「社日(しゃにち)」とは、土地の神様を祭る日のことです。春分と秋分のそれぞれにもっとも近い戊(つちのえ)の日を指します。聞き慣れない言葉ではありますが、昔から続く伝統行事です。
本記事では社日についてくわしくご紹介していきます。2022年の社日がいつにあたるのかについても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
社日とは
社日とは、土地の神様を祭って五穀豊穣を祈る日のこと。土地の神様とはすなわち農耕の神様でもあります。ここでは社日の読み方やくわしい意味をご説明します。
社日の読み方
社日は「しゃにち」と読みますが、「しゃじつ」と読むこともできます。
社日の意味
社日の「社」は「やしろ」とも読むように、土地の神や神を祭る場所のことを指します。つまり社日とは文字通り「土地の神様を祭る日」という意味です。
社日の由来は中国だとされ、春に五穀豊穣を祈り、秋に収穫を感謝していたことが元になっています。現在の日本において社日とは、農業に関わる人にとっての節目の日。農作業を休み、社日祭を執り行います。
社日は春と秋にある
社日は具体的に春分と秋分にもっとも近い「戊(つちのえ)の日」のことで、1年に2日あることになります。地神は「春の社日に天から降り、秋の社日に天に帰る」考えられており、春の社日は「春社(しゅんしゃ)」や「地神降り(じがみおり)」、秋の社日は「秋社(しゅうしゃ)」や「地神昇り(じがみのぼり)」とも呼ばれます。
戊(つちのえ)の日とは?
「戊」とは、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10要素からなる十干(じっかん)のひとつです。数字と同じようなものと考えるとわかりやすいでしょう。
十干は古代中国で生まれた概念で、周の時代には十二支と合わせた干支(かんし・えと)として暦の表示に使われるようになりました。
漢の時代には「木・火・土・金・水」という五行に十干が2つずつ当てはめられて、下記のようになったとされています。
兄(え) | 弟(と) | |
---|---|---|
木 | 甲 | 乙 |
火 | 丙 | 丁 |
土 | 戊 | 己 |
金 | 庚 | 辛 |
水 | 壬 | 癸 |
また、当てはめられた2つは、それぞれ「兄(え)」と「弟(と)」を示すとされました。日本では「甲」を「木の兄(きのえ)」、「乙」は「木の弟(きのと)」、「丙」は「火の兄(ひのえ)」などのようにも読むこともあります。
社日にお供えするものは?
社日にはどのようなお供え物をするのでしょうか。昔の中国では種まきのころの春の社日には五穀の種子を供え、収穫時期の秋の社日には初穂を供えていたようです。
現在の日本では米や日本酒、おはぎなどを供えることが多いようです。ただし、社日の行事の内容には地域色が色濃く反映されるので、地域によって内容はさまざまです。
2022年の社日祭はいつ?
2022年の社日は下記の通りです。
- 春の社日(春社):3月16日(水)
- 秋の社日(秋社):9月22日(木)
なお、2022年の春分の日は3月21日、秋分の日は9月23日です。
有名な社日祭は?
社日祭は土地によって特色がありますが、ここではその一例として、有名な群馬と福岡の社日祭などをご紹介します。
群馬県の社日稲荷神社
群馬県にある社日稲荷神社では、江戸時代から続く「探湯神事(くがたちしんじ)」が春と秋の社日祭で行われています。探湯神事とは、神前に供えられた大釜で沸かした湯を、小笹で全身に浴びせて家内安全や厄難除けなどを祈願するものです。なお、探湯神事は「湯加持行事(ゆかじのぎょうじ)」ともいわれます。
福岡県の筥崎宮(はこざきぐう)
福岡県の博多にある筥崎宮では、箱崎浜の真砂をいただいて自宅へ持ち帰る「お潮井取り」が春と秋の社日祭に行われます。
箱崎浜の真砂は神聖なものとされ、この地域では古くからお清めの際に真砂が用いられてきました。とくに社日の真砂は効き目が高いとされ、早朝から多くの参拝客が箱崎浜に訪れます。
この真砂は豊作や虫除けを祈って田畑にまいたり、家を建て替える際に敷地にまいたりと珍重されています。
長野県小県郡(ちいさがたぐん)地方
長野県の小県郡では、田んぼの神様を「お社日様」として信仰しています。春の社日は「神迎え」、秋の社日は「神送り」として、お餅をつきお供えされています。
社日は歴史ある伝統行事
社日とは、春分と秋分の日のそれぞれにもっとも近い戊の日のことです。春の社日は「春社」、秋の社日は「秋社」などとも呼ばれます。社日では、土地の神様を祀り、地域の神社へお供え物をします。2022年の社日は春社が3月16日、秋社は9月22日です。
地域によって社日祭の内容は異なりますが、古くから受け継がれている風習が現在でも各地に残っているのは、興味深いところです。とくに、群馬県の社日稲荷神社や福岡県の筥崎宮で行われる社日祭は有名です。
春分の日や秋分の日は広く知られていますが、社日はなじみがありません。しかし、農業の節目に行う歴史ある伝統行事です。ぜひ一度、社日祭に出かけてみてはいかがでしょうか。