ドル円相場が、4月末には1ドル130円台まで下落して、円安水準が更新された。止まらない円安に不安を抱えている人も多いが、一方で、海外の高級ブランド品の買取価格は上昇傾向にあるという。

円安、コロナ禍、ウクライナ情勢など様々な要素があるなか、今後の買取価格はどうなっていくのか、買取の現状と今後の見通しについて、買取専門店「大吉」を運営するエンパワー大吉事業部の木村健一本部長に聞いた。

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■『円安は売り時』がセオリー

――そもそも、円安によって海外の高級ブランド品の買取価格が上がるのはどうしてですか?

一般的な考え方として、円安になると『売り時』、円高になると『買い時』というセオリーがあります。

いまは円安なので、海外からの輸入品を日本国内で購入すると、どうしても値段が高くなってしまいます。一方、海外では日本の中古品が安く買えることになるので、需要が高まり、流通も増えます。

例えば、海外ブランドの時計が現地通貨で5,000ドルだったと仮定すると、1ドル120円の場合、販売価格は60万円くらいです。それが円安の影響で1ドル130円になった場合は販売価格が65万円になります。そもそもの販売価格が上がることで、買取価格も上がるのです。

特にルイ・ヴィトンやエルメスといった高級ブランド品は、海外の富裕層に好まれていますし、投資目的で購入される方も少しずつ増えてきています。日本で高く買い取っても海外でどんどん売れるので、さらに買取価格が上がっています。

――海外の高級ブランド品以外でも、円安のいま、高く買取しているものはあるのでしょうか?

「金」の価格なども、円安の影響がありますね。金の売買は、世界の金融市場だと、ドル建てが基本的な取引になりますので、円安が進むと日本の「金」の価格が上昇していくということになります。

また、ウクライナ情勢や世界的なインフレの影響によって、アクセサリーなどに使われているパラジウムの価格も上がっています。

■購入時より高く売れるブランド・商品も

――中古の買取価格が上がっている背景は円安だけですか?

円安のほかに、新品ブランド品の販売価格が上がっていることも買取価格の引き上げに影響しています。

例えば、何十年にもわたって販売されているルイ・ヴィトンの定番トートバッグ「ネヴァーフル」は、2007年に定価8万円だったものが、2022年には25万円と3倍以上になっています。

その背景にはもちろん、ブランド力を向上させたいという企業の意図もありますが、コロナ禍やウクライナ情勢の影響で商品の生産量が減ったため、1点当たりの利益を増やそうとしていることも、理由の一つとして挙げられます。

仮に2007年にルイ・ヴィトンのネヴァーフルを8万円で購入されているお客様が、未使用品を買取店に持ってこられた場合、いまであれば10万円ほどの値が付くと思います。購入時より高く売れるというケースも珍しくなくなってきているんですよ。

■コロナ禍・ウクライナ情勢の影響も加味した売り時は?

――円安になってから高級ブランド品を持ち込まれる方の数は増えていますか?

「円安だから高値で買ってくれるだろう」という思惑が働いているのか、4月の持ち込み件数は、昨年4月と比較すると200%の件数になっています。

――実際のところ、円安の影響は既に買取価格にあらわれているのでしょうか? 本当のところの売り時はいつですか?

円安の影響がどの時点で買取価格にあらわれるかというのは、私共プロでも予想が難しいというのが正直なところです。

ただしこの先、コロナ禍やウクライナ情勢が落ち着いてくると、金などの安全資産や高級ブランド品に投資していた人たちが、債券や株などに投資先を切り替えていくことが考えられます。

高級ブランド品の需要が減ることで、今後買取価格は下がっていくでしょう。実際、ロレックスなどの高級時計は買取金額が少し下がりつつあるので、この先は他のブランドも下がっていくことになると思います。

また今後は為替レートに調整が入ると思いますし、円安についてもこのまま止まらないというのは考えづらいです。

円安以外の要素により買取価格が下がると見込まれることや、円安による影響もしばらくすればピークを過ぎると考えると、売却を検討している方はいまが売り時と言えるかもしれません。

構成: 安藤美耶