連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合 毎週月～土曜8:00～※土曜は1週間の振り返りほか)で、神木隆之介演じる主人公・槙野万太郎を常にサポートしてきたのが、志尊淳演じる井上竹雄だ。東京編以降の竹雄は万太郎の従者から相棒に昇格し、第48回ではついに竹雄が「万太郎」と呼び捨てにするなど、文字通り対等の関係となった瞬間が描かれ、視聴者もきっと胸熱だったに違いない。

  • 『らんまん』井上竹雄役の志尊淳

■主従関係から相棒に! ついに「万太郎」と呼び捨ても

高知県出身の植物学者・牧野富太郎をモデルにした本作では、幕末から明治、大正、昭和と激動の時代に、植物を愛し、その研究に情熱を注いでいく主人公・槙野万太郎(神木隆之介)とその妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯を描く。脚本を担当しているのは、ミュージカルや戯曲などの舞台や、NHKのドラマ『群青領域』(21)や『旅屋おかえり』(22)などで知られる長田育恵氏だ。

幼少期に、万太郎の祖母・タキ(松坂慶子)からお目付け役を命じられて以降、時には身を挺して万太郎を守ってきた竹雄。高知編では、選ばれた“天才”がゆえに奇行が目立ったボンボンの万太郎だけに、常識のある“凡人”竹雄という“視聴者目線に寄り添ったキャラクター”が常にセットで動くことにより、両者がそれぞれに個性を引き出しあってきた。でも、時には視聴者から、万太郎に翻弄される竹雄に同情する声も上がった。

例えば、『らんまん』の朝ドラ受けがよくネタにされる『あさイチ』ではこんなエピソードが。万博博覧会で、ゲコなのに酔っ払った万太郎に振り回されていた竹雄に対して、博多華丸・大吉の大吉が「僕は竹雄くんが心配。ストレスを抱えて、いつか大爆発するんじゃない?」と気の毒そうに話していた。さらに、同回で万太郎が出店で買ったかるやきを自分1人で食べていたことについても、鈴木奈穂子アナが「かるやきを竹雄にもあげてほしかった」と言うと、華丸も「半分ね。お前もねって」とうなずいていた。

制作統括の松川博敬氏は、このリアクションについて「そこは意外な感想でした。僕は、当時の主従関係だと、当たり前なのかなとも思ったのですが」と笑う。

「皆さんもご覧になった通り、6週目で竹雄は、従者ではなくて相棒だと万太郎に言われます。その時、竹雄は心底、喜んでいましたよね。それ以降、主従関係から一転して、友情を築き上げていきます。でも、それまでの竹雄も、主従関係においては葛藤も抱えていました。峰屋のために、万太郎には自分の夢を諦めてもらわなきゃいけないけど、竹雄としては、友人として、万太郎の夢を支援したいという気持ちもあったから苦しんでいたんです。でも、東京編になってからは、晴れて相棒として万太郎を支えていくことになれたから良かったなと。でも、竹雄は、自分がいないと万太郎は生きていけないようなひ弱な存在だと思っていたけど、どんどん万太郎がたくたくましくなり、世界を広げていくことで、今度は自分がいなくてもいいんじゃないかと、ちょっと寂しさみたいものも感じていくのではないかと」

  • 井上竹雄役の志尊淳(左)と槙野万太郎役の神木隆之介

■制作統括・松川氏が感じたギャップ「意外と男っぽい方です」

本作で初めて志尊と一緒に仕事をしたという松川氏。「志尊さんは、これまでNHKのドラマだと、『半分、青い。』や『女子的生活』に出演されていたので、そういう役柄のパブリックイメージがあり、僕自身もきれいな男子という感じで見ていたんですが、意外と男っぽい方です」とイメージとのギャップを感じたそうだ。

確かに志尊は、2018年の同時期に『半分、青い。』ではゲイの美青年役を、『女子的生活』ではトランスジェンダー役を近い時期に演じていて話題になっていた。「最近男っぷりがよくなってきたなと思っていた時に、ちょうど竹雄役をたまたまお願いすることになりました」と笑顔で話す松川氏。

東京編になってからは、夢へとたくましく邁進していく万太郎を、メンタルと経済面の両方で支えようとする竹雄。今までどおり、万太郎のことを最優先に考えている竹雄だが、金銭面ですぐに実家の「峰屋」を頼ろうとするボンボンの万太郎に「峰屋は若の財布じゃない」と一喝するという頼もしい一面も見せていた。その後、レストランでボーイとして働き始めた竹雄だが、その甘いマスクはもちろん、江口りん(安藤玉恵)いわく「身体の半分が足」というスタイルの良さも相まって、女性客から熱い眼差しも浴びていくことに。

また、東京大学でよそ者扱いされて落ち込む万太郎に、改めて万太郎がどんな覚悟で上京してきたかを問いつめ、ここで喝を入れたのも竹雄だった。まさに万太郎と竹雄の揺るぎない絆を感じるシーンはたくさん描かれてきたが、それは演じる神木と志尊との間にある信頼関係がそのまま反映されていると、松川氏は明かす。

「神木さんがこれまでにいろいろなインタビューで、すごく志尊さんの存在が支えになっていると言っています。また、志尊さんも神木さんが今年で30才を迎えるということで、彼にとってすごく大事な1年になると思っていたので、自分自身も神木さんをサポートしたいという思いで『らんまん』に参加してくれたようなんです。そのリアルな友情が、そのままドラマに投影されているなと感じています」

今後もきっと、竹雄は万太郎のことを一番に考え、サポートしていくに違いないが、竹雄が幼き頃より恋焦がれてきた綾(佐久間由衣)との仲がどうなっていくのかも大いに気になる。万太郎と寿恵子の恋と同様に、そちらも心から応援していきたい。

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