本作での役作りについても話を聞くと、今回は事前に作り込むことはしなかったという。

「今泉さんの作品は、言葉で説明して段取りっぽくやるとつまらないと思っていたので、稲垣さんと演技プランについて話すこともなかったですが、稲垣さんが市川さんとして真ん中に立ってくださっていたので、私はどうすればいいテンポやバランスになるのか自分の中で探しつつ、その場で感じたように演じました」

事前に作り込まず、相手との演技の中で作っていく役作りは、玉城にとって「新しかった」と振り返る。

「これまでは、決め台詞ではないですけど、キャラクターとしてここが大事だという、わかりやすいセリフが多く、そこの表情を意識するなどキャラクターが目立つような立ち振る舞いをしていましたが、今回はできるだけ特徴を出さないように。どこにでもいる女の子にも見えるし、でも評価されている作家という、二面性が自然に成り立つ女の子にしたいと思っていたので、役作りしましたという感じではなかったです。会話がさらっと流れていかないようには心がけましたが、普通にいそうな2人という、そこが目指すところでした」

そして、新しい役作りに挑んだ本作で「自分を信じて作品に取り組む大切さを感じました」と、大事な気づきもあったという。

「今泉監督の演出もすごく細かくあるわけではないので、自分で何かを探さないといけないとなると、自分の感性を信じないといけない。究極そこに行き着くのだなと、シンプルなところに戻ってきたという感覚がありました。人に聞く前に考えるとか、それは俳優業だけではなく人としても大切だと思いますし、撮影日数は短かったですが濃かったです」

女優として存在感を高めている玉城だが、演じるやりがいを感じる日々だという。「キャラクターを生きている時間が楽しいです。実際の私は何なのか考えることもできるし、役と現実の自分が影響し合っているような感覚が好きなので、これからもやっていけたら」と語る。

モデルの経験も生きているのか尋ねると「たくさん撮られてきたからこそ、カメラとの距離感をつかむのは上手な方ではないかなと思います」と答え、「(演技においては)ポーズっぽい動きはしないように心がけていますが、決めっぽいカットは得意です」と加えた。

また、経験を重ねていく中で「より職業的になっている気がします」と変化も。「それは私にとってはいい意味なのですが、25歳になって20代後半に突入しましたが、もっと根拠のある女優にならないといけないなと。ふわっと感覚でやってきたところがあるのですが、きちんと言葉で説明できるような、再現性のある女優になりたいと思っているので、より職業的になっていきたいです」

再現性のある女優とは、「さっきのテイクと全く同じことができるような人」とのこと。「感覚でやっているように見えて感覚だけではなく、きちんと再現できる人に憧れるので。感覚で補えるものは限界がある気がしていて、私は感覚の方面が得意ですが、現実的なものを増やしていけたら」と理想像を明かした。

今後については「いつまでできるかわからない仕事なので、いつまでやっているかもわからないですが、お仕事をいただける間は頑張りたいです」と、オファーを受けた仕事に一つ一つ向き合っていくつもりだという。そして、「誰でもできる役ではなくて、きちんと私が演じる意味のある役をやっていけたら」とも話した。

  • (C)2022「窓辺にて」製作委員会

■玉城ティナ
1997年10月8日生まれ、沖縄県出身。2012年、講談社主催オーディションでグランプリを獲得し、『ViVi』専属モデルとしてデビュー。2014年に女優デビューし、映画『Diner ダイナー』(19)、『惡の華』(19)、『AI崩壊』(20)、『ホリックxxxHOLiC』(22)、『グッバイ・クルエル・ワールド』(22)、ドラマ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(20)、『極主夫道』シリーズ、『鉄オタ道子、2万キロ』(22)、『NICE FLIGHT!』(22)などに出演。アクターズ・ショート・フィルム『物語』(22)では脚本と監督を務めた。2023年1月6日には主演映画『恋のいばら』が公開になる。