明治は東京・竹芝でメディア向けに「明治 2022 Newアクション発表会 - 001サステナブルアクション(カカオ)」をリアル会場とオンラインで開催。チョコレートの主原料であるカカオ豆を、豆だけではなく果肉や殻、皮なども用いる「ホールカカオ」の活用をしていくなど、さまざまな取り組みを発表した。
明治が掲げる今後のビジョン
明治ではこれまでも、持続可能な社会の実現を目指した取り組みとして「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」をかかげ、昨年には「健康にアイデアを」という新しいグループスローガンを策定している。
コロナ禍が長引く中、健康で安心して暮らせる持続可能な社会や地球環境を望む人々は世界中に増えた。そのような中で明治には、「社会課題と向き合う企業としての責任」があると考えている。そのため、事業成長と社会課題解決を両立する「明治ROSEG経営」を実践しているという。
同社 代表取締役社長の松田克也氏は、「心身のけんこうを土台とした充実した人生、つまり『ウェルネス』を分かち合う社会の実現のために、時代の変化に適応し、実現力をもって進化を遂げていきたい」と、時代に即した企業として変化し続けねばならないと話す。そのためにも、商品のみならず、情報やソリューションなども提供し、その価値を社会や地球全体に届けて共有していきたいとした。
2026年にサステナブルカカオ100%達成を目指す
その取り組みの第一弾として、カカオ事業において持続可能性を追求し、バリューチェーン全体でサステナブルな新しいカカオの栄養価値を提供する「NEWサステナブル カカオアクション」を実践するという。
明治では1926年から「明治ミルクチョコレート」を製造、販売をしており、まもなく100年を迎える。
カカオ豆の主要産地の西アフリカでは、焼き畑や農地拡大に起因する森林減少、労働力不足による児童労働、栽培技術の周知不足など、バリューチェーンに存在する社会課題のために、貧困から抜け出せずにいるのが実情となっている。これまでも2006年から「メイジ・カカオ・サポート」を展開し、明治社員が現地に直接足を運び、各地域の課題に合わせた支援を実施してきているが、カカオ豆の品質向上に繋がる栽培方法・発酵法などの技術を、カカオ農家の努力だけでは習得する事が難しい。
また、農家の生活を支える井戸やインフラ整備、学校教育の支援など、カカオ農家が自立するための支援は多岐にわたる。この課題解決は明治だけで解決できるものではない。カカオ生産国と農家、コミュニティとで連携を図り、「栽培技術支援と生活向上支援」の両方を継続する事で、「持続可能なカカオ生産」の実現を目指していく。
そして、2026年度までに「農家支援を実施した地域で生産された『サステブルカカオ豆』の調達比率100%達成を実現すると宣言した。
カカオの新たな可能性を探る「ひらけ、カカオ。」
チョコレートの主原料となるカカオ豆だが、実はフルーツであり豆以外の部分もある。しかしながら、カカオパルプ(果肉)、カスカラ(殻)はほとんど活用されていない。カカオはフルーツであり、現状では全体の10%ほどしか利用されていない。
そのポテンシャルを最大化するため、明治では「ひらけ、カカオ。」をスローガンに、新たな可能性を探っていく。
まずは、カカオの実のすべてを利用していく「ホールカカオ活用」への進化だ。カカオ豆ではなく、フルーツとしてのカカオのすべての可能性を探り、明治ならではの新たな栄養価値を創造する。ベトナムのカカオ農園やホーチミンのノンラム大学らとともに、カカオポリフェノールを多く含むカカオ豆の開発や生産に取り組んでおり、鮮やかな赤色の健康新素材「カカオフラバノールエキス」などを抽出している。
今年1月には「サロン・ドゥ・ショコラ東京」にて、ソルベとして試験的に販売しており、2022年度中に少量ではあるが製品として販売予定。このほか、ドミニカ共和国との機能性成分研究で生まれた「カカオグラニュール」技術を用いたカカオ栄養食品や、メキシコ発の希少なホワイトカカオミルクの発売などが検討されている。
また、カカオハスクやジャーム(胚芽)、カスカラなどにGABAやセラミドなどの成分があることを見出しており、具体化に向けた取り組みも行っていくほか、カカオパルプの原料化なども検討。さまざまな研究開発を展開していくという。
そして、バリューチェーンそのものを進化させ、非食品領域でのソリューション開発も進めていく。カカオハスクを使ったタンブラーや紙などをテスト製造しており、今後配合比率などを高めていきたいとした。さらに、これらの活動により生み出された経済価値の一部などを、カカオ産地支援「カカオ・サポート基金」の設立を目指す。
このような「サステナブルカカオ」に関する情報発信も強化していく。これまでも、カカオの栄養価値や食育活動、チョコレート検定などでVRコンテンツの発信などで情報発信を行ってきた。今後は、カカオの生産地や農家と消費者の距離を縮め、より身近な存在になるよう、デジタルやテクノロジー、IoTを活用した、新しいバーチャルなカカオ体験の創造にも取り組みたいとした。
これらの取り組みは第一弾であり、今後も「ウェルネスをわかちあう社会」の実現に貢献する企業であり続けるために、第二弾、第三弾の取り組みも予定されている。