ここまで全勝の池永五段を止める

藤井聡太王位への挑戦権を懸けて争われる、お~いお茶杯第63期王位戦(主催、新聞三社連合)の挑戦者決定リーグ白組の羽生善治九段―池永天志五段戦が4月13日に東京・将棋会館で行われ、78手で羽生九段が勝利しました。

王位リーグでは初参加の第34期以来、一度もリーグ陥落のない羽生九段ですが、今期はここまで0勝2敗と大苦戦。リーグ残留のためにはもう一局も負けられません。

対する池永五段は前期に続くリーグ入りです。前期は2勝3敗でリーグ残留とはなりませんでしたが、今期はここまで3勝0敗とリーグトップを走っています。

本局は池永五段の先手で、羽生九段が4手目に角を換えての一手損角換わりになりました。羽生九段が一手損角換わりを採用するのは珍しいですが、4手目に△8八角成を指した対局はこれまで9戦全勝です。序盤から角だけでなく銀も交換する形になり、早くも双方が気を使う展開です。

55手目に池永五段が▲7一角と敵陣に打ち込んで、本格的に局面が動き始めました。対して羽生九段は△8六歩▲同歩の突き捨てを入れてから、△6一玉と角打ちを咎めに行きます。▲6二角成△同玉の局面は角金交換で後手の駒得ですが、後手玉の周りには守備駒がなく、いかにも不安な形に見えます。

しかしさすがは百戦錬磨の羽生九段、早逃げで後手玉を安全な形にしてから満を持して反撃に出た68手目△4九角の局面は、先手玉の受けが難しく後手が勝勢になっています。ほどなく羽生九段が押し切って、待望の初白星を挙げました。まだ苦しい星取りですが、残る2局を連勝できれば残留どころか挑戦者決定戦進出の可能性もあります。

対して痛い星を落とした池永五段ですが、最終戦の糸谷哲郎八段戦に勝てばプレーオフ以上は確定します。明日16日に紅組の豊島将之九段―近藤誠也七段戦が予定されています。リーグもいよいよ大詰めを迎えました。残る対局からも目が離せません。

相崎修司(将棋情報局)

挑戦権に向けて踏みとどまった羽生九段(写真は第62期王位戦挑戦者決定戦のもの 提供:日本将棋連盟)
挑戦権に向けて踏みとどまった羽生九段(写真は第62期王位戦挑戦者決定戦のもの 提供:日本将棋連盟)