第13期加古川青流戦(主催:加古川市、一般財団法人加古川市ウェルネス協会)は、2回戦の里見香奈女流五冠-貫島永州三段戦が6月12日(月)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、152手の熱戦を制した里見女流五冠が次回戦進出を決めました。

貫島三段の超速▲3七銀戦法

貫島三段は広島県出身の24歳。居飛車党で、相掛かりや角換わりといった定跡形を武器に2021年の三段リーグ(前期)では12勝6敗の好成績を残しています。振り駒が行われた本局、先手となった貫島三段は里見女流五冠のゴキゲン中飛車に対して超速▲3七銀の作戦を採用。二枚銀を中央へ繰り出したのち、軽快に右桂を跳ね出して戦端を開きます。

飛車先の歩交換に成功した貫島三段は、この歩を元手に攻撃を続けます。二度にわたって3筋にたたきの歩を放ったのは継続の好手筋で、これで後手の金銀の働きを弱めたのは大きな戦果。決め手こそないものの、貫島三段は模様の良い時間帯が続きます。この直後、手番を得た後手の里見女流五冠が3筋の歩を伸ばして様子を見た局面が分岐点になりました。

弱気とがめて里見女流五冠が勝利

実戦の貫島三段は飛車を寄って丁寧に後手の垂れ歩の面倒を見る方針を採りますが、ここから里見女流五冠の猛攻に直面することになりました。5筋に歩を合わせておいてから、一転ふわっと飛車を浮いたのが振り飛車らしいさばきの好手。手順に飛車を2筋に回ることで竜作りを確実にした里見女流五冠が主導権を握って局面は終盤戦に突入しました。

両者一分将棋の秒読みが続きます。反撃の糸口を見つけたい先手の貫島三段は美濃崩しの桂打ちで迫りますが、里見女流五冠の対応は冷静でした。6筋に桂を打ったのが受けの好手で、角道を止めておけば先手から怖い筋はありません。終局時刻は16時59分(14時開始、持ち時間各1時間)、里見女流五冠が逃げ切って勝利。3回戦進出を決めました。

勝った里見女流五冠は次局で藤本渚四段と対戦します。

  • 里見女流五冠は昨年の加古川青流戦ではベスト8入りを遂げている(写真は33期女流王位戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    里見女流五冠は昨年の加古川青流戦ではベスト8入りを遂げている(写真は33期女流王位戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

<記事へのコメントを見る・書く>