第82期順位戦C級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、1回戦計15局の一斉対局が6月13日(火)に各地の対局場で行われました。このうち、関西将棋会館で行われた出口若武六段―伊藤匠六段の一局は98手で出口六段が勝利。開幕早々の大一番を制して、三枚堂達也七段・服部慎一郎六段らの昇級候補とともに好スタートを切りました。

相掛かりの力戦形

先手となった伊藤六段は相掛かりの戦型を選択。玉を6八の地点に上がったのは攻撃重視の一手で、右桂の活用を優先しつつ飛車先歩交換のタイミングを計る意味合いがあります。これを受けた後手の出口六段は7筋の歩を突く急戦調の作戦を展開。この歩が先手の飛車に取られるのは織り込み済みで、その間に右銀の活用を急ぐ狙いです。

お互いの飛車先での攻防が一段落し、盤上は第二次駒組みに移ります。自陣に雁木の構えを築いた出口六段は4筋の歩を突いて戦いを挑みます。ここまで2年前の公式戦に前例がある展開ながら、桂交換の直後に出口六段が5筋に銀を出たのが工夫の一手でここから二人の将棋が始まりました。昼下がりのひと時、中盤の難所を前にともに長考が続きます。

出口六段が細い攻め繋ぎ勝利

盤面全体を使った攻防の末、主導権を握ったのは先手の伊藤六段の方でした。後手からの小駒の攻めをうまくかわしながら7筋に玉を上がったのがバランスの取れた受けの好手。先手陣は金銀がバラバラで怖い形ながら、出口六段の攻め駒も伸び切った形でうまい協力関係を築けません。勝負を迫りたい出口六段が6筋に角を打った局面が分岐点になりました。

この銀取りの角に対して伊藤六段は40分を超える考慮で歩を打ったものの、ここから出口六段の猛攻を受けることに。直後の歩打ちを銀で取ると飛車が抜かれてしまうのが響きます。受け切りを断念した格好の伊藤六段は開き直って攻め合いに転じますが、貴重な銀を入手した出口六段の攻めは的確でした。

終局時刻は21時55分、自玉の受けなしを認めた伊藤六段が駒を投じて出口六段の開幕戦勝利が決まりました。2回戦では、出口六段は都成竜馬七段、伊藤六段は西尾明七段との対局が予定されています。

  • 勝った出口六段(左)は今年度5勝0敗と絶好調だ(未放映のテレビ対局を除く)(写真は第49期新人王戦決勝三番勝負第2局のもの 提供:池田将之)

    勝った出口六段(左)は今年度5勝0敗と絶好調だ(未放映のテレビ対局を除く)(写真は第49期新人王戦決勝三番勝負第2局のもの 提供:池田将之)

水留 啓(将棋情報局)

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