里見香奈清麗に西山朋佳女流三冠が挑戦する大成建設杯第5期清麗戦五番勝負は、7月12日(水)に東京都千代田区の「ホテルニューオータニ」で開幕。対局の結果、相振り飛車の力戦を107手で制した里見清麗が防衛に向け好スタートを切りました。

こだわりの角交換相振り飛車

振り駒が行われた開幕局は、先手となった里見清麗が中飛車を志向したのに対して後手の西山女流三冠が角交換で応じてスタート。ともに向かい飛車に振り直し、戦型は両者の間でたびたび戦われている角交換相振り飛車に落ち着きました。どちらも自陣への角の打ち込みを警戒しながらの慎重な駒組みが求められます。

実戦例の少ない局面を前にしてともに小刻みに持ち時間を使います。後手の西山女流三冠が中住まいに構えて戦いに備えたのに対して里見清麗が選択したのは「流れ金無双」と呼ばれるこの戦型特有の布陣。ジリジリとした間合いの計り合いが続いたのち、後手の西山女流三冠が早繰り銀の要領で左銀を前線に繰り出したことで局面が動きを見せ始めました。

拠点生かして里見清麗が先勝

4筋の歩を突いて戦線拡大を図る西山女流三冠に対して、先手の里見清麗は力強い受けでペースをつかみます。突き捨ての歩の手筋で後手の銀を働きの悪い位置に呼び込んでからぶつかっていた歩を取り込んだのがうまい呼吸。この拠点はのちに後手玉のコビンをにらむ急所として一局の命運を左右することになります。

西山女流三冠も十字飛車の手筋を駆使して反撃を目指しますが、ここから手番を握った里見清麗の反撃が始まります。自陣の角を犠牲に質駒の銀を取ったのが好判断で、これによって自玉の安全度が高まるのも見逃せません。この直後、手にした銀を4筋の拠点に打ち込む手が「寄せは俗手で」の格言通りの厳しい攻めとなりました。

自陣の憂いをなくした里見清麗は後手陣に竜を作って最後の寄せに専念します。終局時刻は17時58分、最後は自玉の詰みを認めた西山女流三冠が投了。昨年に続いて開幕局を制した里見清麗が防衛に向け好スタートを切りました。敗れた西山女流三冠は「(苦しいながらも)もうちょっと粘りのある手を選べた将棋だったか」と一局を振り返りました。

  • 里見清麗は「引き続き力を出し切れるよう頑張りたい」と次局への意気込みを語った(写真は第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第7局のもの 提供:日本将棋連盟)

    里見清麗は「引き続き力を出し切れるよう頑張りたい」と次局への意気込みを語った(写真は第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第7局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)