渡辺明名人に藤井聡太竜王が挑戦する第81期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は、第4局が5月21日(日)・22日(月)に福岡県飯塚市の「麻生大浦荘」で行われました。対局の結果、69手で快勝した藤井竜王がスコアを3勝1敗として自身初の名人獲得に向け大きく前進しました。

藤井竜王の選択は反発

藤井竜王の記した封じ手を立会人の深浦康市九段が開封して2日目の戦いが始まります。後手の渡辺名人が打った桂取りの歩に対し、先手の藤井竜王の答えは強気の桂跳ねでした。その後も、藤井竜王の指し手からは積極的な駒交換で反撃を目指したい考えが伝わります。渡辺名人が8筋に歩を叩いたところで、藤井竜王は本局最後となる長考に沈みました。

1時間12分の慎重な考慮の末、打たれた歩を力強く玉で取った藤井竜王は、手番を握って本格的な攻撃に出ます。7筋で角交換を果たした局面は次に王手飛車取りを狙う角打ちの筋が生じており、先手先手で攻めが続く理想の展開。ここまで進むと渡辺名人が序盤の工夫として打ち出した右銀活用の保留をとがめきった格好で、藤井竜王の優位は疑う余地もありません。

藤井竜王が完勝で奪取に王手

中盤も半ばの局面ながら、中継放送に備えられた将棋ソフトが示す評価値は藤井竜王に期待勝率80%の数字を与えています。この直後、藤井竜王が6筋に打った自陣角が攻防の決め手となりました。これによって渡辺名人は自陣に眠る飛車の活用を封じられた形。7一の地点に取り残された右銀も働きがなく、有効な攻めを打ち出せません。

終局時刻は16時45分、藤井竜王からの角打ちの王手を見た渡辺名人が攻防ともに見込みなしと認めて投了。夕食休憩前の早い決着で藤井竜王が奪取に王手をかけました。敗れた渡辺名人は「攻めの手順がおかしかった」と振り返りました。渡辺名人の1勝3敗で迎える注目の第5局は5月31日(水)・6月1日(木)に長野県上高井郡の「緑霞山宿 藤井荘」で行われます。

  • 勝った藤井竜王は次局に向け、「スコアのことは意識せずいい状態で望めれば」と語った(提供:日本将棋連盟)

    勝った藤井竜王は次局に向け、「スコアのことは意識せずいい状態で望めれば」と語った(提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

<記事へのコメントを見る・書く>