クルマがオフィスに?テレワークもここまで進化

テレワークの普及に伴い、働く場所を選ばない「働き方」が浸透してきました。自宅、サテライトオフィス、駅、そしてクルマ!?

こちらは、大手企業に25年勤めたのち、独立して事業主となった造形アーティスト志喜屋徹(しきや・あきら)さんのクルマ。

  • 日産NV350キャラバンをDIY

志喜屋さんは、キャンピングカーを「オフィスカー」にカスタム完了。都内の自宅に生活の拠点を置き、オフィスカーで仕事をしています。

郷里の沖縄とは違い、公共交通が発達した東京生活では、クルマよりロードバイクやマウンテンバイクなどの自転車を愛好していたそうです。では、なぜこんな大きなキャンピングカーに乗るようになったのでしょうか?

志喜屋さんに聞くと、「独立するにあたり、もちろん普通のオフィスも検討しました。ただ、造形アーティストとして活動しているので、展覧会などへの作品運搬もできるクルマも欲しい……。オフィスと運搬車を組み合わせたらオフィスカーがいい! と思い至りました」とのこと。

  • 造形アーティストの志喜屋徹(しきや・あきら)さん

オフィス専用キャンピングカーの利点

キャンピングカーと聞くと、海や山へのキャンプのイメージがありますが、志喜屋さんのクルマは基本的に仕事専用。ドアには「OFFICE」のプレートが貼ってあり、中は土足厳禁でスリッパを履いて上がるのが決まり。

  • 「OFFICE」のプレートが印象的

「家を持たないノマドというライフスタイルもありますが、自分の場合、生活の拠点は自宅。このクルマは寝泊りができるので、海や山へのキャンプにも行けますが、基本的に仕事専用です」というのが、志喜屋さんのポリシーです。

それから、車内にトイレもありません。「洗濯やお風呂も自宅で済ませます。仕事に集中するため、車内にトイレがあるのは邪魔だと思ったからです。都内でも、大きなクルマを駐車でき、トイレが使いやすい公園や施設があるので、不自由はしていません」とのこと。

気になるライフスタイルとワークスタイル

ライフスタイルとワークスタイルは、次のようなイメージです。

「自宅から駐車場にあるオフィスカーへ出勤。移動せずに車内テレワークの日」と、「昼食と夕食を用意し、お気に入りの場所まで移動して仕事する日」が混在するイメージです。

「仕事が終わっても終わらなくても、まあこんなところかなと思う」「目標をゆるく設定する」「大きなモニターなど自宅設備の方がはかどる仕事は持ち帰る」など、無理をしないのが志喜屋さん流。

楽しいのが、ZOOMなどのオンライン会議。日本や世界の絶景をバーチャル背景にしている人は、少なくないでしょう。志喜屋さんは、景色のいいポイントまでクルマで出向き、絶景を「リアル背景」にしてオンライン会議に参加し、同席者を驚かせたりするそうです。

必要十分の生活用品と仕事用品

車内の生活関連設備としては、タンクの水が使えるシンク、電子レンジ、ポータブルIHコンロ、電気ケトル、冷蔵庫とポータブル冷凍庫などがあります。

  • 中央の「細長いテーブル」はクルマの付属品

オフィススペースは、後部座席。細長いテーブルを挟んで6~8人が座れる対面シートがあり、ホワイトボードと、プロジェクターも完備しています。

  • 中央のテーブルとうまく連結できる折り畳み式テーブル

  • 車内サイズにぴったりなホワイトボード

オフィスカーの肝となる電源は、ポータブル電源を選択。自宅で充電して持ち込むほか、折り畳み式のソーラーパネルもあります。インターネット環境は、現状はスマホのテザリングでまかなえているという話です。

  • 電源は「EFDELTAイーエフデルタポータブル電源」を使用

車内を見回すと、すべてのアイテムが黒や白、時にグレーと、モノトーンで統一され、虚飾を排したインテリアセンスは見事です。

デザイン性で知られるバルミューダの電気ケトルもいいアクセント。さぞかしお金をかけたのだろうと思えば、意外と100均グッズも多用されています。

「ティッシュペーパーのケースやなど、細部は100均グッズです。ただ、色はモノトーンで統一することを心がけています。キャンピングカーはアウトドア志向のものが多く、木目調やナチュラルカラーの内装でまとめられがちですが、こちらはオフィスですから」。

  • シンク周りのコップ等も100均で調達

  • コップは運転時の転倒防止対策として100均の耐震ジェルパッド活用

「クルマは手をかけて最初から全部作ってから乗り始めるのではなく、まずは手軽にスタートすることを優先しました。ご紹介したように、細部は100均グッズを活用し、あまりお金はかけていません。乗る、仕事に使う中で不備を感じたら、その都度改善し、自分の理想に近付けていくという方針です」。

プレゼンもでき、映画も観られ、ベッドを出せば昼寝も可能。自分の好きなものだけに囲まれた最高の空間なんですね。それはきっと、仕事もはかどるはずです。

いろいろな意味で仕事とプライベートはシームレスにして楽しむスタイルが素敵!