「第32回日本映画批評家大賞」授賞式が16日に都内で行われ、受賞者が登場した。

  • 岡田准一

    岡田准一

特別主演男優賞に選ばれた岡田准一だが、同賞は今回新たに設立されたもので、岡田が俳優としてだけでなく、アクションスタッフとしてもクレジットされるほど貢献していることから、「 アクションと演技の融合」という点を評価して設けられたという。岡田は「現場では本当にスタッフの皆さんの力になれるのか、最善を尽くせてるのかを問い続けながら、日々悩んだり上手くいかないなと思うこともたくさんあります。その中で今回の受賞をいただけると聞いた時、 実はちょっと落ち込んでる時期でして、救われた思いでした。 特別に今回の賞を岡田にあげたいと、選考理由を呼んだ時に救われる思いがしたというか」と感謝を表す。

「20代の頃に、大好きな映画に携わらせていただけるとなった時にある夢を持ちまして、世界に売れる日本の映画を作りたい、日本人の映画として誇ってもらえる映画を作り得るようになりたいという思いで、アクションや格闘技、本物を学ぶということを自分に課してきました」とこれまでを振り返った岡田。「役者さんが気づいていくれたり、監督が気づいてくれたりして 作り手に回ることになって、悩んでる時にも賞をいただけたりすることは、本当に救いになりました」と語った。

岡田はさらに「もう一つ救いという出来事がありました。現場に来た時に、中井貴一さんが『僕に会いたい』とおっしゃってくれていて、楽屋に行くと聞いて、いやいや僕から行きますとご挨拶に行ったら、『君に渡したいものがある』ということで、この時計をいただきました」と時計を掲げて見せ、会場は拍手。岡田は「高倉健さんが中井さんに渡した時計だということで、『今、君の活躍、君のやっていること、君の思いを受けてこれを君に託します』とおっしゃって僕に渡してくれました。本当に悩んだり、僕がもらっていいのかという思いはたくさんあって。中井貴一さんと共演させていただいた時に真夏の暑い時期だったんですけど、中井さんは『 汗をかくとスタッフの皆さんに迷惑がかかるから』と、水も飲まないで撮影されていた。それをすごいなと思いながらも、隠れてちびちびと水を飲んでいた自分にそういう風に渡してしてくださったりしていいのかと」と苦笑する。

岡田は「でも実は、高倉健さんが志村喬さんから渡されたダイヤもありまして、それも僕の手元に高倉健さんからの流れでいただいた縁もあったり」と明かす。「コロナでお亡くなりになるほんの少し前に千葉真一さんから電話をいただいて『一緒に何かやりましょう、頑張ってますね』と一言言っていただけまして。『千葉です』とおっしゃったので、『どの千葉さんですか?』『真一です』と言われた瞬間に、直立しながら『はい』と言ったんですけど、そういう役者の中にも物語があって、つなげていくものがあって、自分がそこの場所に入れることの喜びと、つなげていかなきゃいけない責任と、皆さんに誇ってもらえる映画が作れるように悩みながら精進していけたらいいなと一段と心に誓いました」と決意を新たにしたようだった。

時計については、今後「大事な時や、また日々不安にある時だったり、映画に必要とされてないのかなと思うことや、最善を尽くそうと思ってもうまくいかないとか、皆さんもあると思うんですけど、そういう時につけていけたらいいな」と希望する。またアクションのこだわりについて聞かれると「派手な画ももちろん撮りたいし、でも予算に直結したりということもあってなかなか難しいこともあるんですが、アクションが離れない芝居を僕は信じたいし、アクション監督というのも素晴らしいあり方だと思いますけど、監督と芝居を構築する中でアクションと殺陣の違いも考えながらどう作っていけるのか、こだわりながらやるのが僕のスタイル。監督と動きを作っていくということが僕の役作りに繋がっていたのはあります。監督と自分の役の話をする時間はあまりなく、作品のことをどんどん話していくのが役作りになったと思っています」と語った。

受賞一覧

作品賞:『メタモルフォーゼの縁側』(狩山俊輔監督)
主演男優賞:中井貴一『大河への道』
主演女優賞:板谷由夏『夜明けまでバス停で』
助演男優賞:窪田正孝『ある男』
助演女優賞:吉岡里帆『島守の塔』
監督賞:三宅唱監督『ケイコ 目を澄ませて』
ドキュメンタリー賞: 『夢みる小学校』(オオタヴィン監督)
アニメーション作品賞:『夏へのトンネル、さよならの出口』(田口智久監督)
アニメーション監督賞:湯浅政明監督『犬王』
新人監督賞:竹林亮監督『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
新人男優賞(南俊子賞):坂東龍汰『フタリノセカイ』
新人女優賞(小森和子賞):伊東蒼『さがす』
脚本賞:吉田恵輔『神は見返りを求める』
編集賞(浦岡敬一賞):小林譲 竹林亮『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
ワタシタチのトキワ荘賞:一般財団法人手塚治虫文化財団
特別賞(松永武賞):立川志の輔『大河への道』
特別主演男優賞:岡田准一『ヘルドッグス』
ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞):風吹ジュン『裸足で鳴らしてみせろ』
ダイヤモンド大賞(淀川長治賞):宮本信子『メタモルフォーゼの縁側』