役者、歌手、バラエティ……どんな表現方法でも、ブレないのは“お客さんのために”という姿勢。

「やっぱり恵まれない時代を何十年も過ごして、差別されてきたからこそ、お客さんの大切さが身に染みているんだと思います。お客さんをないがしろにしたら、絶対にダメ。僕は、舞台で歌うときは、生のバンドの演奏でなければ歌わないんです。近年、演歌界でも生演奏ではなく、カラオケで歌うことが多い。そこに『お客さんには分からないだろう』という傲慢さが出ていると思うんです。でもお客さんの立場になれば、絶対生演奏がいいに決まっている。それをやらないから、どんどんすたれていくんですよ」。

だからこそ梅沢は、受けた仕事は全力投球。

「水でも被りますし、どこにでも飛び込みます。それをすることでお客さんが喜んでくれるなら、僕は何でもやります。まあ、もちろん意にそぐわないことは、そもそも受けませんから。出るからには、お客さんが望むことなら何でもやります」。

現在71歳の梅沢だが、内からあふれ出るエネルギッシュなオーラは、多くの人を魅了する。

「僕10代のころ、70歳の老人なんて、床の間の置物みたいな存在だと思っていましたが、実際自分がなってみると、まだまだ老け込む年ではないですよね。もちろん、自分が必要とされないならば辞めますが、求められるうちは頑張っていこうと思っています」。

ビシっと背筋が伸びた姿勢、ハリのある美しい声、そしてなにより、お客さんを“楽しませよう”という強い気持ちは、まだまだ大いなる活躍を予感させるほどパワフルだ。

■梅沢富美男
1950年11月9日生まれ、福島県出身。梅沢富美男劇団座長、タレント。大衆演劇のスター・梅沢清と竹沢龍千代の5男として、1歳7カ月で初舞台を踏む。15歳のとき本格デビュー。その妖艶な女形で「下町の玉三郎」の異名をとる。82年、TBS『淋しいのはお前だけじゃない』の準主役に大抜てきされてブレイクし、同年リリースした「夢芝居」は累計50万部を超える大ヒットを記録。現在、『プレバト!!』『バラいろダンディ』『梅沢富美男と東野幸治のまんぷくメシ!』『トリニクって何の肉!?』などにレギュラー出演している。