NTT西日本は3月20日、大阪で「未来のお笑イブ!! Supported by よしもと」を開催した。NTTが開発を進めている次世代通信「IOWN」(アイオン)を活用したお笑いイベントで、人気お笑いコンビが遠隔地にいる相方とリモート漫才を披露。遅延を感じさせない、抜群の"間"で両会場を訪れたファンの笑いを誘った。
次世代通信「IOWN」とは?
NTTが掲げるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想では、最先端の光技術によって圧倒的な「低消費電力」「大容量・高品質」「低遅延」を実現し、世界中の様々な社会課題の解決、革新的サービスの創出を目指すとしている。
イベントの冒頭、IOWNの構成要素であるAPN(オールフォトニクス・ネットワーク)技術についても説明があった。インターネットなど現代の一般的な光通信は、電気から光に、光から電気に信号変換を行いながら様々な機器を経由して情報を伝送している。これをネットワークから端末まで、できるだけ"光のままで"伝送するのがAPNであり、同技術によってこれまでにない「低消費電力」「大容量・高品質」「低遅延」が実現できるという。
この日、大阪・京橋会場(NTT西日本 QUINTBRIDGE)にはジャルジャルの福徳秀介さん、COWCOWの善しさんが登壇し、難波会場(よしもと漫才劇場)にはジャルジャルの後藤淳平さん、COWCOWの多田健二さんがスタンバイ。吉本興業のお笑いファンが観覧に訪れた両会場をIOWNでつなげ、リモート漫才を成立させた。
MCを務めた久代萌美アナウンサーは、はじめに「私の感覚ではリモート接続は音声や映像が少し遅れて届くので、漫才の絶妙な掛け合いは成立しづらいのではないかと思うんですが、大丈夫なんでしょうか……」と前フリ。そこで、まずは従来のネットワーク設備で2つの会場を結んだ。すると「はいどうもー、ジャルジャルでーす」のかけ声が、どうしてもワンテンポ遅れる。COWCOWのふたりも、じゃんけんの呼吸が合わずに「後だし止めてよ」とお互いをなじった。
次にIOWNで両会場をつなげると、なるほど、まったく遅延しない。説明によれば、遅延時間はわずか0.02秒。これは5m離れた人と会話するときに生じる遅延時間と同じそうだ。「本当にいつも通り。これなら、まったく違和感なく漫才もできそうです」と福徳さん。
ジャルジャルは、国名分けっこというネタを披露した。福徳さんと後藤さんの「アメ」「リカ!」「イギ」「リス!」「ニッ」「ポン!」という絶妙な掛け合いがテンポよくはまり、2つの会場で爆笑が起きる。続くCOWCOWは、あたりまえ体操などの音楽ネタを披露。こちらも息がぴったりと合っており、両会場で拍手が起こった。
漫才を終えて、善しさんは「はじめは、ちゃんとできるのかなと思っていました。間が大事なので、遅延が心配だった。でもやってみたらタイムラグもなかった。ただ今日はいつもより会場が広かったので、相方はちょっと緊張していたみたいです。これからはIOWNを使いたい。小さい劇場でやった映像を大きな劇場のビジョンに映せば、緊張もしませんし」。福徳さんも「まったく違和感なく、とても自然に漫才できました。IOWNの環境とモニターさえあれば劇場に出られるのであれば、1日40ステージこなせる時代も来るんじゃないか、と思いました」と笑顔を見せた。
さらにステージ上には、ジュースごくごく倶楽部(吉本興業のお笑い芸人が6人で結成したバンド)が登場。メンバーは京橋 / 難波 / 梅田の3会場に散らばっていたが、IOWNで結ぶことで音の遅延のない、見事なライブパフォーマンスを披露した。
辻クラシックさんは「今後、メンバーの1名は大阪に残るんです。でも、こういう環境があれば練習できますね。なんなら本番も1名だけ遠隔で良いんじゃないか、とも思いました。交通費も浮きますし」。そして「お客さんの声もIOWNで遅延なくこちらに届くようになったら、リモートライブでも、より生のライブ感が出るのかな、と思います」と話していた。
このあとトークセッションに登壇したNTT 代表取締役副社長の川添雄彦氏は、IOWN構想についてあらためて説明する。本日のイベントでは「低遅延」がテーマだったが、ほかに「低消費電力」も特徴としており、消費電力の大幅な削減によりカーボンニュートラルへの取り組みにも貢献できるとした。「将来はスマートフォンも充電が要らなくなるかも知れません。自動巻き腕時計は腕の動きだけで自動充電できますが、そのような小さな電力でスマホを動かせる時代が来るのではないでしょうか」と川添氏。商用サービスを3月16日にスタートさせたばかりのIOWNについて、大きな期待を寄せた。