ICTを活用し、地域社会・産業の課題を解決しているNTT西日本グループ。徳島県美馬市では、市内経済の好循環を創出することなどを目指し、デジタル地域通貨「MIMACA(みまか)」の導入・運用を支援している。この取り組みについて、NTT西日本の加藤拓 徳島支店長に聞いた。
■誰もが使いやすく、地域にとって不可欠なデジタル通貨の導入に奮闘
――まずは、御社が導入・運用の支援を行ったデジタル地域通貨「MIMACA(みまか)」について教えてください
「MIMACA(みまか)」は、2022年10月1日から美馬市内で流通がスタートした電子ポイントカードです。
市内の加盟店でのみ使用できる電子ポイント「ミマポ」(1ポイント=1円)の発行・流通によって、地域経済の好循環創出をはじめ、キャッシュレス決済の普及、それによる感染症対策の強化などを目的としています。
繰り返しチャージして使えるほか、カードのほかにアプリもあります。
――デジタル地域通貨の導入・運用にあたり、御社ではどのような支援を行ったのでしょうか?
システムの導入をはじめ、効果的な制度設計を目的とした各種法令・他自治体事例の調査、監督官庁の見解取得などの支援を実施しました。
また、美馬市内の住民および事業者に対し、本事業の広報を実施するため、ポスター及びリーフレット等の販促物作成も行いました。
加盟店さまの募集においては、美馬市内の住民の方々、および事業者さまに対して複数回説明会を行って店数の最大化に努め、スタート時には市内200以上の店舗さまに加盟していただくことができました。店舗さまが円滑に運用開始できるよう、システムの利用説明会も実施しました。
――デジタル地域通貨の導入にあたって、特に苦労された点があれば教えてください
導入後のイメージをしながら、美馬市さまと一緒に構想を練っていく作業が一番大変でしたね。
実際に地域デジタル通貨を導入している自治体さまの事例を短期間でかき集め、「美馬市さまに適した方法はどれか」「どうすれば多くの人に利用いただけるか」と議論を重ねました。
その結果、誰もが使いやすく、地域にとってなくてはならないサービスになるよう、美馬市さまにとって最適の形を作り上げていくことができたと思います。
■住民の利便性向上や自治体のコスト削減を実現
――現在、「MIMACA(みまか)」はどのように活用されているのでしょうか?
マイナンバーカード所有者や子育て世帯へ向けての生活支援金を「MIMACA(みまか)」を通じて支給したり、マイナンバーカードの取得推進キャンペーンとしてカード取得者に1万ポイントを付与したりと、既にさまざまに活用されています。
紙で新たなクーポン券などを発行するのと比較すると、地域デジタル通貨では迅速にかつ一括で支給が可能なので、利用者にとってメリットが大きいと感じております。
また印刷や配布などの作業が不要になることで、自治体さまのコスト削減にもつながっています。
■住みやすくサステナブルな街「スマートタウン」を目指して
――今回の取り組みも含め、今後の展望を教えてください
いま、日本中で少子高齢化が進み、働き手や後継者の不足が深刻化しています。特に地方ではその傾向が顕著であり、地域レベルで産業が衰退していくと、税収の減少・行政サービスのクオリティー低下など、暮らしやすさが失われていくと危惧しております。
この循環を断ち切って好転させていくために、NTT西日本グループはICTソリューションの活用により地域のスマート化を支援してします。住みやすくサステナブルな街の実現に向けて、ヒト・モノ・情報をスムーズにつなげる取り組みの一つが、今回の美馬市の事例です。
「MIMACA(みまか)」については、当面、加盟店の拡大や市民のみなさまの活用促進による定着が急務ですが、現在の取り組み以上に大きな可能性を秘めていると感じております。デジタル地域通貨を運用する各地の自治体では、公共料金の支払いを可能としているところや、健康増進活動・ボランティア活動の参加者にポイントを付与する動きなどもあります。
もっと便利に暮らしやすく、ICTを活用してあるべき「スマートタウン」の姿を自治体さまと一緒に模索していきたいですね。