西山朋佳女流名人への挑戦権を争う岡田美術館杯第50期女流名人戦女流名人リーグは、3回戦の伊藤沙恵女流四段―山根ことみ女流二段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果108手で山根女流二段が勝利。敗れた伊藤女流四段とともにスコアを2勝1敗としました。
伊藤女流四段のリベンジなるか
この二人の対戦はこれまで12局あり、伊藤女流四段から見て9勝3敗。相居飛車や相振り飛車といった対抗形以外の戦型が多いというこのカードの傾向通り、本局も伊藤女流四段の矢倉に対して山根女流二段が雁木で対抗する構図となりました。盤上は、昨年末に両者の間で指された公式戦と類似の形をたどります。
その対局で敗れていた先手の伊藤女流四段は、早めに3筋の歩をぶつけて手を変えます。後手の雁木囲いが完成する前に早繰り銀の要領で主導権を握ろうという構想で、これによって局面は早くも前例のない展開に導かれました。先攻を許した後手の山根女流二段もすぐさま7筋の歩を突いて反撃の形を作ります。
山根女流二段が逆転勝利
盤面全体を使った押し引きののち、抜け出したのは伊藤女流四段のほうでした。後手陣の弱点となっている桂頭に注目して、合わせの歩から銀を犠牲に攻めかかったのが鋭く、着実に後手の囲いを削っていくことに成功。流れるような攻めで優位に立った伊藤女流四段ですが、この攻防が一段落した局面で分岐点を迎えます。
実戦で伊藤女流四段は銀取りの桂打ちで攻めの継続を図りますが、この手が後手の勝負手を誘発しました。自陣の金取りにも構わず、桂を外して居直ったのが山根女流二段の好手。自玉を危険にさらしますが、飛車を入手したことにより伊藤玉も思いのほか危険な形になります。局後の検討では、先手から飛車を切って猛攻する手が優ったとされました。
終局時刻は14時37分、最後は豊富な持ち駒で先手玉を長手数の即詰みに討ち取った山根女流二段が逆転で勝利をものにしました。これで勝った山根女流二段、敗れた伊藤女流四段ともに2勝1敗に。4回戦では山根女流二段は鈴木環那女流三段と、伊藤女流四段は渡部愛女流三段と対局します。
水留 啓(将棋情報局)
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