伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、挑戦者決定リーグ紅組の豊島将之九段―徳田拳士四段戦が3月22日(水)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、89手で豊島九段が勝利してリーグ成績を2勝1敗としました。敗れた徳田四段は0勝2敗となっています。
両者の初手合いは角換わりに
先手となった豊島九段は得意の角換わり腰掛け銀に誘導します。仕掛けをめぐる間合いの計り合いが続いたのち、後手の徳田四段が6筋の歩を突っかけたことで戦端が開かれました。先攻を許した豊島九段ですが、後手玉が戦場近くの5筋にいることは見逃せない主張点。手順に飛車を大きく転換して6筋からの逆襲を狙います。
手番を握った豊島九段は、自玉を守っていた左銀を前線に繰り出して棒銀の要領で反撃を目指します。歩を打って追い返されたときに強くこの銀を差し出して銀桂交換を迫ったのが中盤の勝負手。双方の玉の近くの勢力争いに勝つために豊島九段は多少の駒損もいといません。直後に控えるたたきの歩も継続手で、後手玉を危険地帯に引き出す狙いがあります。
豊島九段が先輩の貫録示す
たたきの歩を受けた後手の徳田四段は、この金取りを放置する驚きの対応を繰り出しました。この金を取らせる代償に手番を握って反撃をしようという狙いで、以降も難解な中盤戦が続きます。その後、先手の豊島九段が攻防の自陣桂を打って応戦した局面は徳田四段にとってのチャンスで、ここは勢いよく角を切って攻め続ける手も有力とされました。
ピンチをしのいだ豊島九段は、ここから再び攻勢を強めます。8筋に遠見の角を打って王手をかけたのが攻防の決め手。後手の飛車の利きを止めながら徳田玉への寄せの網を絞っていきます。終局時刻は19時19分、最後は質駒の銀を入手して後手玉を即詰みに討ち取った豊島九段が勝利。今期のリーグ成績を2勝1敗の白星先行としました。敗れた徳田四段は0勝2敗となっています。
水留 啓(将棋情報局)