ジープの「グラディエーター」が上陸したことで、日本で選べるピックアップトラックの種類が増えた。もともとあったトヨタ自動車「ハイラックス」とは価格帯が大きく異なるが、この2台の共通点と相違点は? 乗り比べて確かめた。まずはスタイル・デザインの違いだ。
いまなおピックアップが人気の国は?
ピックアップというジャンルには長い歴史がある。当初は乗用として生まれた自動車で荷物を運ぼうという考えになったとき、運転席の後ろを荷台にするという形態が自然と生まれたからだ。
しかしその後、エンジンの上に運転席を置くことで、荷台をより長く稼げるキャブオーバータイプが生まれると、多くの地域でこちらが主流になっていった。
日本も例外ではなく、かつてはトヨタ「ハイラックス」、日産自動車「ダットサン」など多くの車種が販売されていたが、キャブオーバータイプに押され、21世紀に入ってまもなく、我が国での販売が一旦終了した。
しかし、現在でもピックアップが支持される国はある。米国やタイなどだ。米国では荷台のついたスポーツカーのような感覚で乗る人が多く、タイは農村部で仕事用のクルマを乗用として使うことも多いことから、ピックアップに行きついたらしい。
さらに両国とも、ピックアップの税金が乗用車に比べて大幅に安い。これも普及を後押ししているようだ。
日本メーカーのピックアップは、近年はタイからの輸入車であることが多い。ハイラックスもそうだし、少し前まで我が国でも販売されていた三菱自動車工業「トライトン」もタイ製だった。
一方の米国では、今回紹介するジープ「グラディエーター」以外にも多くのピックアップが健在だ。我が国にはトライトンと同じ時代に、フォード「エクスプローラースポーツトラック」が輸入されたこともある。
つまり、最近の日本のピックアップのマーケットは、タイと米国で作られた車両がラインアップを構成していることになる。
デザインからわかるコンセプトの違い
それでは2台を比べていこう。まずボディサイズは、グラディエーターがやや大きい。ハイラックスが全長5,340mm、全幅1,855mm、全高1,800mmであるのに対し、グラディエーターは5,600mm×1,930mm×1850mmもある。
どちらも日本で乗るには大柄だが、そもそもなぜ、こんなに大きいのか。その理由はキャビンの中に荷室を用意するSUVとは違い、5人乗りのキャビンの後方にしっかりと積める広い荷台を用意しているためだ。
注目したいのはホイールベースで、ハイラックスが3,085mm、グラディエーターは3,490mmと全長以上の差がある。グラディエーターは「ラングラー」と同じように、エンジンを前輪より後方に置いた「フロントミッドシップ方式」としているためだ。
ピックアップであってもオフロード走行を重視して、前後の重量配分をイーブンに近づけたグラディエーターに対し、ハイラックスは荷台にある程度の荷物を載せることを想定している。思想の違いを感じる部分だ。
それ以上に違うのはスタイリングだろう。
ハイラックスは前後のフェンダーがブリスタータイプで、後輪からリアコンビランプにかけて跳ね上がるラインを入れるなどスポーティー。「GRスポーツ」バージョンが用意されているのも納得だ。
一方のグラディエーターは、独立したフロントフェンダーや垂直に近いフロントウインドーと荷台の組み合わせから、昔のピックアップの復刻版という感じを受ける。クラシカルな佇まいがむしろ新鮮だ。
インテリアはどう違う?
2台はインテリアデザインも大きく違う。グラディエーターはラングラー同様、昔のジープを思わせるフラットなインパネを持つのに対し、曲線を多用したハイラックスはモダンな乗用車テイストである。
ルーフまわりも、グラディエーターはボディと別体のハードトップを装着した構造なので、内側にロールバーが露出するなど非日常的な雰囲気だ。
一方で共通しているのは、ATのセレクターやパーキングブレーキがレバー式で、エアコンのダイヤルなど物理的なスイッチを残していること。過酷な状況でも確実に操作できて、修理も簡単なところを重視しているのだろう。
身長170cmの筆者ならどちらも楽に座れる後席は、座面を跳ね上げて荷物置き場にすることが可能。屋根付きの荷室を持たないピックアップならではの配慮だ。グラディエーターはこの部分が収納スペースになっていて、使い勝手で一歩リードしていた。
もうひとつ、グラディエーターで目立つのは、リアウインドーが開閉可能であること。トライトンやスポーツトラックにもあったこの装備、窓を開けて走ると風が抜けて気持ちいい。ハイラックスにも用意してほしいものだ。
荷台の作りもグラディエーターのほうが凝っていて、内側が樹脂でカバーがしてあり、照明まで付いている。使い方の違いが連想できる。
メカニズムや試乗した印象の違いについては別稿でお伝えしたい。