社会のキャッシュレス化が進む中、QRコード決済(スマホ決済)もすっかり身近な存在となった。「○○ペイ」が乱立する中で、王者PayPayを追い上げているのが「楽天ペイ」だ。

2023年7月12日、楽天ペイメントはメディア関係者向けに事業説明会を開催。楽天ペイの現状や今後の方向性、今夏開催する大型キャンペーンを明らかにした。

  • 左:楽天ペイメント 執行役員マーケティング本部長 諸伏勇人氏、右:楽天ペイメント 代表取締役社長 小林重信氏

“決済のフルデジタル化”をリードする楽天ペイアプリ

キャッシュレス化に遅れを取っていた日本だが、近年は国を挙げてキャッシュレスを推進中。経済産業省は、将来的に「決済のフルデジタル化(誰もが現金を持ち歩かずに生活が完結する状態)」を目指している。2019年、楽天グループはすでに「楽天モバイルパーク宮城」において、決済のフルデジタル化を実現した。

楽天グループの強みとして、「楽天カード(クレジットカード)」「楽天ペイ」「楽天ポイントカード」「楽天Edy」といったさまざまな決済手段を「楽天ペイ」アプリに集約していることにある。

楽天ポイントは、もともと楽天市場を中心とするオンラインサービスだったが、最近は実店舗でも楽天ポイントが貯まる/使えるようになっているほか、税金・公共料金等の支払い(請求書払い)にも楽天ペイのQRコード決済が利用できるなど、オフラインでの利用シーンが拡大している。JR東日本との提携で、楽天ペイアプリにモバイルSuicaが連携できるようになったことも好評を博しているという。

ユーザーに寄り添う楽天ペイの3つの戦略

楽天ペイメント株式会社 代表取締役社長 小林重信氏は、ユーザーに寄り添うキャッシュレス決済を推進するための戦略として、次の3つを示した。

【1】 ユーザーに寄り添う圧倒的なオープン戦略

QRコード決済「楽天ペイ」の支払い元として、すべてのクレジットカードを登録可能。楽天カードを登録した場合は、国内外の加盟店舗でVisa/Mastercardのタッチ決済も利用できる。

【2】圧倒的なポイント経済圏

2002年のサービス開始以降、21年にわたって「楽天ポイント経済圏」が培われてきた。当初はオンラインのポイントサービスとして始まったが、現在では実店舗でも楽天ポイントを貯める/使うことができる。

【3】圧倒的に強いポイントCX

楽天ポイントは累計発行数3.4兆を突破。「総合満足度No.1」「もっとも貯まったポイントNo.1」「もらってうれしいポイントNo.1」の3冠を獲得し、ユーザー満足度No.1のポイントサービスに君臨している(マイボイスコム調査、2022年11月)。

アプリダウンロード数昨対比+80%超

楽天ペイアプリは2016年のサービス開始以降、「おトク」を軸にサービスの拡充を図ってきた。楽天ペイアプリを利用すれば、クレジットカード、ポイントカード、電子マネーなど、さまざまな支払い方法を通して、いつでも最大1.5%のポイント還元が受けられるサービス設計を維持している。

近年は実店舗での楽天ポイントの取り扱いが拡大していることから、楽天ペイと楽天ポイントカードの併用も増加。楽天ペイの最大1.5%還元と楽天ポイントカードの最大1.0%還元を合わせると、最大2.5%の還元が受けられる。

楽天ペイアプリひとつで楽天ポイントがダブルで貯まる店舗が増えていることもあり、楽天ペイアプリのダウンロード数は昨対比+80%超(2022年5月と2023年5月の比較)と、力強い成長を遂げている。

大型キャンペーンで認知向上・ユーザー拡大へ

QRコード決済市場で勢いを増す楽天ペイだが、課題も存在する。QRコード決済ユーザーに「QRコード決済でメイン利用しているチャージ/連携方法が使えなくなった場合の乗り換え先」を聞いたところ、楽天ペイが32.1%と首位を占めた(MMD研究所調査、2023年6月)一方、楽天ペイの認知率はQRコード決済第3位(80.5%)となっているのだ。

楽天ペイメント株式会社 執行役員マーケティング本部長 諸伏勇人氏は、今後さらに選ばれる決済サービスになるためのカギとして、「楽天カード(クレジットカード)」と「楽天ポイント」の活用を挙げた。

今夏、次の4施策を柱として、楽天カードと楽天ポイントカードをフックにした楽天ペイの認知最大化に取り組む。

【1】楽天ポイントカードの付与が通常の3倍

楽天ペイアプリ内の楽天ポイントカードを提示して会計すると、楽天ポイントを通常の3倍進呈。

【2】楽天カード利用で最大20%還元

楽天カードまたは楽天キャッシュを支払い元に設定のうえ、楽天ペイアプリのコード・QR・セルフ払いを利用すると最大20%を還元(進呈上限あり)。

【3】ダブル利用で2人に1人当たる

「楽天ポイントカード」提示と「楽天ペイ」アプリ利用で、最大1,500%を還元(進呈上限あり)。

【4】お友達紹介ポイント増量

新規ユーザーを「楽天ペイ」アプリに招待すると、招待した人とされた人にそれぞれ700ポイントを進呈(利用条件あり)。

「楽天カード利用で最大20%還元」は6月30日より実施中。その他のキャンペーンは7月13日から開始する。上記の「おトクなペイは楽天ペイ スーパー還元」キャンペーンとあわせて、楽天ペイ初となる動画プロモーションも実施することにより、さらなる認知向上を図るという。

21年間かけて積み上げてきた「楽天ポイント」は、他社には簡単に真似できない“資産”だ。楽天ポイントの価値が高いからこそ、それを武器に戦える楽天ペイのポテンシャルは大きい。自社サービスへの囲い込みを図る決済サービスもある中、楽天ペイの「オープン戦略」が吉と出るのか、今後に注目したい。