「あいつは姑息なやつだ」「姑息な手段ばかりで腹が立つ」など、「姑息」という言葉を日常で聞く機会がある人も多いでしょう。しかし普段から使っているこの「姑息」という言葉は、多くの人が間違った意味で使っています。

今回は「姑息」の本来の意味や使い方、類義語をご紹介します。

【結論】「姑息」の本来の意味は「一時しのぎ」、「卑怯」「ずるい」ではない

「姑息」の意味は、「一時しのぎ」「その場のがれ」という意味の言葉で、「卑怯」「ずるい」といった意味は本来ありません。

以下で詳しく見ていきましょう。

「姑息」とは? 本来の意味と誤用されている意味

  • 「姑息」の意味は?

    「姑息」は誤った意味で使用されることが多い言葉です

「姑息な手段」や「姑息なやつ」というと「卑怯な」という意味を思い浮かべる人が多いでしょうか。しかし「姑息」には「卑怯」という意味はありません。

ここでは「姑息」の本来の意味と、なぜ間違った意味で認識されているのかをご紹介します。

「姑息」の本来の意味

「姑息」の正しい意味は「その場しのぎ」「一時的な手段や間に合わせ」といった意味です。しかし一般的には「卑怯」という意味で捉えている人が多いのが現状です。

「姑息」=「卑怯」は間違い? なぜ誤用されるようになったの?

「姑息」の正しい意味は「その場しのぎ」や「一時的な手段や間に合わせ」ですが、一般的には「卑怯」といった意味で使われていると説明しました。

間違った意味で使われている原因は、「姑息」の本来の意味である「その場しのぎ」や「一時的な手段」は、ネガティブな印象が強く、「卑怯なこと」というように捉えられるようになったからだといわれています。

例えば、「彼はいつも姑息な手段ばかり使うので、卑怯な人間だ」という文を読むと、大多数の人は「確かにその通りだ」と思いますよね。このように、「姑息」=「その場しのぎ」=「卑怯」というイメージから、「姑息」そのものが「卑怯」といった意味で使用されるようになってしまったのでしょう。

「姑息な手段」は「卑怯な手段」? 「一時しのぎな手段」?

文化庁は平成17年から毎年「国語に関する世論調査」の中で、漢字や外来語、敬語などの理解度といった日本語に関する国民の意識調査を行っています。

平成22年度にも「国語に関する世論調査」は行われ「姑息な手段」の意味について質問したところ、「一時しのぎ」が正しい答えだと選んだ人がわずか15%で、間違った意味である「卑怯な」という意味を選んだ人が70.9%もいたことがわかりました。

この結果からもわかるとおり、最近では「姑息」は「卑怯」という間違った意味で使われていることが多い言葉です。

参照 : 文化庁「国語に関する世論調査

「姑息」の由来・語源

「姑息」という言葉の語源は、漢字の意味からきています。

「姑息」の「姑」という字は、家族関係を表す「姑(しゅうとめ)」の意味もありますが「しばらく」や「一時的」といった意味も持つ漢字です。

次に「息」は「息をする」や「生きる」といった意味でも使用されますが「休む」「休息」といった意味でも使用されます。

この2つの漢字を組みあわせると「一時的」+「休息」で「一時的に休息を取る」となります。つまり「一時的な手段」「その場しのぎ」といった意味として「姑息」という言葉が使われるようになりました。

「姑息」の使い方・例文

  • 姑息の使い方・例文

    「姑息」の正しい使い方を理解しましょう

「姑息」の正しい意味をご紹介しました。しかし、今まで間違って使ってきた人も多く、正しい使い方もわからないという人も多いのではないでしょうか?

ここからは、間違った使い方と正しい使い方、どちらも例文を含めてご紹介します。

間違った使い方

「姑息」は

  • 「彼は姑息な手段ばかり取る」
  • 「あいつは姑息な人間だ」

といった間違った使い方がされることが多い傾向があります。

この場合「姑息」は「卑怯な手段」「卑怯な人間」といった意味で使われています。しかし正しい意味で考えると「一時的な手段」「その場限りの人間」といった意味になるので、少し違和感がある文であることがわかるでしょう。

正しい使い方・例文

「姑息」の正しい使い方としては

  • 「会議で使う書類が少し間に合わないから、姑息な手段だけど、前回の書類を使って時間を引きのばそう」

  • 「姑息な手段だけど、辞めた人の担当顧客はみんなで順番に担当しよう」

などがあります。

「その場しのぎな」「一時しのぎな」という意味で使うのが、本来の正しい使い方です。

「姑息」の類義語・言い換え表現

  • 姑息の類義語

    「姑息」にはいくつかの類義語があります

「姑息」には、いくつか似た意味を持つ類義語が存在します。「姑息」を使うと印象が悪くなりそうなビジネスシーンなどでは、類義語に置き換えて会話をすると悪いイメージを持たれなくて済むでしょう。

ここからは覚えておきたい「姑息」の類義語をご紹介します。

「一時しのぎ」「その場限り」

「一時しのぎ」「その場限り」は「姑息」の意味を説明する際にも用いられる言葉ですが「その場の少しの間だけ」という意味で使われる言葉です。

例えば「一時しのぎの対応だったが、お客様は満足してくださったのでほっとした」や「どうせその場限りの付き合いの人間なんだからと彼女は割り切って話していた」などの表現ができます。

「便宜的」「暫定的」

「便宜的」は「一旦その場の都合や様子にあわせて、とりあえずの方法で対処すること」を意味します。

また「暫定的」は「完全に物事が決まるまでの間、仮で決めた状態にしておくこと」を意味します。

例えば「これは、本社の人間が来るまでの便宜的な手段です」や「これは、あなたの言葉に嘘がないかを確認するまでの暫定的な処置です」といった表現です。

「姑息」の英語表現

  • 姑息の英語表現

    「姑息」の英語表現も学びましょう

ここでは「姑息」の英語表現をご紹介します。

英語では、「姑息」は「その場限り」「その場しのぎ」という意味で「makeshift」という単語に置き換えられます。

「姑息」の本来の意味を知ろう

「姑息」の本来の意味と使い方、類義語や英語表現をご紹介しました。

「姑息」という言葉は、平成22年度の「国語に関する世論調査」の結果からもわかるとおり、間違った意味で認識をされていることが多い言葉です。

そのため正しい意味や使い方を知ると同時に、会話の中で誤解が生まれないように気をつけることも非常に重要です。