クラシックカーの祭典「AUTOMOBILE COUNCIL 2022」(オートモビル カウンシル 2022、4月15日~4月17日に幕張メッセで開催)で見慣れないピカピカの高級クーペを見かけた。会場に入ってすぐの一等地で堂々たる存在感を放っていたそのクルマ、聞けば英国の高級車メーカー「アルヴィス」の「グラバー・スーパー・クーペ」だという。どんなブランドのどんなクルマなのだろうか。
アルヴィスとはどんなブランドなのか
アルヴィス(Alvis Car and Engineering Company Ltd.)は1920年、 T.G.ジョンが英国のコヴェントリーで創業した自動車会社だ。1925年に世界初の前輪駆動車を設計・開発。レースにも参戦し、1926年には直列8気筒エンジン搭載の前輪駆動グランプリカーが当時の英国ブルックランズサーキットで時速121マイル(時速194キロ)を記録し、後続にトラック1周以上の差をつけて独走した。1928年には前輪駆動グランプリカーがル・マン24時間耐久レースで1、2位を独占するなど輝かしい歴史を持つ。
市販車としては前輪駆動車を販売し、1933年には世界初の「シンクロメッシュ・トランスミッション」を設計・開発している。 1952年にはのちに「ミニ」を開発したアレック・イシゴニスがアルヴィスに入社し、V型8気筒3,500㏄エンジンの設計に従事したという記録も残っている。
1967年には自動車生産の打ち切りを発表。47年で約2万2,000台を作ってきた歴史にいったんは幕を閉じたのだが、43年後の2010年、自動車生産の再開を決定し、アルヴィス・4.3リッターエンジンの再開発を開始した。2017年には4.3リッター、ついで3.0リッターのニュー・コンティニュエーション・シリーズの販売開始を発表している。
今でも買える?
「コンティニュエーション・シリーズ」とは 、オリジナルの設計図やアルヴィス社のオーナーが所有する実車の3Dスキャニングによるデジタルデータに基づき、当時と同じ方法で再生産したモデルのこと。その道では屈指のコーチビルダーであるスイスのグラバー社が架装した車両は「TA21」~「TF21」の合計3,671台中125台しかなく、最終モデルとなった「TF21」は106台中たったの6台しかなかったという。
「グラバー・スーパー・クーペ」は「3リッター・コンティニュエーション・シリーズ」で最初の生産車両となったモデル。美しいクーペボディのサイズは全長4,788mm、全幅1,700mm、全高1,380mmで、ホイールベースは2,832mm。トレッドは前1,230mm、後1,370mm。車両重量は1,610kgだ。
長いフロントボンネット内に搭載するエンジンは、当時のモノを忠実に再現した排気量2,993ccの直列6気筒オーバーヘッドヴァルブ。ただし、燃料供給装置は当時の機械式から独自のマルチポート式インジェクションに変更してあり、電気系統も独自のエンジンマネジメントシステムを採用している。これにより現代の排ガス規制にも対応しているそうだ。
トランスミッションはトップギア比3.77:1の5速オールシンクロメッシュのマニュアル式。後輪駆動で最高速度は190.4km/hを誇る。サスペンションは独立懸架式 、ブレーキは真空サーボによるディスクブレーキで、ホイールサイズは165x15。高性能トルクスターターモーターやオルタネーター 、高効率ラジエーターなどを装備することで、始動もとてもイージーに行えるとのことだ。
2+2の豪華なブラウンレザーの室内は、日本独自仕様のエアコンディショナーやBluetooth機能付きのレトロスタイルオーディオ、パワーステアリング、パワーウインドウなど特別装備にも抜かりはない。アルヴィス生産車の証である通し番号およびシャシーの通し番号も付与される。3年保証も安心で、Vehicle and Operator Services Agency(イギリス運輸省の関係局)の基準を満たしており、イギリス国内でも日本国内でも走行が可能になるという。
輸入元の明治産業によると、このクルマには多彩なオプションを用意しているとのこと。ユーザー個々の希望や好みに合った特注車も提供できるそうだ。ちなみに、今回の展示車の価格は6,600万円也である。