「万学の祖」と呼ばれるアリストテレスは、哲学者として有名なだけでなく、現代の学問・思想の基礎を築いた人物です。今の時代でもほとんどの人が、アリストテレスという人物について見聞きしたことがあるのではないでしょうか?

本記事では、アリストテレスの残した名言や、人物像、主な思想を紹介します。アリストテレスが提唱したことは、現代の私たちにとっても有益で、納得させられるような考え方・言葉ばかりです。きっとビジネスの場などでも生かせるヒントがあるはずです。

  • アリストテレスとは?

    現代の学問・思想の基礎を築いたアリストテレス

アリストテレスの名言12選を英語とともに紹介

アリストテレス(紀元前384年~紀元前322年)は、古代ギリシャの哲学者・科学者です。

プラトンの弟子であり、晩年はアテネにリュケイオンと呼ばれる学校を創設。自らの哲学体系を確立し多くの著作を残しました。

アリストテレスは自らの学問を提唱する中で、多くの名言を残しました。どの名言も現代でも役立つ名言ばかりです。

ここでは、人生を通して学び続けたアリストテレスの名言を翻訳と英語の両方でご紹介します。

Education is the best provision for old age.

教育は老年のための最高の備えである。

Pleasure in the job puts perfection in the work.

働く喜びが仕事を完璧なものにする。

The roots of education are bitter, but the fruit is sweet.

教育の根は苦いが、果実は甘い。

He who is to be a good ruler must have first been ruled.

人に従うことを知らないものは、よき指導者になりえない。

Man is a goal seeking animal. His life only has meaning if he is reaching out and striving for his goals.

人間は、目標を追い求める動物である。目標へ到達しようと努力することによってのみ、人生が意味あるものとなる。

A friend to all is a friend to none.

多数の友を持つ者は、一人の友も持たない。

We are what we repeatedly do. Excellence, then, is not an act, but a habit.

人は物事を繰り返す存在である。したがって、優秀さとは行動によって得られる物ではない。習慣になっていなければならないのだ。

Love is composed of a single soul inhabiting two bodies.

愛とは、二つの肉体に宿る魂で形作られる。

The greatest virtues are those which are most useful to other persons.

最大の美徳は、他人の役に立てることだ。

Happiness depends upon ourselves.

幸せかどうかは自分次第である。

Those that know, do. Those that understand, teach.

知る者は行い、理解する者は教える。

Happiness depends upon ourselves.

幸せかどうかは、自分次第である。

  • アリストテレスの思想は現在でも大いに役立つ!

    人生を通して学び続けたアリストテレスの名言を紹介しました

アリストテレスとは

アリストテレスとはどんな人物なのでしょうか? ここではアリストテレスの人物像についてくわしく解説します。

万学の祖と呼ばれる古代ギリシアの哲学者

アリストテレスは紀元前382年に現在のギリシャで生まれます。アリストテレスは哲学者として名が知られるほか、自然学、政治学、文学、倫理学などあらゆる学問に精通していたため「学問の祖」と呼ばれています。

彼の説得力のある考え方は、その後1000年以上にわたってヨーロッパで支持し続けられていました。

プラトンの弟子

アリストテレスは哲学者プラトンの弟子としても知られています。アリストテレスは17歳のころにプラトンが創設したアカデメイア(哲学を学ぶ学校)に入学し、プラトンが死去するまでの20年間在籍します。

そしてその後、プラトンの考えをまとめた著作を残したり、逆にプラトンの考え方に反対しオリジナルの理論をまとめたりと、さまざまな業績を残しました。

アレクサンドロス大王の家庭教師

アリストテレスはのちのアレクサンドロス大王の家庭教師を務めており、哲学や弁論術、科学や医学に至るまで指導しました。紀元前336年にアレクサンドロスが王になると、アリストテレスはリュケイオンという学園を設立します。

  • アリストテレスの思想を分かりやすく解説

    様々な功績を残したアリストテレスは、今なお語り継がれている哲学者

アリストテレスの思想とは

「万学の祖」と呼ばれるアリストテレスは、現代でも使える重要な考え方・思想をこの世に残しています。ここでは、今の時代を生きる私たちも知っておきたい学問・思想についてわかりやすく説明していきます。

形而上学・存在論

アリストテレスで最も有名と言ってよいのが「形而上(けいじじょう)学」です。これはプラトンで有名なイデア論(あらゆるものの「本質」はこの世の中には存在せず、現実とは別の世界である「イデア界」に存在しているという思想)を一部否定し、独自の概念を提唱した学問として知られています。

「形而上」とは人間の感覚や経験を超えた物事という意味です。形而上学では、世の中にあるさまざまな事物を『存在するもの』としてとらえ、「そもそも存在するとは何か?」を考えました。

そしてアリストテレスは、「事物の本質は事物そのものの中に存在する」と定義付け、世の中に存在する事物のすべては4つの原因から成るとしました。

4つの原因とは、

  • 質料因:材質
  • 形相因:形
  • 動力因:事物を作り出すもの
  • 目的因:事物の目的

です。

そしてアリストテレスは、とある2つの物を比べたときにこの4つの原因が同じであれば、2つの物の本質は同じだと言えると考えました。この4つの原因の考えは、物事の本質を考えるうえで重要な考え方です。

倫理学・情念

アリストテレスの倫理学では、人間のすべての営みには目的があり、最高善(=幸福に生きること)が究極の目的であるとしています。そしてこの最高善の状態になるためには「中庸の徳」が重要であるとしました。

「中庸の徳」とは、どちらにも転ばないということです。 例えば、見事な文学作品があったとして、それにたくさんの要素が付け加えられていたり、逆に要素が不足していたりしたら、いい作品とは言えません。徳においても、多すぎる・少なすぎるといったことは批判され、中庸であることが評価されます。

このように「中」であることは自分の幸福にとっても非常に重要な考え方で、超過と不足を避けて中庸を目指すことで勇敢・節制を手に入れることができるとしています。何かと超過してしまったり、逆に怠惰な気持ちで不足になったりしてしまいますが、その中でもバランスよく中庸であることが一番の幸福・最高善につながる行為だとしています。

政治学

アリストテレスの政治学は、倫理学を基にしています。政治の究極の目的は人間の善であり、そのために国家体制自体も中庸でなければならないとしています。

また国家だけでなく、民衆もそれぞれの立場に基づいた中庸を持つことで国家はうまく革命と堕落を繰り返し、最高善に近づくとしています。国家が国民の善を目的とすることは現代にも通用する考え方ですが、貴族の中庸を支配、奴隷の中庸を服従と設定していたりと、当時の身分制度を肯定しているという点では、現代の考えにはなかなか当てはめにくい考え方だと言えます。

詩学

アリストテレスの詩学では、芸術の捉え方について主張しています。アリストテレスは芸術・文学の基本を「自然や世界の模倣をするもの」と考えました。

人間は生来的に再現を好む傾向があります。例えば、実際の消防車よりもそれを精巧に再現したプラモデルに感動したり、目の前にいる美人ではなくそれが模倣された絵画に惹かれたりと、みなさんもこういった経験があるのではないでしょうか? アリストテレスはこの心理に気づき、再現や模倣は人にとっての学びの快楽だとしました。

自然学

「自然学」は、「形而上学」の視点を変えたもので、形而下(けいじか)学とも言われています。形而上学の方では「そもそも存在するとは何か? 」という視点で考えましたが、形而下学では人間の感覚や経験に収まる範囲内で物事を考察します。物質や植物、動物などの形のある事物についての学と言えるでしょう。

例えば、犬にしっぽがあるという事実に対して、「このしっぽはどういった原因で生まれて、しっぽがあることのメリットは何か? 」という視点で考察します。この考え方はどんな物事を分析するときにも応用でき、現代でもこの視点で考える場面は多くあります。アリストテレスはこの自然学を基にして、その後天文学や生物学などさまざまな学問を考察し、仮説を立てていきました。

  • アリストテレスの名言(英語と翻訳)

    学問の基礎を作った「万学の祖」アリストテレス

アリストテレスの主な著書

アリストテレスの主な著作を紹介します。

『ニコマス倫理学』

『ニコマス倫理学』は、全10巻で構成されたアリストテレスの主著のひとつです。アリストテレスはこの著書において、人間の知と理性的な行動はすべて「善」であるとし、「幸福」は「徳にかなった魂の活動態」であると定義しました。

ちなみに「ニコマス」とは、息子の名をとったものとされています。

『オルガノン』

『オルガノン』はアリストテレスの論理学書の総称です。オルガノンの本来の意味は「道具」であり、論理学が学問研究における道具という意味合いから、このように呼ばれるようになったとされています。

アリストテレスの『オルガノン』によって、存在論にもとづく伝統的論理学の基礎が形成されたました。

  • アリストテレスの思想は現在でも大いに役立つ!

    アリストテレスの主な著書を紹介しました

アリストテレスの名言や思想は現在でも大いに役立つ!

今回はアリストテレスの唱えた学問と残した名言について紹介しました。一生涯をかけて学問に励み、日々学び続けたアリストテレスから私たちが学べることは数多くあります。ぜひ今回紹介した名言や考え方・思考の仕方を、仕事や生活場面で取り入れてみてください。