第36期竜王戦1組ランキング戦(主催:読売新聞社)は、準決勝の永瀬拓矢王座―羽生善治九段戦が4月12日(水)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、79手で勝利した羽生九段が決勝トーナメント進出を決めました。

6筋の位をめぐる戦い

振り駒が行われた本局、先手の羽生九段は角換わり腰掛け銀に構えます。相腰掛け銀の戦型で応じた後手の永瀬王座が6筋の位を取る工夫を見せたのを受け、羽生九段はすぐさま同筋の歩を突いて反発。この位が安定すると後手からの自陣角の威力が絶大と見る判断により、早い段階で盤上中央での勢力争いが起こりました。

手番を握った羽生九段は3筋の歩を突き捨てて本格的な攻めを開始。素直に応じては不満と見た永瀬王座が自陣角を打って局面を複雑化させたことで局面は一時的な安定を得たように思われました。しかしここから羽生九段の攻撃は勢いを増していきます。盤上中央で銀をぶつけたのを皮切りに、成り捨ての歩の手筋で後手陣を乱したのが好判断でした。

羽生九段が快勝で決勝進出

割り打ちの銀を狙われた後手の永瀬王座は、羽生九段のこの歩成りを金で取ることができません。角取りの桂跳ねで攻め合ったのはやむをえない対応ですが、ここ数手での読み合いで競り勝った羽生九段が形勢をリードして局面は終盤戦に突入しました。永瀬王座としては銀交換後の攻めの組み立てに誤算があった形で、苦しい時間が続きます。

6筋にと金を作ることに成功した先手の羽生九段は、このと金を使って着実に永瀬玉への寄せを描きます。右辺に逃げ出した玉の横に銀を打ったのが「玉の腹から銀を打て」の格言通りの一手となり、ここで羽生九段の勝勢が明らかに。終局時刻は17時46分、自玉の受けなしを認めた永瀬王座が投了を告げて羽生九段の勝ちが決まりました。投了直前、永瀬王座が駒を投じるまでに6分の持ち時間を消費したことがその悔しさを物語っていました。

勝った羽生九段は決勝トーナメントに進出。次戦で1組優勝をかけて稲葉陽八段と対戦します。敗れた永瀬王座は出場者決定戦に回り、木村一基九段と決勝トーナメントの座を争います。

  • 羽生九段が竜王戦で永瀬王座に勝つのは初めてのことだった(1勝3敗)(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)

    羽生九段が竜王戦で永瀬王座に勝つのは初めてのことだった(1勝3敗)(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)