11月5日は「ごまの日」。ごま油として、またすりごまやいりごまとして料理で活躍する「ごま」は「健康に良い」と言われますが、実際にどんな効果があるのでしょうか?
今回、ごま油メーカーの「かどや製油」が「ごまの日」に向けて開催したセミナーより、『医師がすすめる抗酸化ごま生活』(アスコム刊)著者である赤坂ファミリークリニック院長の伊藤明子先生に「ごまの健康効果」について教えてもらいました。
世界中で研究されている「ごま」の健康効果
赤坂ファミリークリニック院長であり、東京大学医学部附属病院小児科、東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員もつとめる伊藤明子先生によると、人類とともに5000年以上も前にある「ごま」は、現在も世界各地で多くの研究をされていると言います。昔からある食材なのですでに知り尽くされているように思われますが、技術の革新により新たなごまの健康効果や仕組みも明らかになっているそう。
「ごまとごま油は様々な栄養素を含みます。例えば、血圧を下げる作用や糖尿病を予防する作用、また悪玉コレストロールを下げる脂質代謝の改善、循環器系の強化、肝臓を守る肝保護機能といった効果もあります。そして腸内環境の強化により、便秘対策や免疫強化などにもつながります」。
健康だけでなく、美容の面でも効果があるそう。「アンチエイジングや病気予防、やけどや外傷の治癒を促進したり、皮膚の細胞再生促進や毛髪の健康効果にも。そして抗酸化力は紫外線から肌や髪を守ります。そしてメンタルの面では睡眠の質を改善したり、ストレス緩和、情緒の安定作用もありますよ」。
「ごまは小さいですけれど『スーパーフード』と言われるように非常に多くの栄養成分が入っています」と伊藤先生。様々な栄養成分が含まれるごまの中でも、特に注目したい成分とその効果をチェックしていきましょう。
注目したい「ごまの栄養素」
タンパク質
まず注目したい成分は、アミノ酸でできた「タンパク質」。「ごま100g中、タンパク質は約20g含まれます。これはお豆腐より多く、お肉と同じくらいの量があるんです」と伊藤先生。
現在、プロテインブームが起きてはいるものの、日本人の一日当たりのタンパク質の摂取量はバブル期以降ずっと下がっており、本来必要な一日の摂取量から不足しているそう。
「ヒトの体を構成するタンパク質が不足すると、色々な不調が起こります。筋力の低下だけでなく、お肌や髪の毛もタンパク質からできていますし、脳の認知機能もアミノ酸が重要な働きをしているため、タンパク質が足りないと認知思考力の低下につながります。筋力だけでなく、体の様々ところに関係している栄養素ですね」。
また新型コロナウイルス感染症が流行っているなかで知っておきたいこととして、タンパク質が不足すると免疫力が落ちてしまうことについても言及されました。防御(免疫)タンパクである「抗体」もタンパクでできているそう。
ちょっと意外なところでは、脳内ホルモンもタンパク質が材料だと教えてもらいました。「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンや「やる気ホルモン」のドーパミン、睡眠ホルモンの「メラトニン」などもタンパク質からできているため、タンパク質の摂取量が減るとこれらの活動も減っていまいます。
鉄
鉄はごま100g中約9.9mg含まれています。少ないように感じられるかもしれませんが、これはホウレンソウの10倍、ブリの4倍もの含有量。
赤血球の中に含まれる鉄は、DNAを合成するのに必要不可欠なミネラルで、不足するとめまいや眠気、うつや倦怠感、情緒障害や学習障害、会社でのパフォーマンスの低下などが引き起こされます。
そして世界の中でも日本は「貧血大国」とも言われているそう。「私たち医者は、どの年代の女性にも鉄を摂取して欲しいとメッセージを出していますが、日本人女性の鉄分摂取量は減り続けています。その理由として、世界の中でも群を抜いて『やせ思考』があり、ダイエットをしていることが原因です。また、妊娠可能年齢の女性の鉄が少ないと、生まれる子どもの脳や全身機能にも影響があります」と伊藤先生。
亜鉛
最近注目されている要素のうち「亜鉛」も、ごま100g中に6mgと多く含んでいます。わたしたちの体内にある200以上の酵素に必要であること、また亜鉛自体に抗酸化の力も持っています。
しかし亜鉛も日本人は不足していると言います。「亜鉛の摂取基準推奨量は、男性が10mg、女性が8mgですが本来はこの量でも足りません。亜鉛が不足するととても大変で、脱毛症や皮膚炎、口内炎、貧血、太りやすくなったり、うつなどメンタルにも影響を及ぼします。また新型コロナウイルス感染症の後遺症として味覚障害が注目されていますが、亜鉛が低下しても味覚障害が起きてしまいます」。
脂質
ごまは約50%が脂質ですが、コレステロールはゼロだそう。しかも体内で産生されないけれど健康に必須の脂肪酸・リノール酸や、HDL(善玉コレステロール)を維持してLDL(悪玉コレステロール)を抑制するオレイン酸も含んでいます。
カルシウム
カルシウムは牛乳の約10倍含まれており、ごま100g中1200mgも入っています。骨や歯の成分であり、細胞の新陳代謝にも必須の栄養素です。
食物繊維
免疫に関係する栄養素として注目される食物繊維も、ごま100g中に12.6gも含まれています。これはレタスの約12倍だそう。食物繊維は多く摂取しているように感じますが、実は日本人のどの年代でも不足している栄養素です。
「食物繊維は善玉菌のエサとなり、善玉菌が増えると、善玉菌が作るアミノ酸やビタミン、脂肪酸(短鎖脂肪酸)の増加につながります。免疫だけでなく、食物繊維を多く摂るほど脳機能が強化されるという研究結果や、ヨーグルトとすりごまを長期で摂取することでアレルギー症状の緩和にもつながるという研究結果もありますよ」と伊藤先生。
ポリフェノール(ゴマリグナン)
そしてごまにしか含まれない栄養素「ゴマリグナン」。病気や老化を防ぐ抗酸化力や炎症を抑える抗炎症作用の効果がある「セサミン」もゴマリグナンのひとつ。さらに加熱・焙煎することにより、より抗酸化力がアップすると言います。
健康のために1日どのくらい食べると良い?
様々な健康効果や美容効果のあるごまですが、とはいえ一日に大量に食べることは難しいもの。一日の摂取量を伊藤先生に聞くと「すりごまを"大さじ2杯"食べてください。なおごまには皮がついているので、すって食べることをお勧めします。ごま油だと、大匙1~2杯を目安に食べましょう」。
料理油やドレッシングにごま油を使ったり、ごま和えやトッピングとしてすりごまを使ったり、使い方を知るとぐっと料理の幅も広がりそうなごま。ぜひ日々の食事に積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。