リンクアンドモチベーションが「モチベーションカンパニーアワード2022」「モチベーションチームアワード2022」を開催、企業と従業員の相互理解や相思相愛の度合いを偏差値化した「エンゲージメントスコア」が高い企業や部署を表彰した。

本稿では、従業員2,000名以上が対象となる大手企業部門の表彰をレポートする。

初の殿堂入りが決定

12回目となる今回の表彰式は、コロナ禍の影響もありオンラインでの開催となった。

主催となるリンクアンドモチベーション 代表取締役社長の坂下英樹氏は「日本の課題である労働人口の減少や近年注目されている人的資本経営の開示など、人事などの分野を超えた経営のテーマとして話を聞いてもらえるのではと思っています。ぜひ、日本のリーダーシップの役目を果たしていただきたい」と冒頭であいさつした。

大手企業部門では、エンゲージメントサーベイを実施した企業の中で、特に高いスコアだった組織を表彰している。

その指標となるエンゲージメントスコアは、組織の状態をはかる"ものさし"で、2000年にリンクアンドモチベーションが開発。約8,740社、237万人のデータベースを基に算出している。その中でも、特にスコアが高かった10社を受賞企業として表彰した。

10~3位までの企業は下記の通り。

10位はスーパーマーケットを中心とした小売り流通業を展開する「フレスタ」、9位はローン事業、クレジットカード事業、信用保証事業を展開する「アコム」、8位はパチンコ、ボウリング、アミューズメント、シネマなどレジャー関連の経営などを多角的に手掛ける「マルハン北日本カンパニー」、7位にクラウドやアウトソーシングなどのサービスビジネスなどを展開する「日本ユニシス」、6位は「マルハン東日本カンパニー」だった。

また、5位に病院経営、専門医療、美容医療、商品開発、保険診療から自由診療までのトータル医療サービスを経営する「SBCメディカルグループ」、4位は総合商社の「丸紅」、3位に医療用医薬品、食品素材・食品添加物、動物用医薬品等の製造および販売を手掛ける「大日本住友製薬」となっている。

そして、上位2企業は受賞者による挨拶も行われた。まず、2位は損害保険業の「東京海上日動火災保険」が受賞。

人事部の担当者は「保険という形のない商品を取り扱うため、人が何よりも大切な財産。会社が持続的に成長していくためには、社員の働き甲斐の向上や組織の活性化が何よりも重要です。各組織の課題を網羅的に把握し、タイムリーに解決していく施策は、当社の目指す方向性への実行性を強く感じています。今後も、真に必要とされるよい会社を目指すために、活用していきたいと思います」とあいさつした。

さらに、1位の食料品スーパーマーケット、生鮮特化型業務スーパーを運営する「佐竹食品グループ」は、5年連続で1位を獲得。今回から導入される殿堂入り制度の最初の企業となった。

殿堂入り制度は、今後3年連続で1位となった企業は殿堂入りとなり3年間ランキング対象とならなくなる。

  • 提供:リンクアンドモチベーション

梅原一嘉社長は「このサーベイを導入して15年間、非常に良かったと感じています。売り上げも4倍近く伸び、利益もそれ以上に伸ばすことができました。なかなかスコアが上がらず苦労したこともあったが、あきらめずに続けていくことが大切だと感じている。数字の悪い部署に直接入り込んでいったり、社内でアワードをはじめたり、少しずつのターニングポイントを経て、今5年連続1位、殿堂入りという素晴らしい賞を得ることができたと思います。そして、そこからどう向き合っていくのかが大事。やり続けることはしんどいが、従業員のやりがいや満足度に向き合い、精進していきたいと思います」と、さらなる努力を誓った。

モチベーションカンパニーづくりの秘訣とは

続いて行われたトークセッションでは、SBCメディカルグループの人事部長 峠ケかおり氏、東京海上日動火災保険の人事企画部長 守山聡氏と、リンクアンドモチベーションの坂下氏が登壇。モチベーションカンパニーづくりの秘訣について語られた。

SBCメディカルグループでは、組織が同じ方向を向くための理念の必要性が課題で、エンゲージメント向上のため、理念に沿ったESという社内の"ものさし"合わせを実施。

社内報や代表の発信といった事務局側のアクション、理念勉強会やES係の設置といった各クリニックのアクションなどに取り組み、考え方の理解を浸透させていったという。

  • 提供:リンクアンドモチベーション

峠ケ氏は「現在、日本一の美容クリニック数を誇る会社ではあるが、あくまで目指すのは世界一お客様の多い医療グループ。ここからステップアップしていくためには、新事業の業態や多角化が必要になる。医療以外の知識も必要となってくるので、自分の成長が会社の成長につながると確信して、医療のほかの知識も磨き続けられるモチベーションをもった人材の育成がテーマになってくる」と話し、そのためにもES係の活動など、よい取り組みの共有がスムーズに進むための横のつながりを今後も構築していきたいとした。

続いて、東京海上日動火災保険では、近年の事業環境の変化に伴いマネジメントの複雑性が増大したため、マネージャーの力量や経験に依存せず、俯瞰的に組織状態を把握し、改善できる仕組みが必要と考えた。

200以上の拠点があり、巨大な組織の各現場で改善活動を実行していくため、現場で主体的に自走できる仕組みの構築が必要と考え、具体的な運用については、各ブロックや部店で決定。

事務局はES組織へのサポート体制を構築する形としたという。この取り組みにより、全課支社のうち70%以上でスコアが改善。人事を介さずに管理職向けの研修を実施するなど、主体的な部署も現れるようになっている。

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守山氏は「創業時からの究極の目的は、お客様や地域社会の"いざ"をお支えし、お守りすることで、それは変わらない。この目的を起点に、時代とともに変化する社会課題に貢献していくことで、社会から必要とされる存在となり続けていく。保険ビジネスは人が作り上げる信頼がすべての競争力の源泉なので、全社員が成長し続けていく会社を目指していきたい」と、変わらぬ理念をもちつつも変化し続ける時代に合わせ、丁寧に人の成長を促していきたいと語った。

坂下氏は「モチベーションのエンゲージメント向上には、状況に応じた対応が必要」と話し、改善活動の趣旨を理解しているが現場のESが低い場合には「励ます」、現場ESは高いが趣旨の理解ができていない場合には「正す」といった、状況別のアプローチがあると解説。

「『励ます』『任せる』『寄り添う』『正す』といったアプローチを、どのような人がどのように行うのか。それによって、よりエンゲージメントの効果が高まる」といい、状況の判断が重要だとした。