「指示待ち人間」とは、誰かから指示されないと行動できない、主体性のない人のことを指します。組織には多くの場合、指示待ち人間が少なからず存在します。若手のみに当てはまるように見えるかもしれませんが、実際には年齢に関わらず指示待ち人間は存在します。

指示待ち人間であることを直したいと考えてはいるものの、なかなか脱却できないという人もいるのではないでしょうか。 本記事では指示待ち人間の特徴や、なってしまう原因、指示待ち人間を脱却する方法などについて解説します。

指示待ち人間の特徴

  • 指示待ち人間とは

    指示待ち人間の特徴について解説します

ここでは指示待ち人間の特徴や心理状態について解説します。

指示待ちになってしまうのは単にやる気がないというだけではなく、さまざまな特徴があると考えられます。自分に当てはまる部分がないか、確認しましょう。

自信がなく、決断することが苦手

指示待ち人間には、自信がなく、失敗してしまうことを常に恐れているため、考えたことを行動に移せないという特徴があります。

このようなタイプは過去に大きな失敗があったり、トラウマを持っているケースがあったりするため、自発的な行動が苦手です。

その上で、決断力にも乏しいため、自分で考え判断して行動に移すこともほとんどありません。

これでは通常業務への対応は問題ないとしても、臨機応変な対応が求められるとき、緊急事態に陥ったときなどは適切な判断が難しいでしょう。

自分の意見を言えない、質問できない

批判されることを恐れて萎縮してしまうことも、指示待ち人間の特徴に当てはまります。

「反対意見を言われるのでは」「責められるのでは」「怒られるのでは」など、強いマイナスイメージのために、意見や質問をすることができないというパターンです。

このタイプの人は、意見は持っていて、自分でどうにかしなければという気持ちはあっても、萎縮してしまい行動に移せない傾向にあります。

結果的に周りから「自分の意思がない」「やる気がない」という評価を受けてしまいがちです。

より良くしようという責任感がなく、周りにも無関心

指示された分の仕事をすれば終わりという人は、決してやる気がないわけではないのですが、自分で考えてより良くしようという気持ちが働かないため、やはり指示待ち人間に当てはまります。仕事に対して、「自分の仕事」というよりは、どこかひとごとなのです。

また、周囲の人間に関して関心が薄く、自分から積極的に関わらない人も多く見られます。業務で現場が忙殺されていようが、自分の分が終了すればサボったり帰ったりしてしまうので、他人からはあまり責任感があるように見られません。

もちろん、度を越えた残業は問題ですし、完全に個人主義の会社もあるでしょう。しかし多くの会社ではチームワークが重要ですので、連携したり助け合ったりしなければ、その弊害も起きてしまいます。

指示待ち人間になる原因

  • 指示待ち人間になる理由

    指示待ち人間になってしまう原因は何なのでしょう?

指示待ち人間であることは、本人にとっても不本意ということもあるでしょう。それにもかかわらず、どうして指示待ち人間になってしまうのでしょうか。

この章では指示待ち人間になってしまう原因を、その人の心理的状態や環境などを元に解説します。

積極的に動いたことによる失敗経験

積極的に行動した結果を上司から否定されたという、過去の失敗に起因して指示待ち人間となる人は珍しくありません。

これに該当する人の多くは、積極的に動いてはいけないと自分に制限をかけてしまい、行動に移せない状況に陥っています。

実際に自分が失敗した経験以外にも、勝手に判断しないように上司からあらかじめ指示を受けた過去や、自己判断で動いた同僚が、理由の説明なしに叱責されているのを目の当たりにしたことなども影響するでしょう。

また、質問をしたら「そんなことも分からないのか」と理不尽に怒られてしまったことなどが積み重なって、自信がなくなってしまうということもあります。

自分で考える必要性のない環境

ただ自分に与えられた仕事をこなすだけでは、自分で判断しないという悪い習慣がつくこともあります。

仕事内容や職場の環境次第ですが、いつも誰かから指示された作業だけをするということが染みつくと、言われたこと以外はやらなくいいという考え方が定着しがちです。

その結果、自分で考えることを放棄した主体性がない人間になってしまいます。自分の成長のためにも、次に何をすればいいのか、より効率をアップさせるためにはどうすればいいのかなどを考えながら作業をすることが大切です。

自分が動くよりも前に誰かが動いてしまう

あまりにも周りの人たちが優秀過ぎることも、指示待ち人間を作り出す原因の一つです。

例えば自分の上司やサポート職の人が、いつも的確で分かりやすい指示を出してくれたり、自分がやる前に動いてさまざまなフォローをしてくれたりするということは、経験が少ない人にとってありがたいことです。

しかしその反面、いつまでも全てをお膳立てしてもらっていては、自分の成長につながる経験を積む機会がほとんどなくなってしまい、自発的に動けない人間が生まれてしまいます。

周囲の人がいなくても自立して仕事ができるよう、環境に甘え過ぎないようにしなければなりません。

自分の意見をはっきりと言えない環境

自分の意見が言いにくい環境では、考えを伝えることも積極的に質問することも難しくなり、結果として指示待ち人間になってしまいがちです。

例えば、上司が意見を聞いてくれなかったり、態度が高圧的であったりすると、自分の意見を伝えづらく受け身の姿勢になりやすいでしょう。このような状態が続けば、本人も望んでいないのに、知らず知らずのうちに指示待ち人間になってしまいます。

積もり積もって、自分自身の将来についても何も考えがなく無関心な状態になってしまうのは、大きな問題です。

指示待ち人間を脱却するための対策方法

  • 指示待ち人間を脱却するための対策

    指示待ち人間を脱却するにはどうすればいいのでしょうか?

指示待ち人間の特徴と、そうなる原因が分かったところで、ここからは指示待ち人間を脱却するための解決策を説明します。

自分のキャリアアップのためにも、すぐに取り入れられそうなものがあれば実践してみましょう。

自分で考えるクセを身に付ける

指示を受けて即座に作業に取り掛かるのはいいことですが、余裕があるのならその前に立ち止まって、少し考えてみましょう。

指示の意図を考えてみることで目的が鮮明になり、見通しが良くなることで、どのような準備をしなければいけないかや、どんな段取りで進めると効率的かがはっきりします。

また、自分で考える習慣を身に付けることで、分からないことや曖昧な部分について、具体的な質問ができます。メモを取るようにすると、指示を整理しやすくなるでしょう。

目的意識を持って作業をする

言われたことを思い入れもなく、淡々とこなすことが習慣になっている場合は、改めて仕事のやりがいや、社会での必要性などを認識しましょう。積極性を取り戻し、当事者意識を持って仕事に取り組むことができるかもしれません。

自分で考えるのはもちろん、上司に対してこの仕事の目的は何か、何につながるのかといったことを質問するのもいいでしょう。もちろん「この仕事に何の意味があるのですか?」といった聞き方では嫌みにとられてしまうため、聞き方には注意が必要です。

目標を設定する

目標を設定すれば、設定した目標を元に自分がやらなければならないことを行動に移しやすくなります。

例えば月単位・四半期単位など、短い期間で目標を設定し、その目標に対してどのような行動をとるべきか考えるようにします。

とはいうものの、最初の内はどのような目標を立てたらいいか分からないことも考えられます。周りの人に相談してアドバイスを受けた上で、今の自分には何が必要かを考えてみるといいでしょう。

上司や先輩とのコミュニケーションを積極的にとる

コミュニケーションがとりやすく、質問がしやすい環境であれば積極的に動きやすいですね。そこで、普段から上司や周囲の人とのコミュニケーションを密にとっておくことが大切です。

あらかじめ上司や周囲の人とコミュニケーションをとって、信頼関係を築いておけば、こちらからの質問がしやすくなるでしょう。

周囲の人をよく見て、良いところを取り入れたり、できることを提案したりする

失敗を恐れ、自分のことだけで手いっぱいになっている人は、いったん落ち着いて周りを見てみるといいでしょう。

自分の周りで、積極的に行動をしていたり、効率良く仕事をしていたりする人がいれば、その人を観察することでヒントを得られる可能性があります。

自分でもできそうなことや、いいなと思ったことはメモをとり実践することで、指示待ち人間を脱却するきっかけにできます。

また普段から周囲を見渡し、困っている人はいないか、何をしてほしそうかを想像し、行動するクセをつけることをおすすめします。そして自分に余裕があれば「○○しましょうか?」と一声掛けてみるといいでしょう。

もし何をすればいいのか、具体的に読み取ることができなければ、「何か私にできることはありませんか?」「お手伝いできることはありますか?」と聞いてみましょう。

その気遣いが重なっていけば、上司や同僚との関係も築きやすくなるでしょう。

作業の進捗管理、スケジュール管理を行う

自らの仕事の進捗やスケジュールを管理することも、指示待ち状態を脱却するには大切です。言われたことをただダラダラとやるのではなく、いつまでにどこまでやるのかということを自分で考えることで、主体性を持つことにつながります。

また進捗管理やスケジュール管理ができることで、今後の仕事の見通しが立つことはもちろん、余裕がありそうかがわかります。もし余裕があるなら仕事の完成度を上げたり、他の人の手伝いやスキルアップに時間を充てたりなど、有効な時間の使い方を考えることができるでしょう。

指示待ち人間に向いている職業に転職する

指示待ち人間から脱却しようとしても、性格や、職場との相性でなかなか変えられないという人は、思い切って転職するのも一つの方法です。

自分が指示待ち人間だと思う人には、ルーティンワークのような、その日の業務内容がほぼ決まっている仕事が向いているでしょう。

例を挙げると工場での製造業務や事務職、テスターなどが考えられます。大切なのは、明確なルールやマニュアルに沿った仕事であること。決まったことを的確に、着実にこなすことができるという、あなたの特性が生かせるでしょう。

ただし、例えば事務職といっても、その仕事内容はさまざまです。事務職でも、イレギュラーなことが多く、臨機応変に自分で考えて行動しなければならない職場もあるでしょう。転職する際は、しっかりと求人内容を吟味する必要があります。

指示待ち人間から脱却したい人におすすめの本3選

  • 指示待ち人間から変わりたい人におすすめの本

    指示待ち人間を脱却するためにおすすめの本を紹介します

指示待ち人間から脱却したいけれど、なかなか思うようにいかないという人のためにおすすめの本を紹介します。

『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』

著者は大手IT企業の役員出身である越川慎司さんです。トップクラスの成績を収める社員の特徴、共通点をAIで分析し、効率よく成果を出すコツ、仕事が速く終わるツボなどを解説しています。

誰でもできる習慣や仕事術なので、すぐに実戦に生かせるという点もおすすめする理由の一つです。

『まんがでわかる 30歳から伸びる人、30歳で止まる人』

著者の有川真由美さんは、多くの転職、職種チェンジを経験しており、それを生かして複数の書籍を執筆しています。

多くの人にとって、30歳前後は私生活においても仕事においても、さまざまなターニングポイントを迎えます。その際どのような考え方や行動、ふるまいをすればいいのかをエッセー風の漫画で解説しています。こんな未来があるのかと、人生観を豊かにしてくれる一冊でしょう。

『自分をサクサク動かすセルフマネジメント』

著者は、モチベーション・マネジメント、アンガーマネジメントの講演や研修も行う川嵜昌子さんです。

昨今ではコロナ禍によりリモートワークが増え、よりセルフコントロールが重要になりました。仕事におけるセルフマネジメントはもちろん、日常生活における自己管理方法などをさまざまな視点から紹介しています。

自己管理が苦手な人にはおすすめの一冊といえるでしょう。

受け身な指示待ち人間を変えるのは、意識と行動の変化の積み重ね

指示待ち人間を作る要因は、本人の自主性だけではなく、周りの環境や人間関係も大きく関係します。指示待ち人間を脱却したい人は、自分にできることから習慣化を目指しましょう。