広告代理店、保険代理店など、「代理店」という言葉を耳にすることは多いですよね。さまざまな働き方が広まる中、最近では、この代理店というビジネス形態にも多くの注目が集まっています。しかし、代理店とはどのような内容なのか、詳しく知らない人も多いでしょう。

そこでこの記事では、代理店についてわかりやすく解説します。代理店の概要や種類のほか、フランチャイズとの違い、代理店ビジネスのメリットやデメリットもあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

■代理店とは

<代理店の定義>

まず、代理店の意味から確認してみましょう。代理店とは、「特定の会社や団体からの委託を受け、取引の代理を行う店や会社、個人」のことです。代理店は、委託する企業と契約を結び、その企業の代わりに顧客と接して委託された業務を実行します。

取引の代理を依頼する会社や団体は、何らかの商品やサービスを扱うメーカーまたは卸売業者であることが多く、一般的に、代理店と対比して「代理店本部」と呼ばれます。代理店は、契約を結んだ代理店本部の代わりに商品やサービスを顧客に届けますが、代理店の業務範囲は契約によってまちまちです。

たとえば、後ほど解説する「販売店」のように、商品の販売のほかアフターフォローまで請け負う場合があります。一方、商品やサービスを顧客に案内したら、その後の購入段階はメーカーが引き継ぐという場合もあり、その形はさまざまです。

<代理店と販売店の違い>

次に、代理店と販売店の違いを確認してみましょう。代理店とは広い意味を持つ言葉で、その中には契約形態ごとに販売店や取次店、特約店などの種類があります。

つまり、販売店とは代理店の一種なのですが、厳密に言うと代理店と販売店は仕組みが異なっています。混同して使われがちな代理店と販売店ですが、両者には以下のような違いがあります。

・代理店

代理店は、メーカーなど代理店本部の代わりに、顧客に商品やサービスの販売活動をします。しかし、代理店が顧客と契約を結ぶことはありません。提案や契約までのサポートはするものの、代理店の役割はあくまで代理店本部と顧客をつなぐことだからです。

売買契約は、売主である代理店本部と顧客の間で行われます。代理店はそのあっせんや仲介を行い、契約が成立した場合には、代理店本部から販売手数料(コミッション)を報酬として得ることができます。

・販売店

一方の販売店は、商品を代理店本部から買い取り、顧客に転売することで収入を得る形態です。つまり、代理店本部からの買取額と顧客への販売額の差が利益となっています。販売店の例としては、書店や酒屋などがあります。

代理店と販売店は、商品の買取の有無という点において大きく異なります。ただし、代理店と代理店本部が結ぶ契約には多様な形態がありますので、代理店と販売店、どちらに該当するのかはっきりしないことも多いようです。

■代理店の種類

代理店にはその他に、取次店、特約店、紹介店、総代理店などの種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

・取次店

取次店とは、売主である代理店本部に代わってサービスの取次を行う店舗のことです。取次店の業務はサービスを顧客に取り次ぐところまでで、サービスの提供やフォローは売主が行います。取次店は、取次をすることで、売主から取次手数料を得ることができます。

取次店の例としては、宅急便の発送受付、クリーニング店の引き渡しや受け取りなどが挙げられます。顧客のフォローは売主が対応するため、負担が少なくて済む点が取次店のメリットです。

・特約店

特約店とは、代理店本部であるメーカーと特定の条件の特約契約を結び、販売活動を任された店舗のことです。特約店は、メーカーのさまざまな支援が受けられるメリットがありますが、競合他社の商品は置くことができないなどの制約を受けます。

特約店の例としては、電機メーカーの看板を掲げた電気店、ガソリンスタンドなどがあります。

・紹介店

紹介店とは、代理店本部へ見込み客を紹介し、その顧客の契約が成立した場合に手数料が得られる仕組みです。

商談は代理店本部が行うため業務負荷が軽く、副業としても注目されています。ただし、代理店と比べて報酬が少ない傾向にあります。

・総代理店

総代理店とは、複数の代理店の統括を行う代理店です。総代理店は、代理店の選定や管理が主な業務となり、メーカの中の代理店営業部のような役割を担います。

■代理店とフランチャイズはどこが違う?

代理店と似たビジネス形態として、「フランチャイズ」があります。代理店とフランチャイズは、どこが違うのでしょうか。

・競合他社の商品やサービスを扱える

フランチャイズでは、通常、競合他社の商品やサービスを扱うことは認められていません。複数のフランチャイズに加盟することはできますが、同業種で複数加盟することは禁止されているケースがほとんどです。

一方、代理店の場合、特約店等を除いては競合他社の商品、サービスであっても、複数取り扱うことが可能です。

たとえば、最近増えている来店型の保険ショップでは、異なる複数の保険会社の商品を取り扱っています。複数の保険会社の商品を扱うことで、顧客に合わせた提案が可能になり、顧客からの信頼を得ることにも役立ちます。

・代理店のルールのもと営業ができる

フランチャイズビジネスにおいて、加盟店はフランチャイズ本部と契約を結ぶことで、本部のブランド名や看板の使用、また、本部が培った経営ノウハウを活用する権利が得られます。

ノウハウが与えられることで、比較的経営が安定する点がメリットですが、本部の定めた通りに商品やサービスを提供する必要があり、運営方法に制限があります。

それに対し、代理店では運営方法などを本部に決められることはなく、基本的に代理店のルールのもと営業ができます。その代わり、代理店はフランチャイズのように本部のサポートを受けられる体制にないことが多いです。

・ロイヤリティがない

フランチャイズでは、加盟店は本部に売上の一部をロイヤリティとして支払います。ロイヤリティの設定は加盟するフランチャイズによって異なりますが、「売上の数%」のように定められている場合、売上が上がるほど支払うロイヤリティも多くなり、加盟店の負担が大きくなることが考えられます。

しかし、代理店にはそのようなロイヤリティはありません。ロイヤリティという支出を気にせず、売り上げた分だけ収入にできる点は、フランチャイズとの大きな違いです。

■代理店ビジネスのメリット、デメリット

最後に、代理店ビジネスのメリット、デメリットを解説しましょう。

<メリット>

・すぐに事業を始めることが可能

代理店ビジネスには、代理店本部と契約すれば、すぐに商品やサービスを扱い、事業が始められるメリットがあります。

一般的に、自分でゼロから商品、サービスを開発するには多大なコストや時間がかかるもの。代理店ビジネスならそうしたプロセスを省いてすぐに事業をスタートできるため、速やかに売り上げの獲得が目指せるでしょう。

・大手の看板を借りて営業できる

代理店という形態をとれば、大手メーカーの看板を借り、その商品やサービスを取り扱えます。

すでに広く認知されている商品やサービスを扱いますので、自社の名前が知られていなくても顧客に安心して利用してもらうことができます。自分でゼロから開業する場合と比べ、販売や営業活動は各段にスムーズに行えるでしょう。

・リスクを抑えることができる

一般的に、代理店ビジネスは、フランチャイズよりも初期費用を抑えられる傾向にあります。また、自社で商品やサービスを開発することもないため、たとえ思うように売上が出なくても、資金が回収できない事態には陥りにくくなるでしょう。

大きな損失を回避し、リスクを抑えて開業できるのも代理店ビジネスの大きなメリットです。

<デメリット>

・サポート体制が不十分

代理店本部となる大手メーカー、大手サービス会社の中には、サポート体制が不十分なところもあるため、その点はデメリットとなるでしょう。また、代理店が現場で感じた課題や改善点があっても聞く耳を持ってくれない代理店本部の場合は、良好な関係を築くことが難しくなります。

もちろん、サポート体制の整っている代理店本部もありますが、新規の代理店募集を行っていないことが多く、参入のチャンスには恵まれない場合が多いようです。

・ノウハウを自社で確立する必要がある

先述の通り、代理店にはフランチャイズのような運営方法の制限はありません。しかし、フランチャイズのように、本部の確立した営業ノウハウや販売手法などを共有するケースは少なく、自分たちでその仕組みを構築していく必要があります。

ただし、代理店独自に確固たるノウハウを持つことができれば、それは大きな強みと変わるでしょう。

・必ずしも大きな売上になるとは限らない

広く認知された商品やサービスを扱ったからといって、必ずしも大きな売上につながるとは限りません。いくら商材に魅力があっても、それを売るには営業力や販売力がカギとなるからです。

一方で、代理店ビジネスでは、「そもそも売りやすい商品やサービスを選べているか」という目利きも問われています。営業や販売の能力、商材を見極めるセンスの両方が、代理店ビジネスには欠かせないのです。

・在庫を抱える恐れがある

代理店の中でも、商品の買取が必要な形態を選んだ場合、商品によっては予定通り販売できず、在庫を抱える恐れがあるでしょう。また、代理店本部から購入のノルマが課せられていると、その分は固定費となる点にも注意が必要です。

■小さなリスクで始められる代理店ビジネス

今回は、代理店について詳しく解説しました。代理店のメリットはいろいろありますが、一番は大きなリスクを背負わず開業できる点でしょう。特に、フランチャイズのようなロイヤリティがありませんので、こうした支出を気にせず営業ができます。

代理店ビジネスが気になったら、代理店の募集情報を確認したり、説明会に足を運んだりしてみましょう。