先進医療特約は、先進医療を受けたときに必要な保障を得られる特約です。保障を受けられるのは厚生労働省が承認した先進医療を受けたときなので、健康でいるうちは必要ないと感じる方も多いでしょう。
この記事では、先進医療特約の概要や必要性についてまとめています。ご自身の保険を見直すときに参考にしてみてください。
先進医療特約とは
先進医療特約は、先進医療の治療費をカバーできる特約です。概要や種類について簡単にまとめました。
先進医療の治療費をカバー
先進医療特約は、先進医療を利用した際に治療費などを特約の上限内でカバーすることができます。特約とは、メインとなる保険契約の保障に任意で付帯するオプションのことをいいます。
先進医療とは
先進医療とは、厚生労働大臣が承認した治療法や先進的な技術による治療などのうち、自由診療と呼ばれる公的医療保険の対象外の治療のことです。
国民の選択肢を広げるために、公的医療保険で適用できる医療との併用が認められています。
先進医療の種類
先進医療の種類は、2021年11月1日時点で先進医療Aが24種類、先進医療Bが59種類あります。
先進医療Aは未承認・適応外の医薬品・医療機器の使用を伴わない医療技術や、それらを使用しても人体への影響が極めて小さいものをいいます。
先進医療Bは先進医療Aに含まれない、未承認・適応外の医薬品・医療機器を使用する医療技術、およびそれらを使用すると重点的な経過観察を要するものです。
先進医療は「保険適用外」ではない?!
先進医療は公的医療保険制度でカバーできないため、先進医療=保険適用外と考える方も多いかもしれません。
先進医療は厳密にいうと、厚生労働大臣が承認した治療法や高度な技術を用いた医療のうち、「保険適用外」ではなく、保険診療との併用を認められているものです。通常の治療と共通する診察・検査・投薬・入院等の基礎部分については一般の保険診療同様に公的医療保険が適用され、先進医療の技術料、薬剤などの部分についてのみ保険適用外となります。
将来的な一般の保険診療への導入のために臨床の場で評価を行うものとして位置づけられているため、今は保険適用外の先進医療も、将来的に承認されて保険適用の範囲内となる可能性もあります。
先進医療特約の対象
ここでは先進医療特約の対象や、保障範囲についてまとめました。先進医療特約自体は健康な人なら誰でも加入できますが、どのような場面で保障が受けられるのかを知っておきましょう。
先進医療特約の保障範囲
先進医療特約によって保障される技術の条件は、その治療を受けた時点で先進医療として認可されていることです。
先進医療は将来的に厚生労働省によって見直しされる可能性もあるため、保険加入時点では先進医療として認可されていたとしても、治療を受けたときに不認可となってしまっている場合には、給付金を得られません。
また、保険会社によって具体的な保障範囲は異なりますが、一般的に医療保険に付加する場合は厚生労働大臣に承認された先進医療技術が保障の対象範囲です。一方、がん保険に付加する場合はがん治療に関する先進医療が保障対象となります。
先進医療特約の対象は変動する
先進医療は定期的に見直しされており、認可リストに追加されたり外れたりすることもあります。そのため先進医療特約の保障対象は変動するということを覚えておきましょう。
先進医療特約の対象となる可能性のある病気
2021年11月時点で認可されている先進医療技術は下記のような病気の診断・治療のために使われることがあります。以下のような病気で先進医療を受けた場合は先進医療特約の保障対象になる可能性があります。
家族性アルツハイマー病
子宮腺筋症変
全身性エリテマトーデス
悪性脳腫瘍
また、部位にもよりますが、がんを治療するための陽子線治療、重粒子線治療なども先進医療特約の対象となる可能性があります。
白内障やインプラントは先進医療特約の対象?
白内障の治療で用いられる「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は、先進医療特約の対象から外れた医療技術のひとつです。
先進医療のなかでも実施件数が多かったようですが、2020年4月から先進医療から外れ、保険診療+選定療養として、手術における技術料は健康保険で保障できるようになりました。眼内レンズ代は保険がきかないため、自由診療となります。
このほか、かつては一部の歯科インプラント治療も先進医療特約の対象でした。2012年4月1日より特定の症例でのみ、公的医療保険が適用されるようになっています。ただし、一般的な歯科医院で広く行われているようなインプラント治療は、自由診療扱いです。
先進医療特約を利用するときの流れ
先進医療特約を実際に利用するときの流れを、簡単に紹介します。先進医療を受ける機会は少ないと思いますが、万が一のときのために知っておくといいでしょう。
治療を受ける
先進医療を受けることになったら、まず先進医療を受けられる病院を探しましょう。厚生労働省のホームページに先進医療を受けられる病院のリストが掲載されています。
近くの病院を探すときに活用してみましょう。
同意書に署名
先進医療は公的医療保険の対象となっておらず、高額な医療になるため、患者の同意なしには施術することができません。先進医療を受けるときには、同意書の署名をして同意を示しましょう。
領収書を保管しておく
先進医療を受けると、先進医療にかかる費用、通常の治療と共通する部分についての一部負担金、食事についての標準負担額などを支払います。
それぞれの金額を記載した領収書が発行されるので、大切に保管しておきましょう。税金の医療費控除を受ける場合に必要となります。
先進医療特約って必要?
先進医療は万が一のことがない限り、受けることはないかもしれません。先進医療特約は本当に必要なのか検討するときに使えるデータをまとめました。
先進医療でかかる費用は?
先進医療特約は先進医のを受けたときの高額な治療費をカバーするためにあります。主な先進医療でかかった費用例は下記のとおりです。
家族性アルツハイマー病の診断: 3万円
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術: 約30万円
腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術: 約87万円
陽子線治療: 約270万円
重粒子線治療: 約309万円
参照:厚生労働省 第81回先進医療会議資料「令和元年度先進医療技術の実績報告等について」
先進医療でもすべてが高額になるわけではないため、特約を付帯していなくても医療保険や貯蓄で十分にカバーできる可能性もあります。
万が一先進医療を受けることになったときのシミュレーションもしておくといいでしょう。
先進医療を受けている人の割合
厚生労働省の資料によると、2018年7月1日~2019年6月30日までのあいだに全国で3万9,178人が先進医療の治療を受けたそうです。この期間に実施された先進医療費用の総額は約298億円となりました。
先進医療特約は数百円で付帯できる
先進医療特約は、基本的に医療保険に付帯する保険のため、先進医療特約単体で加入することはできません。
しかし先進医療特約を付帯しても数百円程度なので、万が一のときのことを考えるとさほど高い金額ではないでしょう。
先進医療特約を付帯するときのポイント
先進医療特約を付帯するとき、注意しておくべきポイントをまとめました。先進医療特約を付帯する前にチェックしてみてください。
先進医療特約を付帯できる保険
先進医療特約を付帯できるのは、主に下記の2つです。
医療保険
がん保険
生命保険や火災保険など、直接施術に関連しない保険に付帯することはできません。がん保険に先進医療特約を付帯する際は、保障の対象ががん治療の場合のみなのか先進医療全般なのか、事前に確認しておきましょう。
保障範囲・上限金額をチェック
先進医療特約を付帯するときは、保障の上限金額がいくらなのかを確認しておきましょう。最近の先進医療特約であれば、1,000万円や2,000万円と余裕をもって上限を設定していることがほとんどです。
先進医療特約の保障上限金額は、一般的には「1回」や「ひとつの病気に対して」ではなく、「通算」です。治療が長引く病気にかかる可能性も視野に入れてみましょう。
更新型か終身型か
先進医療特約は、更新型と終身型の2種類があります。文字どおり、終身型は一生涯、更新型は定期的に更新が必要な保険タイプです。
終身型の場合は保険料の値上がりを避けられる一方、保険内容の変化に対応できません。更新型は更新時に保険料が上がる可能性がありますが、そのときどきに応じた保障に見直すことができます。
先進医療特約の内容によっては、後から付加したり解約したりすることができるものもあります。その場合は終身型にしておいて、保障内容が希望するものと合致しなくなったら見直しを行うようにすれば、保険料アップを避けつつ保障の見直しをすることもできるでしょう。
給付金の支払先
先進医療特約が利用できるとしても、自分で給付金を受け取るタイプの場合は先に高額な医療費を支払う必要があります。そもそも高額な医療費を支払うのを避けるための先進医療特約なので、保険会社から医療機関に直接給付金を支払ってくれるかどうかを確認しておきましょう。
ただし、保険会社によっては保険会社指定の医療機関でなければ直接支払いはしない、ということもあるため、契約内容は十分に確認しておきましょう。
先進医療特約は万が一に備えておいて損はない
本記事では先進医療特約についてまとめました。先進医療特約は、民間保険会社の保険に付帯して公的医療保険の適用範囲外で高額となる医療費をカバーできる特約です。
先進医療は今は保険適用外であっても、将来的に保険の対象となる可能性もあります。
先進医療特約が必要かどうかは個々人の考え方にもよりますが、数百円で既存の保険に付帯できる特約ですので、つけておいて損はないかもしれません。是非検討してみてくださいね。
厚生労働省「先進医療 A 及び先進医療 B の分類にかかる考え方について(案) 」
厚生労働省「先進医療の概要について」
厚生労働省「令和元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」