用意し、エアコンの仕組みや効果的な節電につながる理由を分かりやすく紹介している。