ビジネスシーンでも使われる「赴く(おもむく)」という言葉。ある場所へ向かう、という意味がありますが、その正しい意味や使い方をしっかりとチェックしておきたいところです。本記事では、「赴く」の意味や類語、英語表現、「赴くままに」という表現の意味も紹介します。

  • 「赴く」の意味とは?

    本記事では「赴く」の意味や類語、例文を紹介していきます

「赴く」「赴くまま」とは? 意味と語源

ここでは、「赴く」「赴くまま」の意味や語源を解説します。

「赴く」の意味

「赴く(おもむく)」の意味は、『広辞苑第七版』によると以下の通りです。

おも‐む・く 【赴く・趣く】

㈠自五(「面向おもむく」の意)
①その方へ向かって行く。竹取物語「この吹く風は…よきかたに―・きて吹くなり」。「広島に―・く」「戦場に―・いた」
②状態がその方へ向く。気が進む。源氏物語(御法)「ひたみちにおこなひに―・きなんに」。「興の―・くところ」
③同意する。従う。源氏物語(玉鬘)「語らふに、二人は―・きにけり」

🉂他下二
①その方へ向ける。向かって行かせる。今昔物語集(25)「岳の上より南の添そいを下り様に―・けたり」
②(人の心を)その方へ向かわせる。従わせる。源氏物語(少女)「はづかしげなる御けしきなれば、しひてもえ聞こえ―・け給はず」
③事がその方へうまく運ぶようにする。源氏物語(宿木)「本意ほいならぬ方に―・け給ひしが、ねたくうらめしかりしかば」
④その方向で考える。源氏物語(末摘花)「似げなき御事とも―・け侍らず」

[広辞苑 第七版]

「赴くまま」の意味

「赴く」は「赴くままに」という言い方でも使われます。「赴くままに」は「心が向くままに」という意味で、「深く考えず衝動や欲求のままに」というニュアンスがあります。「自分の気持ちに逆らわず自然に」という前向きな意味で使われるのが一般的です。

・心の赴くままに行動した
・好奇心の赴くままに書物を読んだ

「赴く」の語源

「赴く」の由来は「面(おも)」と「向く(むく)」で、「顔(面)をその方向に向ける」が語源です。「その方向に向ける」が派生して「ある方角に向かって行く」や「ある状態に向かう」の意味になったと考えられます。

また、「ト」に「走」を付けた「赴」という字には、「転倒しながらも急いでかけつける」という意味があるため、「おもむく」の漢字に「赴」があてられるようになったとされています。

「赴く」と「趣く」「行く」との違い

ここでは、「赴く」と「趣く」「行く」との違いを解説します。

「赴く」と「趣く」の違い

「赴く」は「趣く」と表記されることもあります。どちらも意味は同じですが、ある場所やある方向に行くときには「赴く」が使われ、考え方や気持ちがある方向に向かう場合には「趣く」を使うのが一般的です。

「赴く」と「行く」の違い

「赴く」は何か目的や動機があってその場所へ行く、ということを表します。一方で、「行く」は目的や動機の有無関係なく、どこかへ向かうことや今の場所から離れることを指します。

  • 「赴く」の意味とは?

    「赴く」は3つの意味で使われるので、それぞれの意味をしっかりとチェックしておきましょう

「赴く」は自分に使える?

「赴く」は、自動詞かつ他動詞なので、第三者だけでなく、自分の行動に対して使うこともできます。自分に対しては、主に「出向く」という意味で使用されます。

  • 現場に赴いて、確認する
  • 新しい赴任地である京都に赴いた

「赴く」の敬語表現は?

「赴く」を自分に対して使う際に敬語表現にしたい場合は、丁寧語の「赴きます」「赴きました」を使用しましょう。ビジネスシーンで上司や取引先に使用する場合は、「赴かせていただきます」と言い換えても問題ありません。

「赴く」を第三者などに対して他動詞として使用する際に敬語表現にしたい場合は、「赴かれます」「赴かれました」とするのが自然です。

「赴く」の使い方と例文

「赴く」の使い方

「赴く」は「行く」や「足を運ぶ」などの敬語表現としても使えます。たとえば、取引先などを訪問する際には「これから赴かせていただきます」と伝えることも可能です。

「赴く」の例文

「赴く」はビジネスシーンでも使われる言葉なので、例文をチェックして活用できるようにしておきましょう。

・来週から海外に赴きます
・現場に赴いて状況を確認したい
・旧友に会うために田舎に赴いた
・印鑑証明を取得するため、区役所に赴いた

ある状態に赴くという意味合いで使う場合の例文は、下記のとおりです。

・母親の病気が快方に赴いた
  • 「赴く」の使い方と例文

    「赴く」の使い方や例文だけではなく、敬語表現もしっかりとマスターしておきましょう

「赴く」の類語・言い換え表現

ここからは「赴く」の類語を紹介していきます。「赴く」の類語はビジネスシーンで使うことも多いので、それぞれの違いを確認しておきましょう。

出向く

「出向く」は「自分から足を運ぶ」という意味の言葉です。「参る」は堅苦しい表現であるため、ビジネスシーンなどでは「取引先に出向く」などのように使うのが一般的です。

行く

「行く」はそのまま「赴く」の類語として使えます。

伺う

「伺う」は「訪ねる」の謙譲語です。ビジネスシーンでは「明日の午前中には伺います」のような使い方をします。

参る

「参る」は「行く」の謙譲語で、へりくだる際に使われます。ビジネスシーンでは「10時までには現場に参ります」のような使い方をします。

訪ねる・訪れる

「訪ねる」や「訪れる」は「ある目的をもって人の家やある場所へ出かける」という意味があるので類語になります。

  • 「赴く」の類語

    「赴く」の類語には「出向く」や「行く」、「伺う」などがあります

「赴く」の英語表現

「赴く」の英語表現には、「go」や「proceed」などがあります。それぞれの例文をチェックしておきましょう。

・I went to the office of business partner yesterday
(私は昨日、取引先の事務所に赴いた)

・She proceeded to new place of work
(彼女は新任地に赴いた)

なお、「ある状態に赴く」という意味で使う場合には、次のような表現方法があります。

・She is to be on the mend after her traffic accident
(交通事故にあった彼女は、快方に赴いている)

  • 「赴く」の英語表現

    「赴く」の英語表現には、「go」や「proceed」などがあります

「赴く」の意味と使い方を確認して正しく使えるようにしよう

「赴く」には複数の意味があるので、それぞれの使い方を覚えて、ビジネスシーンでも活用できるようにしましょう。類語と英語表現もチェックしておけば、語彙力も高まります。

なお、「赴く」と「趣く」はどちらも同じ意味ですが、「ある場所に行く」場合には「赴く」、「ある状態に向かう」ときには「趣く」を使います。