駐車場の看板やウェブサイトの免責事項で「責任を負いかねます」というフレーズを見たことがあるけれど、具体的にはどういう意味なのかわからないという人も多いでしょう。

本記事では「責任を負いかねます」を分解し、詳しい意味を紹介します。具体的な使い方と定型文・例文、注意点や、「責任を負いかねません」との違い、言い換え表現もまとめました。

  • 責任を負いかねますとは

    「責任を負いかねます」の意味や使い方、定型文を含む例文などを紹介します

「責任を負いかねます」の意味とは

「責任を負いかねます」とは、「トラブルなどが発生しても、その責任は持てない」、とあらかじめ断りを入れておく際などに使う言葉です。

要素を分解して、意味を細かく見ていきましょう。

まず「責任」とは「自身が引き受けなければならない任務や義務、責め、制裁」などを意味します。

「負う」とは「背負う、自分で引き受ける、被る」といった意味を持つ動詞です。

そして「かねる(兼ねる)」とは、他の動詞の連用形に付いて補助動詞として使う場合、「〇〇するのが難しい、〇〇しようとしてもできない、◯◯し続けることができない」という意味を表します。「その話は納得しかねる」などのフレーズを聞いたことがある人もいるでしょう。

最後に「ます」とは、丁寧語で、聞き手に対する敬意を表します。

これらを合わせることで、「責任を引き受けることはできません」と、丁寧に断る意味になります。

「責任を負いません」と率直に言うと角が立つため、特にビジネスシーンにおいてや顧客に対して、「責任を負いかねます」と、遠回しに表現するのです。

後ほど例文を見ていきますが、責任を追及されたときに「私は責任を負いかねます」と断るというよりは、あらかじめ「もし何かトラブルが起きても、私は責任を負いかねます(ので、それを了承した上で進めてください)」といった使い方をされることが多いです。

「責任を負いかねます」の使い方や定型文、例文

  • 「責任を負いかねます」の使い方、決まった言い回し

ここからは具体的に、「責任を負いかねます」の使い方や定型文、例文を見ていきましょう。

施設などの看板で使用する場合

「責任を負いかねます」は、多くの人が利用する施設の看板などによく記載されている文言です。

「責任を負いかねます」と看板に示せば、万が一施設内で誰かが損害を被る事態になって、施設側が責任を追及されたとしても、拒否しやすくなると考えられます。

以下は例文です。

  • 駐車場で起こった事故につきましては、一切の責任を負いかねます。
  • 施設内での盗難などのトラブルに対して責任は負いかねます。

駐車場内や施設でのトラブルには、管理会社や組合など、施設側に原因がない限り、関与する義務はないことを伝えています。このような看板には、管理する側の、自己防衛の意味が含まれているのです。

「一切の責任を負いかねます」「トラブルに対して責任は負いかねます」はよく見聞きする定型文ですね。

製品使用上の注意を説明する場合

製品の取り扱いに関して、取扱説明書内に「責任を負いかねます」の一文を入れるのもよくあるケースです。

取扱説明書に「責任を負いかねます」と一言記載しておくことで、製造業者にとっては「もしものとき」への備えとなるのです。 例文は以下の通りです。

  • 不適切な使用により事故が生じた場合、当社は責任を負いかねますのでご了承ください。
  • 記載された条件以外での使用にて生じた故障に関しては、一切の責任を負いかねます。

「当社は責任を負いかねますのでご了承ください」というフレーズもよく使われます。「了承」は、事情を察してよく理解し、納得すること、という意味です。「私たちは責任を負えないことを、よく理解して納得してくださいね」ということを表しています。

「責任を負いかねません」との違い - 語尾が変わると全く別の意味に

なお「責任を負いかねます」によく似た「責任を負いかねません」という言葉があります。これは「責任を負う可能性がある」という意味の言葉です。

「〇〇かねない」とは「〇〇しそうだ」「〇〇するかもしれない」と、可能性があることを表します。つまり「負いかねません」は「(引き受けたくなくても)引き受けなければならないかもしれません」という意味で使われます。

「責任を負いかねません」は、「責任を負う可能性」と「責任を負わない可能性」どちらもあり得る状態を表していますが、ニュアンスとしては責任を負うことを心配している意味合いになります。

「責任を負いかねません」は「責任を引き受けることはできません」と断っているので、全く別の意味の言葉です。

「責任を負いかねます」の使用時の注意点

  • 「責任を負いかねます」を使うときに気を付けること

「責任を負いかねます」の使用上の注意点は、「負いかねます」の文言による意味の分かりにくさです。

「かねる」は前述のように漢字で「兼ねる」と書きます。「兼ねる」には「1つが2つ以上の働きをする」「一方のみならず、もう一方のことも考える」といった意味もあるため、「負います」か「負いません」か、どちらの意味なのかはっきりしない印象を与える恐れがあるのです。

この言葉自体がすでに決まり文句となっているため、誤解される心配は少ないはずですが、念のため心にとどめておきましょう。

「責任を負いかねます」の類語・言い換え表現

  • 「責任を負いかねます」の類義語

ここからは「責任を負いかねます」の似た表現を紹介します。シチュエーションによって使い分けるといいでしょう。

一切の責任を負いません

「責任を負いかねます」は遠回しな言い方でしたが、「責任を負いません」はストレートで、わかりやすい表現です。

その分、きつい印象、失礼な印象に捉えられる可能性もあるため、目上の人には「負いかねます」とするなど、状況によって使い分けましょう。

「一切」は、後ろに打ち消しの言葉を続けることで、全く、一つも、といった意味を表します。「一切」を付けることで「責任は持てない」という意味が強調されています。

自己責任となります

「自己責任」とは、自分の行動に対する責任は自分にあることを意味し、失敗や損害のリスクも自ら負うことを表します。

「自己責任となります」は、「もし何か良くないことが起きたとしても、自分で責任を負うことになる」ということを表すフレーズです。

自己責任でお願いします

前述した通り「自己責任」とは、自分の行動に対する責任は自分にあることを意味します。

「お願いします」を加えることで、相手に依頼をしています。より丁寧に言いたければ「自己責任でお願いいたします」「自己責任でお願い申し上げます」といった表現もできます。

無関係です

「無関係」とは、関係が無いこと、何の関わりも無いことを意味します。

責任を負うか、負わないかだけというよりは、そもそも自分とは一切つながりがないことを伝えたい場合に使用する言葉です。

「責任を負いかねます」を使いこなそう

相手に与える印象は、言葉の使い方によって大きく異なります。

「責任を負いかねます」は、「責任は持てない」と、断る際の言い方です。

断る際は相手に嫌悪感を抱かれがちなため、敬語を使用してできるだけ丁寧に伝えることに加え、遠回しで柔らかい言葉を選ぶことにより、断りたいことを受け入れてもらいやすい可能性があります。しかしその分、わかりづらくなってしまう場合もあります。

相手に対する敬意や誠実な思いを大切にしつつ、自分の言いたいことを相手に正しく伝えられるように心掛けましょう。