住民税は、毎年6月に給与天引き額が変わります。5~6月になると勤務先から「住民税決定通知書」が渡されますので、住民税が増えた、または減ったことを何となく把握している人は多いでしょう。

しかし、住民税が増減する要因については、詳しく知らないものです。そこでこの記事では、住民税の決まり方や住民税が増えるケース、減るケースについて解説します。

■住民税とは何か?

<住民税とは>

住民税とは地方税の一つで、市町村民税と道府県民税の2つを合わせた税金です(東京23区では、特別区民税・都民税)。個人の場合、毎年1月1日時点の住所地の市区町村から、一括して徴収されます。

また、市町村民税と道府県民税には、それぞれ「所得割」と「均等割」の2種類があります。所得割とは、前年(1月1日~12月31日)の課税所得に対し、10%が課されるものです(市町村民税6%、道府県民税4%)。一方、均等割は、所得に関係なく一律に決まっており、市町村民税は3,500円、道府県民税は1,500円、合わせて5,000円となっています。

<住民税の計算方法>

住民税の正確な金額は「住民税決定通知書」で確認できます。ここでは、住民税がどのように決まるのか、大まかな計算の流れを見てみましょう。

住民税には所得割と均等割がありますので、まず、所得割の税額を計算し、そこに均等割の税額(5,000円)を足せば求められます。

住民税の所得割は、「課税所得×税率(10%)」で計算します。課税所得とは、所得割の税率を掛ける時の対象となる金額のことで、会社員の場合、「年収-給与所得控除-所得控除」で計算できます(個人事業主は、給与所得控除の代わりに、1年間のうち実際にかかった経費を差し引く)。

所得控除とは、一定の条件を満たす場合、一定額を所得から差し引くことで、課税所得を減らせるという制度です。所得控除には主に、以下のような種類があります。

・基礎控除 ・社会保険料控除 ・生命保険料控除 ・地震保険料控除 ・配偶者控除 ・配偶者特別控除 ・扶養控除 ・特定扶養控除

次に、課税所得に住民税の税率(10%)を掛けて、所得割の税額を算出します。最後に、均等割の税額5,000円を足し、住民税の計算は完了です。

なお、ふるさと納税や住宅ローンを利用している人は、上記の所得控除に加え、「税額控除」が適用されることがあります。

<6月から徴収が始まる理由>

住民税の徴収は6月が始まりとなっていますが、それはなぜなのでしょうか。理由として、地方税法により住民税の徴収開始時期が定められていることや、確定申告の時期が関係しています。

住民税は前年の所得に対し課税されますが、その課税額は、基本的には確定申告の後に決定されます。そして、自治体から各企業の雇用主や個人事業主へ税額の決定通知書が送付され、6月から住民税の徴収が始まる、という流れになっているのです。

「6月スタートというのは、時期が中途半端だな」と感じていた人もいるかもしれませんが、住民税の徴収が6月始まりなのには、このような理由があるのですね。

■住民税が増える要因、減る要因

では、住民税は具体的に、どのような要因で増減するのでしょうか。

<住民税が増える要因>

・前年の所得が増えた

住民税は前年の所得に対して課税されるため、前年の所得が増えれば住民税の金額も多くなります。今年の所得が去年の所得より低い場合、少ない給与から多くの住民税が引かれてしまうため、負担が重く感じるかもしれません。

また、給与があまり変わらなくても、副業による収入や配当収入などがあった場合、所得が上がり住民税が増えるケースもあるため注意が必要です。

・控除額が減った

今まで適用されていた控除が適用されなくなると、控除額が減ることで課税所得が増え、住民税も上がってしまいます。控除額は、住民税に大きく影響するものですので、控除額が減ったり控除が適用外となったりする場合には、住民税が増額することを心得ておきましょう。

・住宅ローン控除の適用期間が終了した

住宅ローン控除とは、年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価のうち、いずれか少ない方の金額の1%が所得税や住民税から控除されるというものです。住宅ローン控除で住民税からも控除があった場合、住宅ローン控除の適用期間が終了すると、住民税が大きく増額することがあります。

住宅ローン控除は、所得税から控除できない分は住民税から差し引く仕組みであるため、所得税、住民税のどちらからも控除されていた場合は、住民税アップに注意しましょう。

<住民税が減る要因>

・保険料の支払いなどが増えた

所得控除には「生命保険料控除」や「地震保険料控除」などがありますが、新たに保険料の支払いが増えればこれらの控除が適用となり、課税所得が下がって住民税を減らすことにもつながります。

ちなみに、生命保険料控除の控除額は最大7万円、地震保険料控除の控除額は最大2万5,000円と、上限が設けられています。

・扶養家族が増えた

家族の状況によって、住民税が変わることもあります。たとえば、扶養家族が増えれば、控除額が増えて課税所得が少なくなり、住民税も減ります。

なお、扶養による控除とは、「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」「特定扶養控除」などです。

<その他の要因>

・4~6月の給与額

社会保険のうち「健康保険」「厚生年金」「介護保険」の保険料は、4~6月の給与で決定する「標準報酬月額」を利用します。支払った社会保険料は、住民税の計算時に所得から差し引くことができるため、4~6月の給与額によって住民税が増減することもあるのです。

・住む自治体によって加算がある

住民税の均等割は金額が一定ですが、住む自治体によっては、自然保護などの名目で、これに独自で加算をしているところもあります。たとえば、山形県は+1,000円、静岡県は+400円の追加徴収を行っています。

住む場所によっては、多少住民税が変わることもある、と知っておきましょう。

■住民税の金額を把握しておこう

住民税は所得によって増減するだけでなく、様々な要因によって変わります。特に、控除額による影響は大きいものです。住民税が増えれば手取り額が減ることになるため、今年の住民税はいくらなのかしっかり把握しておきましょう。