早くも梅雨が明け、夏日が続いている。もはやエアコンなしでは身の危険さえ感じる暑さだが、エアコンとは上手に付き合えているだろうか?

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巷では、「エアコンは付けっぱなしのほうが安上がり」「部屋の設定温度は28℃がいいらしい」などといった説がまことしやかに囁かれているが、その根拠まで理解している人はそれほど多くないと思われる。

そこで今回は、三菱電機でルームエアコンの販促担当をしている、静岡製作所の岩崎慎司さんにお話をうかがい、エアコンにまつわるウワサの数々を検証した!

[1]「クーラーはつけっぱなしの方がオトク」は本当?

岩崎さん:たしかに、エアコンは電源をオンしてからの立ち上がりにかなり電力をつかうので、頻繁に電源を入れたり切ったりする事は省エネ性の悪化につながる可能性があります。使用環境や使い方次第でもあるので一概には言えませんが、「つけっぱなしのほうがオトク」という場合もあります。

エアコンは、外気温と室内温度が乖離しているほど消費電力を使うようになっています。だから、運転し始めが一番電力を消費するんです。部屋の気密性などにもよりますが、弊社の試験室で試験した結果ですと 、1時間弱の外出であれば、エアコンはつけっぱなしのほうがオトクですし、1~2時間以上外出するのであれば、エアコンは切ったほうがよいかもしれません。

[2]「冷房より自動の方が効率的」は本当?

岩崎さん:各社制御方法が異なるので一概には言えませんが、弊社の霧ヶ峰の場合ですとエアコンの赤外線センサーで室内の温度変化を確認し、 室内を冷やし過ぎないように自動で調整し快適性や省エネ性をうまく両立して運転をしてくれます。そういう意味で、自動モードはやはり効率的だと言えます。

ただし、「帰宅して部屋が暑いのですぐに冷房で冷やしたい」といった状況であれば、冷房モードで風量を最大にするなど、手動で設定したほうがいい場合もあります。部屋が冷えたら自動モードに切り替えるなどの使い分けもおすすめです。

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[3]「冷房より除湿の方が快適な場合もある」は本当?

岩崎さん:除湿のやり方は色々あるのですが 、わかりやすい例として弱冷房方式でお話すると、冷房と除湿の構造は基本的に同じで、熱交換器を冷やすことで室内の湿気を除いているんです。

冷たい飲み物の入ったコップを思い浮かべてみてください。グラスの周りには水滴がつきますよね? あれは室内の湿度が水滴に変わっているのですが、実は除湿もこれと同じ原理で、熱交換器を冷やすことで湿度を下げているんです。「どちらが快適か」は部屋の状態によるのですが、雨で湿度が高い場合などは除湿にしたほうが快適だと言えます。

[4]「夏の設定温度は28℃が最適」は本当?

岩崎さん:おそらく環境省が推奨するクールビズの中で言われている「室温28℃」目安と関連してのお話かと思います。室温28℃が推奨されているのは、消費電力量抑制と快適性のバランスを両立するための目安としてです。

設定温度28℃が最適という事ではなく、省エネの観点からもエアコンだけで室内の温度調整をするのではなく、28℃で快適に過ごせるよう衣服の調整なども合わせて実施する際の目安にしていただければと思います。

人によって温度の感じ方も様々ですし、猛暑の中、熱中症などのリスクもありますので、無理のない範囲で工夫して過ごしていただけるといいなと思っております。

[5]「室外機の位置(日当たり加減)によってエアコンの効きも変わる」は本当?

岩崎さん:本当です。エアコンというのは、室外機のコンプレッサーで熱交換をしているので、夏場は室外機の周辺温度が低いほど熱交換はしやすくなり、より冷房の利きが効率的になります。

そのための対策として、「室外機に日除けをつける」という方法がありますが、ただ室外機を囲ってしまえばいいというわけでもありません。室外機は外に熱を放出しているので、周りを囲ってしまうと熱が室外機の周辺に溜まってしまい、逆効果。なるべく室外機の周りには物を置かず、日除けも室外機から離して取り付けましょう。

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[6]「自動掃除機能付きのエアコンは掃除しなくてもいい」は本当?

岩崎さん:これは、どこを掃除しているかによって異なります。「自動掃除機能」は、主に吸込口のフィルターの掃除を指します。吸込口は室内の空気を最初に吸い込む箇所なので、汚れやすいのは間違いありませんが、汚れは吸込口以外にも付着します。

例えば、エアコンの臭いが気になったことはありませんか? エアコンは内部にとても湿気が溜まるんですよ。これがカビの原因になってしまうので、まったく掃除しなくていいということはありません。フラップは自分でも拭けますが、内部構造は手が届かないので、臭いが気になった場合などは専門業者に掃除を依頼してくださいね。

また、内部構造に防カビ加工などを施している機種もあるので、そういったものを選ぶのもいいと思います。

[7]「エアコンの寿命は10年」は本当?

岩崎さん:エアコンの標準的な使用期間は10年が目安となっています。もちろんそれ以上長く使用いただく可能性も想定した設計をしておりますので、必ずしも10年を超えたら即座に買い替えを推奨するというものではありません。ただし修理のための部品保有が10年となっておりますので10年以上使用したエアコンは、万が一故障した場合修理の対応が難しく、買い替えが必要になる可能性があります 。

[8]「エアコンは設置する部屋の畳数より大きめを選んだほうがいい」は本当?

岩崎さん:まず気を付けていただきたいのは、エアコンは能力が過大になっても、過小になってもよくないという事です。能力が過少になってしまえば、冷暖房の効果が十分に発揮されないことに加え、エアコンがフルパワーで運転する時間が増えて消費電力の増加を招く可能性があります。

カタログなどに記載されている畳数は、一戸建てから集合住宅までの適用平米の目安を示していますが、エアコンを使用いただくお部屋の環境や住宅性能で必要なエアコンのパワーは異なります。例えば直射日光が入りやすい部屋は冷房が効きにくいことが想定されるので、畳数目安よりも大きめの方が良いという事はあると思います。

ただしあまり能力が過大になりすぎると、最適な運転ポイントが異なるので、機器本来の持つ省エネ性能を十分に発揮できない恐れもあるので、販売店などでご相談いただいて適切な容量帯のエアコンを選定ください。

[9]「寝室は安いエアコンでもいい」は本当?

岩崎さん:たしかに昔のエアコンは、つけっぱなしにして寝ると寒くて目が覚め、電源を切ると暑くてまた目が覚めるという繰り返しだったので、「それなら安いのでいい」と考えられていました。しかし、現在は各メーカーとも“快適な睡眠”を重視していて、中級機以上には大体「見守り快眠機能」などがついています。

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これは部屋をゆっくりと冷やしたり、暑くなったら自動で稼動したりする機能ですが、この機能がないと、昔のエアコンのような問題が発生してしまいます。人生の3分の1は睡眠時間だとも言われていますから、むしろ寝室こそ機能面に着目し、優れた機種を選んだほうがよいかと思います。


うーん、なるほど。目からウロコのお話の数々。この夏は例年以上にエアコンのお世話になりそうだし、今まさに購入や買い替えを検討している人も、ぜひ岩崎さんのお話を参考にしてみよう!