バイク王&カンパニーが運営する総合バイク情報サイト「Bike Life Lab」は、コラム"バイク未来総研"にて「過去10年間のオークション相場から見る中古バイク価格」を考察している。2020年から続く新型コロナウイルスの蔓延にも関わらず、国内の新車出荷台数は上昇傾向にあるバイク業界。中古バイクの現状と今後は?
2020年から続く新型コロナウイルスの蔓延、それに伴うバイク部品や半導体不足、物流の混乱、生産遅延などが断続的に発生しているにも関わらず、国内の新車出荷台数は上昇の傾向を見せるバイク業界。一方、中古バイクの未来はどうなっていくのだろうか。
バイク王&カンパニーでは中古バイクにまつわるデータや社会情勢を読み解き、今後の中古バイク価格動向について考察し、全3回に分けて発信する。今回はその第1回目となる。
国内の新車の状況と中古オークション状況は?
まずは新車の状況。2021年は新型コロナウイルス蔓延の長期化に伴い、2020年同様にさまざまな制約があったにも関わらず、2021年の国内におけるバイクの新車出荷台数は全排気量で前年越えを果たした。
全体では37万8,720台(出所:日本自動車工業会)と前年比15.3%のプラスとなり、減少傾向にあったバイクの出荷台数が2015年の水準にまで回復している。
一方、中古車のオークション相場は2020年7月から上昇しており、2021年に入ってさらに上昇を続けている。
2020年の平均価格が18万1,187円であったのに対し、2021年の平均価格は23万7,352円と5万6,165円上昇した。
2021年は新車出荷台数がコロナ前の水準まで回復したにも関わらず、依然として中古価格は上昇を続けた。「新車の供給が追い付けば中古価格が安定する」との見方もあったが、中古価格は依然、上昇傾向だ。
■要因(1) コロナ禍によりライダーの意識に変化が!?
ライダーの意識調査(出所:2021年度二輪車市場動向調査 報告書)によれば、コロナ禍によってバイクの需要が増加した要因のひとつは、「三密を避けるのに有効な移動手段」との認識が広がったことだという。軽二輪・小型二輪の購入者は、新しい生活様式への変化に伴い、ライフスタイルを見直した結果として二輪車を選んでいる。自粛の風潮の中、1人で楽しめてレジャーとしての色合いが強いソロツーリングのニーズも高まった。こうした意識の変化がバイク需要の増加につながっているようだ。
コロナ禍という社会背景において、時勢に合っているバイクという趣味があらためて見直され、需要が高まりを見せたと考えることができる。
■要因(2) バイクのような1人で楽しめる趣味に追い風!?
1人で楽しめる趣味ということでは、2019年から自宅で過ごすことが多くなり、自宅での趣味を模索する動き、いわゆる「おうち時間」の充実を図る動きが出てきた。
芸能人・著名人や従来のインフルエンサーは、1人で情報発信可能なYouTubeなどを介して情報発信量を増やし、視聴者数も増加した。
google社の調査によると、2020年9月のYouTube月間利用者数(18〜64歳)は6,500万人を超え、「新型コロナウイルスの流行以降にYouTubeの利用が増えた」と回答した人は74%に達し、YouTubeにアップロードされた動画の総時間数は前年同月比で80%増加。また、YouTubeにアップされた動画の総時間数は前年同月比で80%増加している。
このことから、視聴者数だけでなく発信側の人数や投稿頻度も増加していると考えられ、バイクというジャンルにおいても、YouTubeなどで親和性の高い「一人旅」や「アウトドア」といったテーマの動画や、趣味性が高い根強い人気の旧車を扱うチャンネルなどの視聴時間が伸びたと思われる。
こうした動画視聴の機会が増えたことで、ライダーはバイクに関して知識を深め、バイクの持つ楽しさや多様性にあらためて触れることになる。
そして、好奇心を刺激されたライダーは、結果としてバイクに乗り始め、バイク市場全体の需要増につながったという見方もできるのではないだろうか。
■要因(3) 良い状態の中古車は年々減少する!?
需要の増加に伴って、中古車の供給数の増加が伴えば中古価格の安定につながるが、中古車は年数の経過とともに経年劣化が進むため、良い状態を維持できるバイクは年々減少していく。
そのため、整備が必要となるバイクが増え、とりわけ高度な整備技術を要し、また部品の確保が困難な絶版車のバイクは最終的な小売価格が上昇する傾向がある。
こうして中古車は全体として希少性が高まり、整備コストもかかってくるため価格が上昇すると考えることができる。
直近のデータでは、2022年の2月から4月は価格がいったん落ち着いたものの、5月には再度2021年ピークの27万円台まで回復。
2月〜4月といえば、ウクライナ情勢により、ロシア向けの輸出規制などで海外輸出バイヤーの買い控えが発生し、一時的にオークション相場が下落したが、最近の円安によって海外輸出向けのバイヤーによる仕入れがあらためて活性化しているようだ。
また国内においても、これからのバイクシーズンに向けて需要が高まる時期になっており、バイクの中古車市場における活況はしばらく継続するのではないか。
【中古バイクオークション相場から見る未来予測】
・コロナ禍により密を避ける移動手段としてバイクが注目され、需要の高まりを見せている
・アウトドアと親和性が高く、一人でも楽しめるバイクという趣味がコロナ禍において注目され需要の高まりを見せている
・希少性の高い中古車は今後も一定の需要が見込まれる
・中古車は経年劣化により供給数は減少するため中古価格は緩やかに上昇すると見込まれる
・劣化したバイクは整備の手が入るため、価格上昇の一因となる
なお今回の結果について、バイク未来総研所長の宮城光氏は、以下の指摘をしている。
●バイク未来総研所長「宮城光のココがポイント」
この数年のバイクの価格上昇は、改めて前段でのデータ検証で明確になりましたね。
元々、近年の国内バイクのマーケットでは、グローバルモデル展開として250ccクラスを中心とした若い世代へのタッチポイントを増やしながら、確実に新規ユーザーへの誘い込みを行ってきました。
そこへ、今回のコロナ禍で若い世代にも時間を有効利用できるチャンスが増え、より多くバイクと対面する時間が増えた事もバイクブームの大きなトリガーとなったのではないかと感じます。
距離を走り、一人でも楽しめる性質を持つバイクは、マーケットに存在する個性的な車両(中古市場)へ
も、選択肢が広がるのは当然の流れとも言えます。
一方で世の動きもテレワーク、オンライン会議などネットを中心とした動きへとシフトチェンジしたのは私自身もそうでした。
そしてネット情報に刺激され、郊外でのリアルなリフレッシュを求めるという世相が複雑に重なった結果なのではないでしょうか。
なお、次回の"バイク未来総研"ではバイク王が持つ販売データから中古バイク価格の未来をさらに深堀して読み解いていくという。