マツダは「ロードスター」の特別仕様車「990S」を公開した。次の商品改良に合わせて発売するクルマで、正式発表は2021年末ごろ、納車開始は2022年初めごろの予定。ロードスターで最も軽い「S」グレードをベースにさらなる軽量化を施し、ネイビーの幌など青系のアクセントをデザインに盛り込んだ。

  • マツダ「ロードスター」の特別仕様車「990S」

    マツダ「ロードスター」の特別仕様車「990S」

なぜ最も安いグレードがベース車なのか

ロードスターは1989年に登場したマツダのライトウェイトスポーツカーで、現行型は4世代目となる。熱量の高いユーザーが多いクルマで、軽井沢で行われるファン主催のイベント「軽井沢ミーティング」には毎年、1,000台を超えるロードスターが集まるそうだ。

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    「軽井沢ミーティング2021」の様子

マツダはロードスターに商品改良を施した「2022年モデル」を発売する予定だが、そのタイミングで特別仕様車「990S」(マツダの人たちの読み方はキューキューマルエス)を発売する。商品改良の詳しい内容や2022年モデルの価格などは現時点で不明だが、990Sについては実車を確認し、特徴をマツダに聞いてきたので、現時点で判明していることをお伝えしたい。

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  • 「990S」の特徴は?

ロードスターの本質は「軽さ」というのが開発主査である齋藤茂樹さんの考え。990Sでは軽さをさらに進化させ、「運転してピュアに楽しいクルマ」を目指したという。

990Sは「S」グレードをベースとする。Sはロードスターで最も軽く、最も安いグレード。トランスミッションはマニュアル(MT)のみで、装備も少ない「素」のグレードだが、それだけに車両重量は全グレードで最も軽く、諸元表には990kgと書いてある。

990Sも諸元表では990kgだが、実際のところはSよりも少し軽いクルマに仕上がっているとのこと。車両重量は10kg刻みで四捨五入した数値を表記するルールがあるので両方とも990kgだが、1kg単位(あるいは1g単位?)では990Sの方が軽いそうだ。

軽量化に効いている990Sならではのパーツとしては、レイズ製アルミホイールが挙げられる。Sに比べ1個あたり800g軽く、タイヤ4本で計3.2kgの軽量化に役立っている。自動車業界では「バネ下の1kgはバネ上の10kg」(齋藤さん)という言葉があるとのこと。足元の軽量化はクルマの性能向上に高い効果を発揮するそうだ。

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    レイズのホイールで軽量化を図った「990S」。ブレンボ製ブレーキキャリパーには青文字のロゴが入っている

見た目では、青系の色を使っているところが特徴だ。まず、ソフトトップ(幌、開けるとオープンカーになる)には新色のネイビーを採用。車内を見るとエアコンの吹き出し口に青の差し色があり、専用のフロアマットにも青を用いている。なぜ青かというと、このクルマの「軽快さ」をアピールする色として選んだとのことだった。

  • マツダ「ロードスター」の特別仕様車「990S」
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  • エアコンのルーバーに青のアクセント

走りや乗り心地についてはどうかというと、990SはSに比べダンパーをやわらかくしてあるそう。新たな技術としては、コーナリングの際に0.3ほどのGがかかると、コーナーに対して内側のリアタイヤに少しブレーキをかけることで接地性を向上させ、走りを安定させる「車両姿勢安定化制御」(KPC)を採用している。齋藤さんは「家の周りで普通に乗っても楽しいクルマ」が最大のコンセプトだと話していた。

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    ボディサイズ(全長3,915mm、全幅1,735mm、全高1,235mm)、排気量(1.5L)、最高出力(132PS)、最大トルク(152Nm)などは「S」と全く同じだ

990Sの価格は不明だが、現行ロードスターで最も安いSグレード(260.15万円)がベースとなっていることもあって、「お求めやすい」(マツダ 国内営業本部の二宮誠二さん)ものになるとのことだった。

特別仕様車なのだから、上級グレードにいろいろな装備を盛り込んだ豪華版を作ってもおかしくないところだが、ロードスターにとって肝心かなめの美点であり、本質的な価値でもある「軽さ」にこだわり、最も軽いものの最も安いSグレードをあえてベース車に起用するあたり、なんとなくマツダらしさを感じる部分だ。