ビジネスシーンでもよく耳にする「お気をつけて」という言葉。相手を気遣うような言葉ですが、使う相手や状況によって少し注意が必要です。
本記事では「お気をつけて」の意味や目上の人への使い方はもちろん、シーンごとの例文や注意点、言い換え、英語などを紹介します。
「お気をつけて」の意味とは?
「気をつける」には「注意する」という意味があります。そこで、相手に注意してほしいと伝えるときは「気を付けて」を用います。
この「気をつけて」に、尊敬を表す接頭語の「お」をつけたのが「お気をつけて」です。
「お気をつけて」だけで目上の人に使える? 敬語表現は?
「お気をつけて」は、「お」で相手への敬意を込めつつ、「注意してほしい」旨を短く伝えられる便利な言葉です。
しかし目上の人に使う場合は、「お気をつけて行ってらっしゃいませ」「お気をつけてお越しください」など、尊敬の意を込めた動詞を続けるのが望ましいでしょう。
「お気をつけて」の使い方と例文
ここからはシーンごとに、「お気をつけて」の使い方と例文を紹介します。
上司など目上の相手が、出張や旅行をする際に送り出す場合
「お気をつけて」は、遠方に行く相手を送り出すときに使用することが多いです。
このとき、「会社を出てから目的地に着くまでが、無事でありますように」というニュアンスを込めて、「行ってらっしゃいませ」と併せて使うことが多いです。旅などの途中を意味する「道中」を組み合わせて使うこともよくあります。
また、誠心誠意、依頼や懇願をする様子を表す「くれぐれも」を伴うと、「気をつけて」という気持ちがより強調されます。
・道中、お気をつけて行ってらっしゃいませ
・台風が近づいておりますので、くれぐれもお気をつけて行ってらっしゃいませ
なお、「行ってらっしゃい」はもともと「行っていらっしゃい」の略です。「いらっしゃい」は、「行く」「来る」「居る」などの尊敬語である「いらっしゃる」の命令形です。
「ませ」は、丁寧の気持ちを込めてお願いやあいさつをするときに、語尾につける言葉です。
目上の相手を見送る場合
取引先など、目上の人が帰るのを見送る際にも「お気をつけて」を使用することができます。
例えば天気の状態や、それにより考えられる弊害など、状況に合わせて一言添えることで、より良い印象を与えられるでしょう。
・雨で滑りやすくなっておりますので、足元にお気をつけてお帰りくださいませ
・天気が怪しくなってきましたので、お気をつけてお帰りください
目上の相手をこちらに招く場合
「お気をつけて」は相手に来てもらうときの声掛けにも使えます。こちらも状況に応じて一言添えることで、気遣いの気持ちがより伝わるでしょう。
なお「越す」は「お越し」の形で、「行く」「来る」の尊敬語として使われます。
・大雨で足元が悪くなっております。お気をつけてお越しください
・明日は雪の予報が出ています。くれぐれもお気をつけてお越しください
相手の体調をいたわる場合
「お気をつけて」は、特にしばらく会えない相手などに対し、体調などをいたわるときにも使えます。
「暑さや寒さ、季節の状態」などに、相手のことである「お体」「体調」を続け、さらに「お気をつけてお過ごしください」などとつなげます。
このとき、「お体」「体調」に「お気をつけください」とつなげることもできます。ただし、「お気をつけてください」は間違った表現です。「て」は不要なので注意しましょう。
・厳しい暑さがしばらく続きますが、体調にはくれぐれもお気をつけてお過ごしください
・季節の変わり目ですので、お体にはお気をつけください
「お気をつけて」の類語・言い換え表現
次に、「お気をつけて」の類語を見ていきましょう。
お大事に
類語表現の一つに「お大事に」があります。相手の健康を気遣う言い回しですが、注意すべき点としては、既に体調を崩している、またはけがをしている相手にのみ使えるということです。特に不調がない元気な人に対して使うと、違和感があります。
「お大事に」だけでも使用できますが、「お大事に」は「お大事になさってください」や「お大事にしてください」の略語とされているため、目上の人には略さずに伝えるとより丁寧でしょう。
ご自愛
「ご自愛」は「お大事に」と同じく、相手の健康を気遣う意味の言葉です。
こちらは相手の体調に関係なく使用できます。「時節柄、どうぞご自愛ください」などの形で使用します。
なお、「自愛」は「自分の体を大切にすること」という意味のため、「お体ご自愛ください」とすると意味が重複してしまうので気をつけましょう。
ご用心
「用心」は「大変なことにならないよう注意すること、気をつけること」という意味の言葉です。「ご用心ください」などの形で、相手に注意を促すことができます。
ご留意
「留意」は「りゅうい」と読み、「ある物事に心を留めておく、気をつける」という意味を表しています。
「健康にはくれぐれもご留意ください」「ご留意いただきますよう、お願いいたします」などの形で使用します。
「お気をつけて」を使うときの注意点
場合によっては、「お気をつけて」が嫌みに聞こえてしまうことがあるため注意しましょう。例えば足を骨折して治ったばかりの人に、「足元にお気をつけて」を声を掛けるなどのシーンです。
また例えばランチなど、ごく近場へのよくある外出の際に使うと、大げさに聞こえてしまうかもしれません。その場合は「行ってらっしゃい(ませ)」などのシンプルな言い回しをするといいでしょう。
さらに前述のように「お気をつけて」に「ください」をつなげた「お気をつけてください」は誤った表現です。この場合は「て」は不要で、「お気をつけください」とします。
「お気をつけて」の英語表現
「お気をつけて」を英語で言うと、どのような表現になるのでしょうか。シーンごとに見ていきましょう。
相手を送り出す場合やこちらに招く場合
英語で「お気をつけて行ってらっしゃいませ」「お気をつけてお越しください」は、「have a safe trip」などで表すことができます。
車での移動の際には「have a safe drive」、飛行機の場合は「have a safe flight」などを用いてもいいでしょう。
- Have a safe trip.(お気をつけて行ってらっしゃいませ)
- Have a safe trip here.(ここまで安全な旅を)
- Have a safe trip home.(家までお気をつけてお帰りください)
- Have a safe drive.(安全運転で行ってらっしゃい)
注意を促したり気遣ったりする場合
「watch your ~(体の一部)」で、「あなたの~にご注意ください」という意味を表すことができます。
また「take care」「be careful」も「気をつけて」という意味で使用できます。
- Please watch your step.(足元にご注意ください)
- Watch your head.(頭上にご注意ください)
- Take care.(お気をつけて、お元気で、お大事に)
- Please take care of your self.(どうかお体に気をつけてください)
- Please be careful, everyone.(皆さま、どうぞお気をつけください)
- Be careful of driving.(気をつけて運転してください)
「お気をつけて」を適切に活用しよう
「お気をつけて」という一言を掛けることにより、相手の身を案じる気遣いの気持ちを伝えることができます。
「お気をつけて」だけでも「お」がついているため敬語ではありますが、目上の人に使う場合は、「お気をつけて行ってらっしゃいませ」「熱いのでお気をつけて召し上がってください」など、尊敬の意を込めた動詞を続けるのが望ましいでしょう。