小山怜央アマがプロ入りを目指す棋士編入試験は、第1局の徳田拳士四段戦が11月28日(月)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、166手で小山アマが勝利して通算成績を1勝0敗としました。
角換わり腰掛け銀を受けて立つ
棋士編入試験は新四段5人と対局を行い、3勝を挙げることができれば合格となるもの。合格した場合はフリークラスへの編入資格を得ます。小山アマは今年9月に行われた公式戦で勝利を収め、直近の公式戦成績を10勝5敗として受験資格を得ていました。今回の試験では順に徳田拳士四段、岡部怜央四段、狩山幹生四段、横山友紀四段、高田明浩四段との対局が予定されています。
初戦となった本局、振り駒で後手となった小山アマは先手の徳田四段の繰り出す角換わり腰掛け銀の定跡を正面から受けて立ちます。後手番らしく千日手歓迎の駒組みを見せつつも、徳田四段が攻撃陣の再編を図ったタイミングで小山アマは右銀を盤面中央に進出して揺さぶりをかけました。数局の実戦例がある進行で、盤面全体を使ったつかみどころのない戦いが続きます。
小山アマがリードを奪う
10手ほどの小競り合いののち、徳田四段は突き捨ての歩から後手の桂頭を攻めます。この手に対して堂々と桂損を受け入れたのが小山アマ用意の作戦でした。後手は桂損の代償に、飛車を大きく盤面右方に転換して敵陣に竜を作る狙いを持っています。対局開始から70手を過ぎた局面ながら、3時間の持ち時間のうち20分程度しか消費していないところに小山アマの研究の深さと広さがうかがわれました。昼食休憩を迎えた局面での形勢は小山アマのペースという評判でした。
模様の良さを自認する小山アマですが、それを具体的な優位に変えるのに苦労する時間が続きます。自陣に香を打って先手玉への照準を合わせたのは「敵玉に寄せあり」と見て一気に決めに行った手でしたが、結果的に明快な寄せは発見されませんでした。代えては先手の成香を外す手や歩を打って先手の馬を近づけて受ける手が考えられましたが、いずれも難解な変化です。いずれにせよここを境に形勢はもつれ、小山アマは悪い流れの時間帯を迎えることになりました。
徳田四段の猛追をかわして小山アマが1勝目
一気の寄せを諦めた小山アマですが、ここでいったん受けに回って自玉周りをすっきりさせたのが自身の胆力を示す立て直しでした。受けに回って相手の攻めを呼び込むのは怖いところですが、こうすることで再び徳田玉への寄せを目指すことができます。一局全体を振り返ると、小山アマとしてはここでの辛抱によって踏みとどまった格好です。
再び優位に立った小山アマは満を持して徳田玉への攻めに打って出ます。その後の寄せに一失あり一度は徳田四段に玉の脱出を許したものの、小山アマは徳田四段の読み抜けに乗じて一気に勝勢を築くことに成功しました。一気の決着を目指した徳田四段は局後、自玉の入玉を優先して息長く指すべきだったとの感想を残しました。
17時43分、自玉の詰みを認めた徳田四段が投了を告げて小山アマの勝利が決まりました。勝った小山アマは「終盤に入玉に近い形になって後悔していたが、最後は気持ちを切らさずに指したのがよかった」と熱戦を振り返りました。小山アマの注目の第2局、岡部怜央四段戦は12月12日(月)に東京・将棋会館で行われます。
水留啓(将棋情報局)