兄弟子の構想を打ち砕く
藤井聡太竜王への挑戦権を争う第35期竜王戦(主催:読売新聞社)のランキング戦2組決勝、森内俊之九段―広瀬章人八段戦が4月22日に行われました。両者はともに勝浦修九段門下なので、兄弟弟子が2組優勝をかけて戦うことになります。すでに両者とも決勝トーナメント入りは決まっていますが、ここで勝つのと負けるのでは決勝トーナメントにおける優位の差が大違いです。
本局は広瀬八段の先手で角換わりになりました。森内九段が7筋から先攻すると、そこで得た一歩を利用しての▲2四歩△同歩▲2五歩という継ぎ歩の手筋で広瀬八段が反撃に出ます。感想戦では主に50手目△6四銀の周辺が調べられました。この△6四銀では代えて△6四角と打つ手を日本将棋連盟のモバイルAIは示しますが、期待勝率は50%で実戦と変わりません。
AIも互角と示す局面ですが、森内九段は「もういい手がないと思うんですけど。構想が破綻していましたね」と悲観的に見ていたようです。次の▲6六歩に「まいりました」と。この手は次に▲6五歩と突いて、好位置にある後手の銀に働きかける狙いがあります。▲6六歩に森内九段は△8六歩から8筋の歩を換えますが、さらに歩を得た広瀬八段が▲3四歩から猛攻をかけ、飛車の成り込みに成功してリードを奪いました。
こうなっては鉄壁の受けを誇る森内九段も頑張りようがありません。決め手は▲7一竜の王手で、△7二桂と合駒を使わせたことで先手にとって一番の懸案である△3六桂の反撃をなくしています。ほどなく広瀬八段が勝利し、2組優勝となりました。
感想戦は兄弟弟子同士とあってか、穏やかな雰囲気で行われました。最後にもう一度50手目△6四角の筋に触れられると「練習将棋で指しましたが、ボロボロに潰されました」と森内九段は苦笑していました。
相崎修司(将棋情報局)