なんと超レアなVAB内部の公開も

報道陣が最後に案内されたのは、射場の「大型ロケット組立棟」(VAB)である。この大きな建屋の中では、2機のロケットを立てた状態で組み立てることが可能だ。これまで、射点から向かって左側はH-IIA、右側はH-IIBが使ってきた。H3はH-IIBの場所を改修して使っており、まさに現在、この中で作業が進められているところだ。

VABの内部が報道に公開されるのは非常にレア。筆者はもう20年くらい宇宙分野で取材を続けており、種子島には何度も来ているのだが、じつはVABの中に入ったことはまだ一度も無かった。次のチャンスはいつになるか全く分からなかったので、予定を変更して急遽取材を決めた次第である。

VABには、側面のドアから入室。1階部分は撮影禁止だったので写真は無いのだが、H-IIA側は空っぽで、H3側にはカーテンが掛かっていた。下から覗き込むと、すでに領収燃焼試験を終えた1基目のLE-9エンジンが付いているのが見えた。床との隙間はあまりないが、エンジンは上下に2分割して機体に組み付けるそうだ。

13階まであるエレベータで、降りたのは8階。この位置に見えるのは、第1段と第2段を繋げる「段間部」と呼ばれる部分だ。この段間部も、H-IIA/Bから大きく変わったところ。H-IIA/BはツルっとしたCFRP製だったが、低コスト化のために金属製になった。H3らしいポイントの1つである。

  • 8階から見えたのは段間部

    8階から見えたのは段間部。あまり注目されることがない部分である

  • 側面には、多数のケーブルが伸びていた

    側面には、多数のケーブルが伸びていた。これはCFT用だろうか

天井近くには第2段の液体水素タンクが見える。以前、三菱重工の飛島工場で出荷前に見たときの色と比べると、かなりオレンジが濃くなっていることが分かる。このオレンジは断熱材(PIF)の素材の色なのだが、紫外線が当たることで化学反応が進み、徐々に濃くなる。この色の変化も、打ち上げ延期の痕跡と言えるだろう。

  • 上の方には第2段が見える

    上の方には第2段が見える。このオレンジ色は日に焼けて濃くなっていく

  • 2021年1月の写真

    2021年1月の写真。ホワイトバランスが違うので単純比較は難しいのだが

次に4階へ降りると、高さのある空間の中に置かれている第1段を見ることができた。とにかく巨大さに圧倒されるが、これでも第1段の一部。この上にはさらに液体酸素タンクがあるし、下はエンジン部が見えていない。SRB-3は付いていなかったが、あったら「N」の文字の下あたりの高さに先端が来るはずだ。

  • 目に飛び込んできたのはこの風景

    目に飛び込んできたのはこの風景。大きすぎて上も下も画角に入りきらない

写真に入りきらなかったので動画でも撮ってみました

下の床を見ると、前後左右に大きな穴が開いている。これは、SRB-3用にくり抜かれている部分だ。H3ロケットでは、SRB-3を0本/2本/4本搭載することが可能で、初号機は2本の形態となる。前述のように、CFTはSRB-3無しで行うのだが、CFTが無事に終われば、フライトに向け、この奥と手前の穴にSRB-3が設置されることになる。

  • 下のフロアを見ると、前後左右の位置にSRB-3用の丸い穴が開いている

    下のフロアを見ると、前後左右の位置にSRB-3用の丸い穴が開いている

  • 天井にも同じ位置に穴が

    天井にも同じ位置に穴が。SRB-3を上から吊り下げるためのものだとか