「経験」と「体験」。なんとなく意味が違うことはわかるけれど、どう違うのか説明してと言われるとなかなか難しいと感じる人も多いかもしれません。
本記事では、「経験」と「体験」のそれぞれの意味や使い分け方について、詳しく解説します。
「経験」と「体験」の意味の違い
「経験」と「体験」にはどのような意味の違いがあるのでしょうか。ここでは、似ているようで違う二つの言葉の意味についてご紹介します。
「経験」と「体験」の最大の差は「身に付いたか」
「経験」と「体験」の差は一言で表すと、「身に付いたか、否か」です。
「経験」は実際に見たり行ったりするなどの行動だけでなく、そこから得た学びや知識のことまで表します。一方、「体験」は自分が直接行動したことそのものを表す言葉です。
また、「経験」はどちらかというと客観的で、「体験」はより主観的なニュアンスという点も挙げられます。
- 経験は行動から得られる結果までを含み、体験は行動それ自体のこと
- 経験は体験よりは客観的、体験はより主観的な印象
「経験」の意味
ここからはもう少し詳しく、それぞれの言葉の意味を見ていきましょう。まずは「経験」です。
「経験」の意味は、「実際に見聞きしたり、行ったりすることや、それによって得ることのできた知識や技能など」です。つまり自分の行動内容だけでなく、その行動によって学んだこと、得られた知識や技術までを広く含むのが「経験」です。
また、「経験」は「体験」と比較すると客観的で、一般論的な印象がある言葉とされています。
「経験」の由来
「経」という字には、「経路」などの言葉があるように、「筋道をたどる」という意味があります。「験」という字には、「しるし・証」という意味があります。
つまり、「経験」という2つの漢字が表すのは、「その筋道を通ったことの証」という意味なのです。
「体験」の意味
では、「体験」とはどのような意味を持っているのでしょうか。答えは、「実際に自分が身をもって見聞きしたり行動したりしたこと」という意味です。
「体験」の由来
「体験」には「体」という字が使用されています。これはつまり、「体」で感じたことや実際に行ったことが、経験以上に重視されるということです。先ほどの「験」の意味と合わせると、「体で感じたことの証」となります。経験以上に主観的で、いきいきと鮮明なものであるともいえるでしょう。
「体験」は「経験」以上にその行為自体を重視する意味合いがあります。
「経験」「体験」の使い分け
「経験」と「体験」の基本的な意味はわかりましたが、それぞれ具体例にはどう使い分ければいいのでしょうか。例文とともにご紹介します。
「経験」の使い方
「経験」は、「実際に身に付けたこと」を表現したいときに使用します。下記が具体例です。
- 経験を積む
例えば「事務員として経験を積む」ことが表しているのは、ただ事務員として働いているだけでなく、「事務員としてのスキルを積んでいる」ことです。
一方で「体験を積む」ことはできません。体験は行動するごとにリセットされてしまうからです。「積み上げる」「ずっと続いていく」のは「経験」ということになります。
- 経験を生かす
例えば「留学経験を生かし、海外企業とやりとりをしている」と言ったときは、留学で得た外国語能力やコミュニケーション力、文化への理解度など、やはり「スキルを生かす」ことに重点を置いています。
「体験を生かす」と言うこともできなくはないですが、やや不自然な印象は残ります。これもやはり「体験」自体は行動に重点を置いた言葉だからでしょう。
「体験」の使い方
一方「体験」は、「行動それ自体」を表現したいときに使用します。下記に具体例を紹介します。
- 体験入学
これは、「入学したらどのような感じなのだろう、どのような思いを抱くのだろう」など、入学それ自体を「してみる」ことに重点が置かれた表現です。つまり、入学という行動をしてみたときの体の感覚や心の動きに重きを置いている、ということです。
逆に、「経験入学」とは言いませんね。「体験入学」において重要なのはスキルを得ることではない、ということがわかります。
- 成功体験
「この成功体験によって、あなたはさらに成長するだろう」などと使うときの「成功体験」は、一見スキルを重視しているようにも見えます。「成功」という経験それ自体は学びも多く、得るものがたくさんあるからです。
しかし、「成功体験」と表現する場合には、成功したときの感覚や感情を表すことが多いです。つまり、「成功したことによってうれしい気持ちになった」ことそれ自体を重視した表現であるため、「体験」を使うのです。
哲学における「経験論」
哲学にも、「経験」の概念を重視した「経験論」という考え方があります。
「経験論」とは、認識や知識の根本は「経験」だとする哲学的立場です。大陸合理論などとよく対比される、個別具体的な経験を重視するという理論です。
こちらも豆知識として覚えておくといいかもしれませんね。
「経験」「体験」の英語表現
英語で表現する場合は、「経験」も「体験」も「experience」です。
「experience」は、名詞としても使えますし、「経験する」「体験する」という意味で、動詞としても使用できます。
また、「〜したことがある」という、経験を意味する表現としては、「Have+動詞の過去分詞形」を用いた現在完了形も考えられるでしょう。
「経験」と「体験」を正しく使い分けよう
「経験」と「体験」の意味の違いや使い分けについてご紹介しました。理解しているようでも、いざ細かい違いを説明するとなると、難しいものですよね。この文章を読んだことが皆さんの「経験」として少しでも役立てば、とてもうれしいです。