西山朋佳女王に甲斐智美女流五段が挑む第16期マイナビ女子オープン五番勝負は、第1局が4月4日(火)に神奈川県秦野市の「元湯 陣屋」で行われました。対局の結果、112手で勝利した西山女王が6連覇に向けて好スタートを切りました。
三間飛車対居飛車穴熊の対抗形
振り駒が行われた開幕局、後手となった西山女王が角道を止める三間飛車に構えたのに対して先手の甲斐女流五段は居飛車穴熊の堅陣で対抗します。西山女王が石田流の攻撃形に組み替えたのを見た甲斐女流五段は、盤上中央で銀交換を迫ってさっそく局面を動かしにかかりました。離れ駒となっている居飛車の右金がどう働くかに注目が集まります。
甲斐女流五段の積極策を見た後手の西山女王は持ち時間を投入して慎重に対策を練ります。飛車の横利きを通して守りに働かせた西山女王は、続いて5筋の歩をぶつけて反撃を開始しました。先手が素直に応じれば飛車交換から飛車を打ち込んで先手陣の浮き駒の金を狙う構想ですが、対する甲斐女流五段も我が道を行く攻め合いで後手陣に角を成り込み反発します。
難解なねじり合い続く
手番を得た後手の西山女王は、軽いさばきで局面を打開します。タダのところに桂を跳ね出したのがその手始めで、手順に3筋の飛車の利きを通すことで先手の馬を取る狙いが生じています。形勢は難解ながら、この馬を入手しつつ自然な指し回しで攻め駒を先手陣に迫らせた西山女王がペースをつかんで戦いは終盤戦に突入していきます。
長いねじり合いが続いたのち、後手の甲斐女流五段にもチャンスが訪れます。攻めあぐねた西山女王が飛車先に合わせの歩を打って手を渡した局面はひとつのポイントで、深浦康市九段と高野秀行六段を中心とする控室の面々も形勢の接近を口にしました。感想戦でも触れられた通り、ここはじっと9筋の歩を突いて後手の桂を捕獲する手が有力とされました。
西山女王が先勝
ここで甲斐女流五段は残り5分の持ち時間をすべて投入して歩を取る受けを選びますが、結果的にこの手を後悔することになりました。この手を見た後手の西山女王はすぐさま先手陣に桂を飛び込む穴熊崩しを敢行。直後の銀捨てと合わせてピッタリの手順で先手の穴熊を崩すことに成功しました。甲斐女流五段は右金が遊び駒になっているのが響きます。
終局時刻は17時9分、粘る甲斐女流五段の追撃をかわし切った西山女王が切れ味鋭い寄せで先手玉を仕留めて熱戦に幕が下ろされました。他棋戦も含めて陣屋での対局で5戦勝ちから遠ざかっていた西山女王としては、悪いジンクスを吹き飛ばした格好です。注目の第2局は4月19日(水)に山梨県甲府市の「常磐ホテル」で行われます。
水留 啓(将棋情報局)