第36期竜王戦2組ランキング戦(主催:読売新聞社)は、準々決勝の豊島将之九段―藤井猛九段戦が4月13日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、90手で勝利した豊島九段が決勝トーナメント進出まであと1勝としました。
藤井九段の中飛車
振り駒で先手番を得た藤井九段は5筋位取り中飛車を採用しました。四間飛車党の藤井九段によるこの作戦選択に意表を突かれたか、後手の豊島九段は10分の考慮を記録。やがて方針を固めた豊島九段が表明したのは後手超速と呼ばれる急戦の態度でした。直後に藤井九段が角道を止めたことで、本局は中飛車対居飛車の力戦形に落ち着きました。
5筋の歩交換を果たした先手の藤井九段が左銀を前線に繰り出して攻撃の形を作ったのに対し、後手の豊島九段は自玉を金銀3枚で固めて戦いの時を待ちます。交換になった5筋の歩を打たずに待っているのは居飛車側の細かな工夫で、いつでも8筋の桂頭に歩を打つ手を見せることで振り飛車側に楽をさせません。
豊島九段のスピード感ある攻め
藤井九段が6筋で銀交換を迫って本格的な中盤戦が始まります。藤井九段としては直後に割り打ちの銀を打たれて金損になるのは織り込み済みで、代償として「振り飛車は左桂の捌きが命」の格言通り左桂を中央にさばいて局面の主導権をキープしました。形勢は互角で、藤井九段が5筋に垂らした歩がと金になるまでに豊島九段が攻め手を作れるかが局面のポイントです。
手番を握った後手の豊島九段はここから怒涛の反撃を開始します。飛車を切って角を入手したのを皮切りに、先手からの角取りにも構わず5筋に垂れ歩を打ち返したのが継続の好手でした。先手に角を取らせている間にと金作りを間に合わせるという「終盤は駒の損得より速度」の格言通りの好着想によって、豊島九段が少しずつペースをつかみ始めました。
と金攻めが勝敗分ける
軽快な攻めを続ける豊島九段は、4筋に飛び出した角を起点に先手玉への寄せの網を絞ります。美濃崩しの急所であるコビンへの桂打ちをチラつかせながら先手陣に馬を作ったのが厳しく、藤井九段に攻めのチャンスを与えません。終局時刻は20時38分、最後は再度5筋に垂れ歩を放って切れない攻めを実現した豊島九段が攻め切って勝利をつかみました。
これで勝った豊島九段は2組ランキング戦の準決勝に進出。次局で決勝トーナメント進出をかけて斎藤慎太郎八段と対戦します。敗れた藤井九段は昇級者決定戦に回ります。
水留 啓(将棋情報局)