メルシャンと聞いたらワインを思い浮かべる人も少なくないはず。だが、意外なことに梅酒にも力を入れているとの情報を聞きつけ、メルシャン 藤沢工場にて6月某日に開催された「まっこい梅酒」体験会に潜入。商品誕生のきっかけや味わいの秘訣などを聞いてきた。

  • メルシャン 藤沢工場にて6月21日に開催されたメルシャンの「まっこい梅酒」体験会

■香りを届けるべく開発された梅酒

「まっこい梅酒」は、和歌山県日高郡みなべ町との取り組みによって2011年に誕生した製品。全国の梅の収穫量の約7割を占める和歌山県だが、みなべ町は同県の梅生産量4割以上を占めるという"日本一の梅の里"でもある。

  • 「まっこい梅酒」は、2L、1L、500mlのサイズ展開を行っている。商品名の「まっこい」は、味や香りが「真に濃い」という意味がある

そんな同町をメルシャン開発者が訪れた際、産地に広がる桃のような完熟梅の香りに衝撃を受け、「お客様にもこの素晴らしい香りを届けたい」との想いを抱いたそう。そこから和歌山県にある梅研究所と共同研究を開始し、約6年間梅酒造りに適した高品質な梅を探し求め、ようやくたどり着いた先が「みなべ町の山間部エリア」だった。

だが見つけたはいいものの、生果の完熟落下梅は実がやわらかく輸送中につぶれやすいという理由から、当時県外にほとんど流通していなかった。

  • 藤沢工場にてまっこい梅酒が製造されている様子

それを解決したのが、収穫した完熟梅を凍結し、通常より浸漬期間を短くする製法「凍結完熟浸漬製法」だ。凍結することにより、県外移送が困難だった完熟南高梅の生果での取り引きを実現させるだけでなく、凍結した梅が融解する際に植物の組織が壊れ、香りや旨み成分が多く溶け出すという性質を利用して、フレッシュでフルーティーな味わいをも実現させた。

加えて、まっこい梅酒の特徴でもある華やかでコクのある味わいを引き出すため採用したのが「豊潤たね熟製法」。梅の種だけをお酒に漬けるこの製法は、梅種由来の杏仁豆腐のような甘い香りと旨み成分を引き出すことができる。

この2つの製法で造った原酒をブレンドさせることで、「まっこい梅酒」の芳醇(ほうじゅん)でコクのある味わいを生み出した。

  • メルシャン 技術部の安部氏

この梅酒造り、実はワイン造りの考え方・技術を応用しているそうで、メルシャン 技術部の安部杏香氏は「ワイン造りの思想である"ぶどうありき"の考え方を梅酒造りでも大事にしています。ぶどうのテロワールを大事にする考え方と同じで、梅の産地にこだわり、素晴らしい品質の梅を使い、浸漬条件を我々で検討し、製法を作り出しています」と説明。

メルシャンとしてのDNAである「果実としての美味しさを製品にも搭載する」との考え方をもとにワイン同様、梅酒も丹念に作られている。では、その味わいはどんなものなのだろうか。早速いただいてみた。

■気になる味わいは?

お酒を飲む前に、完熟落下梅そのものを試食したのだが、この梅の香りがなんとも芳醇でスイート! 開発者を感動させたのも納得の甘美な匂いに筆者もつい魅了され、何度も嗅いでしまったほど。

  • 完熟落下梅も実際に食べさせてもらった! 芳醇な香りとは異なり、味わいは酸味が強かった

濃厚な黄色の「まっこい梅酒」は、梅同様フルーティーで華やかな香りが印象的。一口飲めば、口の中に杏仁のような甘くてコクのある豊かな味わいが広がる。青梅の梅酒とは異なる濃~い旨みを堪能したい人にはピッタリのお酒。

そのほか、発表会にはプレミアム梅酒「完熟あらごし梅酒 梅まっこい」も登場した。浸漬後の梅の実を丁寧にあらごしし、梅ピューレとして加えた、とろりとなめらかな梅酒は上質な時間を演出してくれる。

  • 左「まっこい梅酒」、右はプレミアム梅酒の「完熟あらごし梅酒梅まっこい」

安部氏によれば、濃厚な味わいだからこそロックやカクテルにして味わうのもおすすめとのこと。紅茶やトマトジュースなんかで割ってみるのもアリだというから興味深い。


梅酒といえば青梅のさわやかなイメージが強かったが、フルーティーでコクのある完熟梅を使った梅酒もまた魅力的だった。果実の旨みをギュギュっと詰め込んだ「まっこい梅酒」で、あなたも今晩一杯やってみてはいかがだろうか。