「より快適な毎日を、より多くの方々に」をビジョンに掲げるイケア・ジャパンがこの夏、ニューノーマル時代に従業員の変わりゆくオフィスニーズに対応するため、本社オフィスをリニューアルしました。
従業員が自分の業務内容に合わせて、好きな場所で働ける「アクティビティベースドワーキング(以下、ABW)」という考えのもとレイアウト変更をしたそうです。
オフィスをリニューアルした背景や、その特徴などについて人事マネージャーの小山寛さんにお話を伺いました。
コワーカーに対するイケアの考え方を反映
「今回オフィスリニューアルは、コロナ禍という環境の変化へ対応するだけでなく、コワーカーに対するイケアの考え方がベースにある」と話すのは、イケア・ジャパンの人事マネジャーの小山さん。
イケアでは、従業員に親しみを込めて「コワーカー」と呼ぶ習慣があり、「イケアは、人の力を信じており、コワーカー一人ひとりがいきいきと自分らしく働ける環境を目指しています。そのため、共通した価値観をすごく大事にしています」と同社の企業文化を説明します。
その価値観の1つが「8つのバリュー」と言われるもの。
1.連帯感を持つ
2.環境と社会への配慮をする
3.コスト意識を持つ
4.シンプルに考える
5.刷新して改善する
6.意味のある違うやり方にトライする
7.責任を与え、引き受ける
8.自らが手本となる
「この『8つのバリュー』は、非常に当たり前でシンプルな考え方ですが、これらを全世界のコワーカーに共有しているからこそ、会社と一緒になって成長することができます」と小山さんは言います。
「さらに2つ、イケアが大事にしていることがあり、それが、『INCLUSION(多様な人材の受容と活用(』と『EQUALITY(平等)』という考え方です。INCLUSIONについては、性別や国籍など,コワーカーが生まれついて持っているもの(第1要素)だけでなく、コミュニケーションやキャリア,学ぶスタイルなど,経験によって培っていくもの(第2要素)もあり、イケアはこのどちらの要素も重視しています。
EQUALITYは、例えば、空きのポジションがあれば誰でも応募でき、キャリアを自由に築くことができたり、女性も意欲があれば管理職にチャレンジできる機会があったりします。実際、女性管理職の比率が5割以上に占めています」。
雑談なども自由にできる#Chatや#Onlineエリアが人気
こうしたバリューを踏まえ、社員であるコワーカーはどんな職場で働いているのでしょう。オフィスの中も見学することができました。
まずオフィスは、次の7つのコンセプトに分けてレイアウトされています。
#Co-work
#Focus
#Online
#Chat
#Collaboration
#Recharge
#Inspiration
「例えば、『#Co-work』はコワーカーが普段デスクとして使っているエリアです。社長などの経営層の席も分かれておらず、業務と関わりのある人の近くや、その日の気分に合わせて、自由に席を選べます。ここには、自分の業務内容に合わせて、好きな場所で働ける『ABW』や『EQUALITY(平等)』というイケアの考えが反映されています」。
また、今回のオフィスレイアウトは、コロナ禍における社員のニーズの変化にも対応しているのも大きな特長。小山さんは次のように話します。
「コワーカーにアンケート調査をした結果、在宅ワークが日常的になり、オンライン化が進んだことで、オフィスに出社する意味が劇的に変わってきたことが分かりました。一番多かったのが『コワーカー同士のつながりをもっと実感したい』という声でした。もちろん、オンライン上でもコミュニケーションはとれますが、会って話すことで雑談なども含めて、いろんな情報や気付きが得られます」。
そして、オフィスニーズの変化を一番反映させたエリアが、#Chatと#Onlineだと言うのです。
「#Chatは、#Co-workの近くにあり、少人数で話せるスペースになっています。通常オンラインではなかなかできない、ちょっとした雑談を仲間とリラックスしながら交わせるため、アイデアの共有や、近況報告などが行えます。#Onlineはオンラインミーティングができる仕切られた独立空間です。これまでオンラインミーティングは会議室を使っていましたが、すぐに満室になっていました。すると#Co-workエリアしか使えず、そこだとオンラインミーティングの内容が周りに筒抜けになるため、周りに気兼ねせずに雑談も含めて、オンラインのやりとりができるスペースが求められていました」。
どちらも人気のエリアで、見学当日も多くの利用者の姿があります。
「コワーカーの安全を最優先する勤務態勢」は世界共通
実はオフィスリニューアルの7つのコンセプトは、イケア・ジャパンオリジナルで、世界各国のオフィスはそれぞれ異なるレイアウトになっているようです。世界共有のコンセプトはあるのでしょうか。
「イケアでは、コワーカーの安全を最優先する『オールウェイズセーフティファースト』という共通した考え方を持っているのです。そのために、在宅ワークをグローバルで推進してきました。また、グローバルで勤怠管理システムを開発して、毎日の出社人数を把握。出勤人数を制限しています。さらにイケア・ジャパンのオフィスでいえば、コワーカーが密にならないように出勤日数を週最大2日までに限定し、オフィスでの異なる同士の距離を保って業務を行うように配慮しています」。
部署の枠を超えた交流を推進
最後に、イケア・ジャパンとして今回のオフィスレイアウトを通じて、社員のマインドをどのように変えていこうと考えているのかを、小山さんに伺いました。
「今はまだ安全面の配慮がありますので、取り組めていませんが、今後はコーヒーブレイクをみんなで楽しむ時間を設けたり、『#Collaboration』を活用して、部門を超えたイベントなどを定期的に開催したりして、社内の活性化を目指していきたいですね」。
ニューノーマルの時代になり、オフィスは単なる働く場所から変容しました。働きやすさを追求しながらも、働き手の意識改革をもたらす場所として機能していくことが、今後より求められそうです。