永瀬拓矢王座への挑戦権を懸けて争われる、第70期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)の挑戦者決定戦、豊島将之九段―大橋貴洸六段戦が7月25日(月)に関西将棋会館で行われました。結果は123手で豊島九段が勝利し、永瀬王座への挑戦権を獲得しました。

■積極的な大橋六段の序盤作戦

本局は豊島九段の先手番から力戦調の相居飛車となります。序盤は後手の大橋六段が守りの金を攻め駒として活用する積極的な構想をみせました。結果的にこの金は先手の角と交換になり、まずは角金交換の実利を後手が得ました。

駒得となった後手ですが、守りの金を一枚欠いた後手陣はあちこちにスキが見えていかにも不安定な形です。大橋六段がこの陣形をうまくまとめられるか、あるいはこのスキを豊島九段がつけるかが焦点になりました。

豊島九段は中段の飛車を左右に細かく転回して揺さぶりをかけます。対して後手が58手目に△4二歩と低く受けた手が疑問手。一見手堅い受けのようですが、結果的には後手玉の逃げ道を塞ぐ歩となってしまいました。

豊島九段はこのスキを見逃さず、▲3五歩~▲7五歩~▲8二金と後手の飛車を押さえ込みにかかりました。最後の金打ちは後手の飛車を押さえ込みつつ桂香取りを見せており、後手が飛車を逃がしている間に桂を取り切ることで、角金交換の駒損から二枚替えの駒得となりました。

豊島九段は持ち駒とした桂馬と先に打った金を活用して後手玉を挟み撃ちにしていきます。大橋六段は持ち駒の角を受けに使わされる苦しい展開になりました。徐々にリードを拡大した豊島九段が次第に後手玉を追い詰めていきます。大橋六段も苦しいながら反撃に出ますが、後手玉と異なり、先手玉へは挟み撃ちの体勢を作ることが出来ません。

■豊島九段が永瀬王座への挑戦権を獲得

最後は挟み撃ちの原動力ともなった桂を成り捨てる形で豊島九段が収束に入り、永瀬王座への挑戦権を獲得しました。豊島九段の王座挑戦は第62期以来、8年ぶり2度目となります。

永瀬―豊島のタイトル戦といえば持将棋、千日手が相次ぎ、七番勝負が第9局までもつれ込んだ2年前の叡王戦が記憶に新しいところです。再びその大熱戦が見られるでしょうか。注目の五番勝負は8月31日(水)に東京都港区の「グランドプリンスホテル新高輪」で始まります。

相崎修司(将棋情報局)

若手の意欲的な構想を打ち破って王座挑戦を決めた豊島九段(右)(提供:日本将棋連盟)
若手の意欲的な構想を打ち破って王座挑戦を決めた豊島九段(右)(提供:日本将棋連盟)