渡辺明名人への挑戦権を争う第81期順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、8月4日(木)にA級2回戦の豊島将之九段―斎藤慎太郎八段戦が行われました。結果は151手で豊島九段が勝利し、今期順位戦で初白星を挙げました。
■軽快な仕掛けで豊島九段が優位に
本局は豊島九段の先手で相掛かりとなりました。豊島九段は自陣の右桂を1七~2五と素早く活用して端攻めに出たのが狙いの構想。以下は、飛角桂香歩の飛び道具を巧みに操って端を突破した先手が優位に立ちました。夕食休憩の局面では、後手玉だけが危険地帯に露出しているのに対して先手玉は安泰です。
しかしここからの斎藤八段の粘りが頑強でした。竜を自陣に引き付け、自陣角も放ち徹底抗戦を図ります。以下はお互いが大駒を取りつ取られつと局面が目まぐるしく動きました。気がつけば空中の後手玉はすぐには捕まらず、先手玉にも危機が迫ってきており、混戦ムードが漂ってきました。
ここで豊島九段が放った97手目の▲8八金寄が玉の退路を開く好手でした。受け一方の指しづらい手ですが、これで後手からの追撃が難しくなっています。
■午前1時過ぎの終局
攻めが細くなり、先手玉を捕まえるのが難しいと判断した斎藤八段は、入玉に望みを託す形になります。しかし入玉形の将棋は駒数がものを言います。こちらは大駒を3枚持っている先手がやはり有利です。斎藤八段は自玉の入玉をほぼ確定させたものの、やはり戦力が足りません。
間もなく豊島九段が全ての大駒を手にし、自玉の入玉も確定となった局面で、刀折れ矢尽きた斎藤八段が投了しました。終局したのは日が変わった午前1時4分。今期のA級では最も遅い終局時間です。手数の151手も最長です。
両者ともこれで1勝1敗になりました。今期のA級で2連勝スタートは広瀬章人八段と稲葉陽八段の2名です。8月10日(水)に2回戦を戦う藤井聡太竜王が3人目の連勝者となるかどうか。まだまだリーグは始まったばかりですが、早くも混戦ムードが漂うA級順位戦です。
相崎修司(将棋情報局)