大阪・船場の老舗木綿問屋「矢島商店」の四代目当主・矢島嘉蔵が亡くなったことをきっかけに、三姉妹と愛人が莫大な遺産を奪い合う姿を描いた山崎豊子氏の『女系家族』。1963年に初めて映像化された本作が、4日・5日(21:00~)にテレビ朝日系列で2夜連続放送、令和の世に蘇る。

矢島嘉蔵(役所広司)の愛人・浜田文乃(宮沢りえ)、矢島家の次女・千寿(水川あさみ)、三女・雛子(山本美月)と激しい遺産相続争いを繰り広げるのが、寺島しのぶ演じる矢島家の長女=“総領娘”の藤代。今回は寺島に、同じ女優である自身の母とのエピソードや共演者の印象を聞いた。

  • 女優の寺島しのぶ 撮影:宮川朋久

    女優の寺島しのぶ 撮影:宮川朋久

――物語の中には、三姉妹の父・嘉蔵の遺言を通して、何歳になっても親からの言葉には特別な重みがあると感じさせられる場面もありました。寺島さんは今年10月11日に更新されたブログで、お母様である女優の富司純子さんから映画『空白』をメールで褒められたことについて「何十年ぶり? いや何百年ぶり?」「明日は雹が降るのかな」と綴っていましたが、お母様から褒められることはあまりなかったのでしょうか。

母はずっと褒めない人でしたから、これまでいい言葉を受け取ることはありませんでした。作品を見てくれても「これはこうじゃないの、ああじゃないの」と心配するような感想をもらうことが多かったです。

――寺島さんが女優を始める前の、高校時代のクラブ活動などに対してもそうでしたか。

その頃は違いましたね。

――「女優」の寺島さんにだけ厳しいと。

この歳になっても、親からの言葉はなぜこんなに突き刺さるんでしょうね。私ももう一端の大人なのに、親から言われたちょっとしたことで、眠れなくなるくらい腹が立つときがあります(笑)。

――いくつになっても、親からは褒められたいと思いますか。

誰からも褒められたいです。でも私の母は褒めない人なので、褒めてくれるときは本当に良かったときだと思えます。

――では、嘘やお世辞がないお母様から、寺島さんを褒めるメールが届いたときの喜びはひとしおだったのでは。

うれしかったですね。ただ、めちゃくちゃそっけなかったんです。「あの人と、あの人と、あの人が良かった。……まぁ、しのぶも良かったけどね」って。しのぶを一番に書いてよ! って(笑)。

――照れ隠しでしょうか(笑)。

わかりません!(笑) 個人的なメールだし、娘を一番に書いてもいいんじゃない? と思いましたけどね。それでまたムッとしちゃったりして。いくつになっても、娘と母親って特殊な関係だなと感じます。

――親からの言葉が何歳になっても特別な意味を持つように、藤代にとっての遺産相続には、お金だけじゃなく父との絆や、長女として生きてきた苦労や呪縛が込められているようでさまざまな意味があると感じました。寺島さんはどう感じられましたか。

お金の勉強をして、皆と真っ向からぶつかり合って……、遺産相続のゴタゴタがあったから藤代は成長できた。遺産相続を通して藤代がちゃんとした大人になる過程が描かれていると思います。