前回の記事では、「長期・積立・分散」の資産運用の原則についてお話ししました。今回は、この春から新生活を始める方に向けて、より広い意味での「投資」の価値をお伝えしたいと思います。

  • 初任給、初ボーナスをもらった新社会人、投資は始めたほうがよい?

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収入の中で、すぐに使うお金と将来のためのお金を分けておく

就職して給料をもらうようになると、学生時代よりもまとまったお金が毎月入ってくるようになります。自由に使えるお金も、これまでより増えるのではないでしょうか。

新社会人の方には、まずはご自身の収入を把握し、支出の計画を立てることをおすすめします。

支出の計画を立てる際は、毎月の給料やボーナスの使い道を、「すぐに使うお金」と「将来のためのお金」に分けて考えましょう。趣味や遊びなど、いまを楽しむための支出も大切にしながら、将来のためのお金もしっかり確保することが重要です。

3つのポイント
・収入の中で、すぐに使うお金と将来のためのお金を分けておく
・将来のためのお金は、広い意味での投資に回すのがおすすめ
・資産運用を始める場合は、「長期・積立・分散」の考え方を身に付ける

将来のためのお金を確保するためには、入ってきた給料をつい使い切ってしまわないよう注意が必要です。すぐに使わないお金は給料天引きで別の口座に移しておくなど、お財布を分けておくと安心できるでしょう。

将来のためのお金は、広い意味での投資に回すのがおすすめ

「老後2000万円問題」が注目されてから、将来への不安によって資産形成の必要性を感じ、投資を始める働く世代の方が増えています。就職したら早速、投資を始めようと考えている方も多いのではないでしょうか。

早くから将来に備えようというのはとても素晴らしいことですが、その際には「投資」を広い意味でとらえることをおすすめします。

投資の目的が「将来使えるお金を増やすこと」であれば、株や投資信託などを買う狭い意味での「投資」よりも、自分の成長のために行う「自己投資」の効果が大きい可能性があります。

自己投資は、その後のキャリア・収入につながって、人生において大きなリターンを生む可能性があります。世界全体に投資する「長期・積立・分散」の資産運用のリターンは年4~6%と見込まれますが、自己投資はその何倍、何十倍ものリターンを得られるかもしれません。

また、自己投資のリターンは金銭的なものにとどまらず、その後の人生の可能性を広げて、人生を豊かにする可能性もあります。特に若い方ほど、自己投資という選択肢を真剣に考えてみることをおすすめします。

特に、働き始めたばかりの時期には、「将来のためのお金」にそれほど多くの金額は回せないという方が多いと思います。限られた資金の中で、まずは自己投資を優先して考えてみてはいかがでしょうか。自己投資のための資金を優先して使ったうえで、それでも余裕があれば、残りを資産運用に回すという考え方をおすすめしたいです。

資産運用を始める場合は、長期・積立・分散の資産運用の考え方を身に着ける

「将来のためのお金」の選択肢として資産運用を始めるのであれば、いま手元にあるお金を増やすという目的よりも、将来もっと多くの資金を運用するようになった時に備えて、正しい方法論を身に付ける目的で取り組むことをおすすめします。

リスクを抑えながら、長期的には資産を大きく増やすことが期待できる「長期・積立・分散」の資産運用のスキルを身に付けることは、将来のための投資(自己投資の一つ)と言えます。

語学の学習と同じように、資産運用を成功させるには、正しい方法論を実践し成功体験を積み重ねる必要がありますが、それには時間がかかります。

特に、資産運用を始めて間もない方は、短期的な相場の上下に一喜一憂しやすい傾向があります。損益がマイナスになると心理的な負担を大きく感じて、やめたほうがよいのか不安になる方も多いようです。

しかし、世界経済が今後も発展し成長を続けていけば、投資対象を世界全体に分散し、できるだけ長く資産運用を続けることで、長期的に得られるリターンは高くなります。

たとえば過去30年を振り返っても、複数回の金融危機が発生していますが、世界への長期投資を続けてきた方は危機を乗り越えてリターンを得ています。始めたばかりの不安な時期を乗り越えてリターンが大きなプラスになると、短期的な相場の動きに惑わされなくなるものです。

新社会人の方であれば、数十年にわたって資産を築いていきたいという思いで、資産運用を始める方が多いと思います。無理なく続けられそうな「長期・積立・分散」の資産運用を選んで、本業や、ご自身が好きなこと、人生を豊かにできることに時間を使っていただきたいと願っています。