なすといえば、深い紫色の皮がなんともつややか。実はこの色素には「ナスニン」というポリフェノールが含まれています。では、どのような効能があるのでしょうか。

今回は、煮てよし、焼いてよし、揚げてよし、のなすの栄養成分を徹底解説。味が淡泊で栄養がないと思われがちななすの栄養素や効能をくわしくご紹介します。「なすは食べすぎても大丈夫なの?」という疑問にも触れますので、ぜひ参考にしてください。

  • なすの栄養成分についてくわしく解説します

なすの栄養成分

なすは90%以上が水分ですが、以下の栄養素も含んでいます。

<なす>(生・100gあたり)
エネルギー: 18kcal
・たんぱく質: 1.1g
・脂質: 0.1g
・炭水化物: 5.1g
・食物繊維: 2.2g
・カロテン: 100μg
・葉酸: 32μg
・ビタミンC: 4mg
・カリウム: 220mg

なすには食物繊維やカリウム、葉酸、ポリフェノールなどの栄養素が含まれています。栄養豊富とまでは言えないものの、比較的安価なうえ幅広い調理に活用できるので、野菜不足解消に役立てられる野菜です。また、100gあたりのカロリーは18kcalと低め。ダイエット中でも安心して食べられる野菜といえます。

なすの効能

腸内環境を整える食物繊維

なすに含まれる食物繊維は、腸内環境を整える作用があり、便秘の予防や解消に役立つ栄養素です。やや大きめのなす1本分(100g)あたりの食物繊維総量は2.2g。これはなすと同様に低カロリーである野菜のもやし(緑豆もやし)や、きゅうりの約2倍の量となります。

むくみ予防につなげるカリウム

カリウムは、体内の余分なナトリウムを排出して血圧を正常に保つため、高血圧の予防に役立ちます。また、余分な水分を排出してむくみ予防にもつなげる栄養素です。

貧血防止につなげる葉酸

葉酸には造血作用があるため、葉酸をしっかりとることは貧血の予防につながります。とくに妊娠中に必要とされる栄養素です。

なすの皮に含まれる「ナスニン」とは?

なすの栄養成分のなかで特徴的なものは、皮に含まれるポリフェノールの「ナスニン」です。ポリフェノールには、老化につながってしまう活性酸素の働きを抑えて、抗酸化につなげるといううれしい作用があります。皮はむかずに食べましょう。

なすは食べすぎても大丈夫?

なすは約9割が水分であることから、夏場の脱水症状をやわらげるのにつながる一方で、体を冷やす野菜とも言われます。多少食べ過ぎても余分な水分などは排出されるため、さほど問題はないとされていますが、食事はバランスが大切です。偏ったものばかり食べるのではなく、様々な食材を取り入れるようにしましょう。

  • なすの皮には抗酸化作用のある「ナスニン」が含まれます

なすとは

なすの原産国はインドとされています。ナス科の一年草で、日本には奈良時代のころに入ってきたとされ、古くは「なすび」と呼ばれていました。暑い国の野菜らしく、水分をたっぷり含んでいます。

日本では濃い紫色の長細い形が一般的ですが、産地周辺の東南アジアなどでは白や緑色が主流。英語でなすを「Eggplant」(エッグプラント)というのも、アメリカのなすが白く、まるで卵のような形をしていることが由来とされています。

なすの旬はいつ?

原産国がインドであるように、なすは暖かい気候でよく育つ野菜。日本ではビニールハウス栽培が一般的となり、店頭では一年中見かけますが、7~9月が旬の夏野菜です。

  • なすは代表的な夏野菜です

なすの主な種類

ひと口になすといっても、種類はいくつかあります。代表的なものをご紹介します。

中長なす
長さ12~15cmほどの長卵形(ちょうらんけい)のなすで、市場で最も多く流通しています。「千両なす」が有名で、漬物や煮物、焼き物、炒め物など幅広い調理法が可能です。

長なす
長さは20~25cmほどで、主に関西や九州、東北などで栽培されているなすです。大阪の「大阪長(おおさかなが)」、宮崎県の「佐土原(さどわら)」秋田県の「河辺長(かわべなが)」などがあります。

大長なす(おおながなす)
長なすよりさらに長い、40~45cmほどの細長いなすです。ツヤがあり皮は黒に近い紫色をしています。品種では「庄屋大長(しょうやおおなが)」「久留米長(くるめなが)」が有名です。皮はやや硬く、果肉は加熱することによってやわらかくなるので、焼きなすや煮物向いています。乱切りにして炒め物や揚げ物にしたりするのもおすすめです。

丸なす
ころんとした丸い形のなすです。京都の伝統野菜の「賀茂茄子(かもなす)」が有名で、ほかに新潟県の「長岡巾着(ながおかきんちゃく)」などがあります。皮は柔らかく、果肉はぎゅっと締まっているのが特徴です。丸なすの代表的な料理は田楽ですが、浅漬けにも向いています。

米なす(べいなす)
もともとアメリカのブラックビューティーという品種を日本向きに改良したものとされています。皮は濃い紫色ですが、ヘタが緑色なので他のなすとの違いは一目瞭然。ぽってりとしてサイズも大きめです。果肉が締まって煮崩れしにくいため、漬物よりも煮物やなすステーキなどに用いられます。

白なす
めずらしい、皮が白色のなす。日本種と西洋種があり、日本種だと 「味しらかわなす」、西洋種では「クララ」や「グレーテル」などがあります。白なすのなかにも大きさや形はさまざまあります。皮はやや硬く、果肉は柔らかめで、アクが少ないのも特徴です。 加熱調理に向いていて、ソテーをはじめ、味噌汁やスープなどにもよくあいます。

ゼブラなす
紫色に白い縦模様がまだらに入った、こちらもめずらしいなすです。一般的な中長なすより大きくふっくらしています。品種は「カプリス」「フェアリーテイル」などが有名です。皮がやや硬く果肉が締まっているのが特徴。オリーブオイルでソテーしたり、ラタトゥイユやカポナータといったイタリア料理にぴったりです。

  • 丸なすの一種「賀茂なす」は田楽が有名

美味しいなすの選び方

なすは皮にハリとツヤがあり、傷や変色のないものを選びましょう。ヘタやガクの部分もしっかりとしているものがおすすめです。最近はとげのない品種も多く見かけますが、とげのある品種の場合にはとげに触れると痛いと感じるぐらい尖っている方が新鮮です。

なすの調理方法のポイント

せっかく食べるなら、なすの持つ栄養素を無駄なくしっかり摂りたいものですよね。そのために大切なポイントを2つご紹介します。

1. なすは皮ごと食べる
なすの皮にはポリフェノール「ナスニン」や食物繊維が含まれています。皮はできるかぎりむかずに、そのまま調理して食べましょう。皮の食感が気になる場合は切り込みを入れたり、ところどころむいたりして、皮を残しておいしく食べる工夫をするのがおすすめです。

2. 水に長時間さらさない
なすに含まれる「ナスニン」やビタミン、ミネラルの多くは水溶性。せっかくの栄養素も、水にさらすことで溶け出してしまう可能性が高くなります。変色を防ぐために水にさらすこともあるかと思いますが、その場合もできるかぎり短めにとどめましょう。

油の取りすぎが気になる場合には

なすはたっぷりの油で調理すれば、とろりとやわらかくなります。しかし、油をよく吸収する食材であるために、油の量が気になってしまうという方もいるでしょう。そういう場合には、焼いたり蒸したりすれば少ない油でもおいしく仕上がります。

なすの保存方法

なすは低温や乾燥に弱い野菜です。常温で保存して、早めに使い切るのが基本です。冷蔵庫の野菜室に入れて保存する場合には新聞紙などに包んで冷え過ぎないようにするとよいでしょう。

また、干し野菜にするという方法もあります。薄くスライスして天日干しにすれば、うまみとともに栄養価も高まります。調理する際には水で戻してから炒め物にしたり、味噌汁などの具材に加えたりするのがおすすめです

  • 油との相性がよいなす。揚げればとろりとやわらかに

なすは「ナスニン」を含む皮ごと楽しんで

和洋中のジャンルを問わず楽しめるなす。じゅわっと味のしみたなすは、なんとも言えないおいしさがあります。

なすの栄養成分で代表的なものは、ポリフェノールの「ナスニン」、カリウム、食物繊維など。抗酸化作用のある「ナスニン」は皮に含まれるので、皮ごと調理して楽しみましょう。水にさらしすぎないことも大切です。